【スズキ 新型「Hayabusa」徹底試乗インプレッション】真の“究極”を求め大人のスポーツバイクへと華麗に進化

スズキ 新型「Hayabusa」
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究極を求め常にトップを走り続けた20年

初代GSX1300R 隼(ハヤブサ)がデビューしたのは1999年。 アルティメットスポーツ=公道における究極のスポーツバイク”をコンセプトに開発され、その圧倒的な動力性能と優れた空力特性によって300km/hオーバーの世界を現実のものとするなど、20世紀最後の最速マシンとして衝撃のデビューを飾った。

2008年には大幅な仕様変更を受けた2代目が登場。排気量拡大とエアロダイナミクスの向上に加え、ドライバビリティを高めるSDTV(スズキ・デュアル・スロットル・バルブ)やバックトルクリミッターを採用する他、出力特性を3モードから選択できるS-DMS(スズキ・ドライブ・モード・セレクター)を新たに搭載。出力向上に合わせてフレーム強化とショートホイールベース化が図られ、KYB製フルアジャスタブルサスペンションを前後に採用するなど全方位的な進化を遂げた。

さらに2013年にはブレンボ製モノブロック・ラジアルマウントキャリパーや同車初となるABSを搭載し制動力をアップグレード。2014年には待望の日本仕様が登場し欧州仕様と同等の最高出力145kW(197PS)と最大トルク155N・m(15.8kgf・m)を実現。国内2輪車として初めてETC車載器を標準装備するなど、時代とともに常に2輪界を代表するトップパフォーマーとして君臨してきた。

第3世代は電子制御と快適性を大きく進化

そして2021年、待望の新型「Hayabusa」が満を持して登場した。第3世代となる新型ではプロダクトコンセプトである「アルティメットスポーツ」を継承しながら、あらゆる角度から徹底的な見直しを進めている。特には最新技術による電子制御と快適性の大幅な向上である。総合的なバランスをさらに進化させながら、平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に対応。流麗かつシャープでエッジの効いたフォルムは、速さと快適性を両立させた先進のエアロダイナミクスを融合し、どこから見ても「Hayabusa」とすぐにわかるデザインとなっている。

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エンジンは第2世代の水冷直列4気筒DOHC4バルブ1339ccをベースとしながらも、ほぼ全面的に改良が加えられた。新設計の燃焼室やカムプロフィールの他、電子制御スロットルと新エキゾーストシステムの採用により、低中速域の出力とトルクを向上させながら耐久性をさらに向上。より速く、コントロールしやすいスポーツバイクとして作り込まれている。ちなみに高速走行時に圧縮された空気により吸気効率を高めるSRAD(スズキラムエアダイレクト)もラムエアダクトとエアボックス形状の最適化により充填効率を高めつつ、マフラーもエキパイの連結管を追加して中速トルクを向上。マフラー全体で2kg以上の軽量化も実現している。

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車体に関しては、軽量高剛性のアルミ製ツインスパーフレームとスイングアームは継承しつつ重量配分を前後50:50の理想値とすることでハンドリングを洗練。φ43mmKYB製倒立フロントフォーク&リヤサスペンション(ともに全調整式)の設定変更により衝撃吸収性を向上。ブレーキも一新されフロントにブレンボ製Stylema ®4Pキャリパーに従来比10mm拡大されたφ320mm大径ダブルディスクを組み合わせてブレーキ性能を向上。また、新デザインの7本スポークホイールと専用設計のBS製BATTLAX HYPER SPORT S22の採用により接地感とグリップ力も向上している。

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そして、十八番のエアロダイナミクスについてもスズキ量産モデル中でも最高レベルの空力性能を実現。高速走行中の安定性と優れたコントロール性とともに快適性も高められている。また、ハンドルバーをライダー側に12mm近づけることで操作性と快適性が大幅に向上、疲労軽減にも貢献している。

