【インディアン FTR Rカーボン 試乗】ロードスポーツバイクとしてアップデートされた新型FTRを中野真矢が駆る

近代的で「完成度の高い」ロードスポーツとしてアップデートされたFTRシリーズ

バイクを知っている人間が作り上げたからこその完成度

圧倒的パワーと扱いやすさの二面性を持った1203ccの水冷Vツインエンジン

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インディアンモーターサイクル『FTR Rカーボン』
インディアンモーターサイクル『FTR Rカーボン』全 65 枚

インディアン『FTR1200』はクラシックなスタイリングと現代的な走行性能を併せ持つロードスポーツモデルとして2019年に登場した。アメリカで盛んなフラットトラックレースで活躍する同社のワークスマシン、『FTR750』のイメージをまとった市販車ということで、登場当初から大きな注目を集める人気モデルだ。

そんなFTRシリーズの2022年モデルに元MotoGPレーシングライダー、中野真矢が試乗した。

インディアンモーターサイクル『FTR Rカーボン』インディアンモーターサイクル『FTR Rカーボン』
2022年モデルのFTRシリーズは「FTR」「FTR S」「FTR Rカーボン」「FTRラリー」の4モデルを展開。今回、試乗したのはカーボン製の外装パーツやアクラポビッチ製のエグゾーストシステム、オーリンズ製のアジャスタブルタイプ前後サスペンションなどを標準装備する最上級プレミアム仕様、FTR Rカーボンである。

近代的で「完成度の高い」ロードスポーツとしてアップデートされたFTRシリーズ

シリーズを通じて大きなアップデートとなるのは足回りの仕様が変更されたことだ。従来はフロント19インチ、リア18インチだったホイールサイズが、前後17インチとなり(FTRラリーを除く)、タイヤはダートトラック風のパターンだったものから、メッツラー・スポルテックストリートに。

フラットトラッカー風のレトロなスタイリングだが、その中身は高い走行性能をもつ近代的なロードスポーツそのもの。リアリフト軽減機能を備えたウィリーコントロールやスタビリティコントロール、トラクションコントロール、コーナリングABSなどの電子デバイスを標準装備する。フラットトラッカー風のレトロなスタイリングだが、その中身は高い走行性能をもつ近代的なロードスポーツそのもの。リアリフト軽減機能を備えたウィリーコントロールやスタビリティコントロール、トラクションコントロール、コーナリングABSなどの電子デバイスを標準装備する。
サスペンションもストリートでのライドに重点が置かれ、前後150mmだったサスペンションのトラベル量が前後120mmへと変更された。これによってシート高も約3.5cm低くなっている。

つまり、フラットトラックレースマシンのレプリカというこれまでの立ち位置はFTRラリーが引継ぎ、それ以外のモデルは、よりロードスポーツバイクとしてのアップデートが図られたということだ。

中野「インディアンというとクラシックなクルーザーのイメージが強かったのですが、FTRは完全な現代のロードスポーツ…というかその中でも相当に完成度が高い一台だと思いました。これまで欧米メーカーのバイクは日本車に比べて粗削りな分、刺激や個性で勝負する傾向がありましたけど、このFTRはまるで日本車と輸入車の良い部分を高度にバランスさせたような感じです。

見た目からイメージするよりもはるかに取り回しやすいと中野さん。大パワー車にありがちな低速域でのギクシャクする感じもなく、街中でも乗りやすい。見た目からイメージするよりもはるかに取り回しやすいと中野さん。大パワー車にありがちな低速域でのギクシャクする感じもなく、街中でも乗りやすい。
例えば市街地では普通、これだけ排気量のあるバイクで都市部を走るのは億劫なものですけど、FTRは車格の割に取り回しが軽いし、エンジンのマナーも洗練されていてまったく負担にならないです」

バイクを知っている人間が作り上げたからこその完成度

中野さんがバイクの良し悪しを測る上で指標にしているポイントのひとつが「安心感」だ。エンジンやフレームといった基本はもちろん、各部品の精度まできっちり煮詰められたバイクは、跨った瞬間から、マシンがライダーのコントロール下にあるという安心感を与えてくれるという。この分野では日本車が大きなアドバンテージを持っていたが、FTRはそれに迫る。

タイヤが小径化し、サスペンションセッティングも最適化されたことで車両との一体感が向上。ワインディングでのライディングがさらに軽快になった。タイヤが小径化し、サスペンションセッティングも最適化されたことで車両との一体感が向上。ワインディングでのライディングがさらに軽快になった。
中野「インディアンモーターサイクルが現在の体制になってまだたったの10年ほどですよね。それでこれだけの製品を作り出しているのは凄いですよ。高い総合力が無いとこうした安心感は生み出せないですから。バイクをちゃんと知っている人間が机上だけでなく、実際に走行テストを繰り返しながら磨き上げないと不可能な完成度だと思います」