安全で快適な走りを陰で支えてくれる電子制御の数々

そして今回最も進化したのが電子制御だろう。新型「Hayabusa」には進化したスズキインテリジェントライドシステム(S.I.R.S.)を採用。電子制御スロットルが新たに採用され、出力フィーリングや環境性能が向上した。新たなSDMS-αは3つプリセットモード(A:アクティブ、B:ベーシック、C:コンフォート)の他、ライダーの好みや条件に合わせて設定できる3つのユーザーセットを用意。各モードはプログラムされた各種システムと連動して走りを最適化しつつ、システムごとの細かな設定にも対応する仕組みになっている。

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またMotoGPで培われたテクノロジーが投入された「モーショントラックコントロールシステム」は、様々な走行状況でも安心感をもってマシンをコントロールする10段階+オフモードから介入レベルを選択できる先進のトラコンシステムだ。また、6軸 IMU と ABSを組み合わせる「モーショントラックブレーキシステム」を導入。コーナリング時のブレーキングにも対応し減速度や車体姿勢を検出しバンク角に応じた ABS 制御を行い、ライダーが意図した走行ラインのトレースをサポートする。なお、前後ブレーキを連動させる(フロントブレーキをかけるとリアも作動)コンバインドブレーキシステムも搭載された。

長距離ツーリングで便利なクルーズコントロールの他、最近のスズキスポーツモデルに標準搭載されているワンプッシュ始動が可能なスズキイージースタートや発進時に回転数を少し上げることで楽にスタートできるローRPMアシスト、ETC2.0を標準装備。さらに下り坂のブレーキで後輪の浮き上がりを防ぐスロープディペンデントコントロールや上り坂で停止したときにブレーキ力を一定時間保持するヒルホールドコントロールシステム、急減速時にブレーキランプの点滅で後続車に注意を促すエマージェンシーストップシグナル(ESS)や、2輪市販車初となる最高速度を任意で設定できるアクティブスピードリミッターなど、安全で快適な走りを陰で支えてくれる最新のハイテク機構が満載されている。

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さらにはレーステクノロジーからのフィードバックも多く盛り込まれている点にも注目したい。加速時に前輪の浮き上がりを抑制するアンチリフトコントロール(LF)やサーキット走行でのレーシングスタートに対応するローンチコントロール、エンブレの強さを加減するエンジンブレーキコントロール、双方向クイックシフト(QS)などの各種システムを標準装備。

そして、これらの電制システムはハンドルグリップ手元に設けられたスイッチで操作可能で、設定モードについてもメーター中央に配置されたフルカラー液晶ディスプレイによってひと目で確認できるよう配置されている。

成熟しつつ爪を研ぐ、その気になれば誰にも負けない

ハヤブサからGSX1300Rの文字が消えて「Hayabusa」になった。そこにスズキの思いが凝縮されていると思う。世界最速にして究極のスポーツバイクとして20年以上も君臨してきたハヤブサは、もはや何の説明もいらないグローバルネームとしての「Hayabusa」なのだと。

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佇まいからして違う。そこに居るだけで見る者を黙らせる圧倒的な存在感。だがそれは威圧ではなく、全身からにじみ出る尊厳のようなものだ。ぽっと出の成り上がりとは格が違う王者の風格。メタリックシルバーに鮮やかな赤の差し色が入る立体的なエアロフォルムで全身を包まれた新型ハヤブサは、未来へと羽ばたこうとする鋼鉄の猛禽のようにも見える。

跨ると相変わらず大柄でずしりとした重厚感があるが、ハンドル位置が少し前寄りになったおかげで上体が楽になっている。特に大きくハンドルを切ったときに外腕に余裕が増えて取り回しがしやすくなった。僅かだがその違いは大きい。シート高は800mmと5mm低くなり足着きも良好だ。そこが腰高なスーパースポーツと違うところ。究極のスポーツはライダーフレンドリーでもあるのだ。

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サウンドは力強さと迫力のある重低音。上質で迫力がある。クラッチが軽く、発進時のつながりもスムーズ。アイドリングからでも発進できる余裕の極低速トルクは従来どおりだ。ローRPMアシストも効いていると思う。ライダーが街中で最も気を遣う部分でもある発進時における安定感は確実に増した。