スタイリングは過激ですが、すごく真っ当なハンドリングですね。僕のようにレースをやっていた人間は、いわゆるストリートファイター系モデルのように前輪荷重が強く、バイクが勝手に曲がろうとする特性にはやや違和感を感じてしまうのですが、FTRはディメンションが適切で重量配分のバランスが良いと思いました。ワインディングで攻め込んでも反応がごく自然です。スポーティーでありながら、過敏ではない絶妙な味付けだと思いました」

圧倒的パワーと扱いやすさの二面性を持った1203ccの水冷Vツインエンジン

新型FTRシリーズの心臓部には1203ccの水冷VツインDOHC4バルブエンジンが収まる。120psの最高出力と12.0kgf・m/6000rpmの最大トルクを発揮する極めて近代的なパワーユニットだ。新型ではアイドリング時に片側のシリンダーを自動的に停止させてオーバーヒートを防ぐ、気筒休止機能も採用された。

アクラポビッチ製のエキゾーストシステムはFTR SとFTR Rカーボンに採用。後者はブラックアウトされているのが特徴だ。アクラポビッチ製のエキゾーストシステムはFTR SとFTR Rカーボンに採用。後者はブラックアウトされているのが特徴だ。
中野「大排気量のVツインと聞くと、つい鼓動感を味わうエンジンという先入観をもちますが、FTRシリーズのエンジンは全域で振動が少なくスムーズ。FTR Rカーボンはアクラポビッチのマフラーも標準で付いてますが、排気音はかなりジェントルですね。ハーレーの空冷Vツインみたいな古典的なフィーリングを求めてる人は完全に肩透かしを食うでしょう。

特に印象的だったのはスロットルを開け始めたときの巧みな制御ですね。パワーがラフに出ることがなく、とても扱いやすい。エンジンの出力特性は操縦性にも大きな影響を与えるので、ここがリニアで安定していると、結果的にマシンを上手く走らせることにも繋がります。人間の感覚に沿った動作というのは市販車からMotoGPのレーサーに至るまで良いバイクの真髄だと思います」

リラックスしたポジションと、どのギアからでも加速できる大トルクのエンジンによって快適な高速クルージングが可能。クルーズコントロールも装備されている。リラックスしたポジションと、どのギアからでも加速できる大トルクのエンジンによって快適な高速クルージングが可能。クルーズコントロールも装備されている。
全域でトルクに余裕があり、高速道路では早めにシフトアップすることでクルーザーのようにゆったりと『流して』走ることも可能だという。 どんなシチュエーションでも対応できる扱いやすさはFTRの大きな美点だが、それを美点たらしめているのは鋭い牙も併せ持っているからと中野さん。

中野「ひとたびスロットルを本気で開けると別世界。公道では持て余すような加速もできますからね。ほとんど暴力的とも言えるこの大パワーを見事に手なずけ、誰でも楽しめるストリートマシンとして成立させていることこそ、FTRの素晴らしい部分だと思います。

インディアンモーターサイクル『FTR Rカーボン』インディアンモーターサイクル『FTR Rカーボン』
ちなみに、スポーツ、STD、レインという3種類のライディングモードがありますが、一般公道を走るならSTDかレインで充分ですね。スポーツは出力特性がかなり極端にピーキーになるので、クローズドコース向けです」

最後にFTRシリーズの中で中野さんが個人的に欲しいモデルを聞いた。

中野「ヘリテイジ系のモデルで、この完成度を考えると180万円台から選べるという価格設定は割安感がありますね。ただ、今回試乗したFTR Rカーボンに関しては不満がないの不満です(笑)。もう少し自分でカスタマイズする余地が欲しいので、僕が買うなら素のFTRですね」

インディアンモーターサイクル『FTR Rカーボン』インディアンモーターサイクル『FTR Rカーボン』
中野真矢|元MotoGPライダー
世界最高峰の二輪レース、元MotoGPなどで活躍したレーシングライダー。2008年にモーターサイクルファッションブランド「56design」を立ち上げ、バイクのあるライフスタイルを広く提案している。2012年からは「56RACING」チームを発足するなど、若手ライダーの育成にも尽力する。

インディアン FTR R Carbonの詳細はこちら

《佐藤 旅宇》

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