街を流す。とにかくスムーズだ。スロットルは微開にしかならず、ローギヤのまま右手を数ミリ動かすだけで事足りる。なにしろ1速で引っ張れば軽く100km/hを超えてしまうほどだ。加速力も相変わらず凄すぎる。スペック上の最高出力は9psダウンの188psだが、初期加速では従来型を凌駕。スズキが発表した計測値でも0-100km/h加速でも0-200m到達タイムでも従来型を上回っている。そこが新型ハヤブサの面目躍如たる部分。スペック第一主義ではないところで勝負しつつも実質的には従来型をすべての面で超えてきている。成熟した大人のスポーツバイクとしての上質感や味わい深さを求めつつも「その気になれば誰にも負けないよ」というメッセージだ。

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高速道路をひた走る。エンジンはどこまでも上質で滑らか。どの回転域でもギアが何速でも余裕しゃくしゃくだ。ハンドリングは安定感があり軽快。けっして直線番長ではなく、高速のレーンチェンジもフットワークは軽やかだ。SDMS-αをAモードに入れてちょっとだけスロットルを開けてハヤブサらしさを楽しんでみる。頑張らないのに速い。空気の層を切り裂いて進む目に見えないカプセルに包まれたような平和で静寂な時が流れる。瞬間移動のワープ感はさらに加速し、他の乗り物とは異なる次元に生きている感じさえする。言葉は適切ではないと知りつつ、日本の高速道路などはハヤブサにとってはちょろいものなのだ。

ワインディングも最高!目線を送るだけでコーナーに吸い込まれていく。従来型が優れた高速安定性の反面、低速ではハンドルの切れ込みが少し出る傾向があったが、サスペンションの設定や重量配分の最適化により、その弱点が見事に解消されている。依ってタイトコーナーでの当て舵の必要もなくなり、常にリラックスして乗れる。

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最新のブレンボと「モーショントラックブレーキシステム」の組み合わせも盤石。強力であることはもちろん入力コントロールもしやすく、ブレーキを残しながらコーナーに入っていくスポーティな走りでも極めて自然かつ軽やかだ。6軸IMUによって制御される前後連動ABSのバックアップによる安心感は絶大である。続いてコーナー立ち上がりでわざとラフにアクセルを開けてみるが、まずアンチリフトコントロールの介入を示す(LF)のインジケーターが点灯し、さらに開け続けるとトラコン作動を知らせるインジケーターが点滅する。マシンに身を任せられる安心感。かつてのハヤブサから最も大きく進化した部分かもしれない。

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新型ハヤブサに投入された機能をすべてインプレしようとしたら、紙幅がいくらあっても足りないだろう。まさに渾身のメガ盛りだ。そして、走り込むほどにその理由も分かってくる。これらの機能は歴代ハヤブサのコンセプトでもある「アルティメットスポーツ」を今の時代にフィットする形で表現したものなのだと。初代から続く究極にして唯一無二の最高峰のスポーツバイクを目指すという思いが注がれた結果なのだ。

腕自慢、力自慢だった若者は歴戦を経て思慮深さと風格を備えた大人になった。これはハヤブサというブラントの成長物語でもあると私は思う。そして、紛れもなく現代の「究極のバイク」だと実感できたのだ。

カラーバリエーション

(上)グラススパークルブラック/キャンディバーントゴールド(B5L)、(左下)マットソードシルバーメタリック/キャンディダーリングレッド(B5M)、(右下)ブリリアントホワイト/マットステラブルーメタリック(B5N)(上)グラススパークルブラック/キャンディバーントゴールド(B5L)、(左下)マットソードシルバーメタリック/キャンディダーリングレッド(B5M)、(右下)ブリリアントホワイト/マットステラブルーメタリック(B5N)

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スズキ 新型「Hayabusa」と佐川健太郎氏スズキ 新型「Hayabusa」と佐川健太郎氏
佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

《佐川健太郎》

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