【ベンガルール通信 その10】 祭から考える「今のインド」

交通安全を祈願してこの時期に行われるPooja (プジャ) 。生花・枝葉が枯れるまで一週間ほど、この装飾のまま街中を走る
交通安全を祈願してこの時期に行われるPooja (プジャ) 。生花・枝葉が枯れるまで一週間ほど、この装飾のまま街中を走る全 1 枚

南インドよりナマスカーラ!

10月中旬現在のベンガルールは最大の年中行事Diwali (ディワリ) の「前哨戦」であるDussehra (ダサラ) を迎えて、本格的なお祭りモードに突入。家やオフィスの入り口にはマリーゴールドのガーランドとマンゴーの葉が垂らされ、足元には色とりどりの粉でRangori (ランゴリ) が描かれる。門柱には門松よろしく大ぶりなバナナの葉が立てられ、瓜やココナツが割られ、盛り塩ならぬ「盛り薔薇」が飾られる。あらゆる機械・設備には子どもが三本指でいたずらしたような白線が引かれ、赤や黄色の粉が振られる。

ヒンズーカレンダーに基づくから太陽暦では毎年日付が変わるのが余計にややこしいが、例年であれば9月初旬、11日間に渡って祝われるGanesha Chaturthi (象の頭をしたガネーシャ神の誕生祭) を皮切りに、およそ年内いっぱいはどこか心ここにあらず、仕事なんかしている場合じゃない、といった雰囲気に支配される。年末に向けて、ハロウィンやクリスマス、預言者ムハンマドの誕生日もこの時期にあるから、特定の宗派に限らず信仰を超えて、お祝いムードに包まれる。

日本では正月に松飾りをつけて走る車もすっかり見なくなった気がするが、当地ではこの時期、自家用車・バイクから三輪リキシャ、大型バス・トラックまで、盛大な飾り付けが施される。普段から周囲を見て運転などしていないから気にならないのか、フロントスクリーンまで目一杯に花やリボンで覆った路線バスが走り回るのを見ると、この時期のこの地に日本の常識を持ち出す気にはならない。郷に入っては郷に従え、せめて事故を貰わないよう、こちらはいつも以上に注意するしかない。

インドにおいて、いわゆる「国民の休日」に相当する祝日は年に3日のみ。1月26日のRepublic Day、8月15日のIndependence Day、10月2日のGandhi Jayanti (マハトマ・ガンジーの誕生日) は全国一斉の祝日とされる。が、地域・民族や信仰・宗派ごとに、時節に応じた大小様々なお祭りは一年を通じて絶えず祝われている感がある。14億のインド国民に共通する「この日だけは特別な日」という認識はほとんどないし、家族・親族・友人単位の慶事や弔事も含めれば、いつ働いていつ休むつもりか、予め聞いたところで本人にすら分からない。

カレンダーを見れば八百万の神々にちなんだ「○○祭の初日」と記されていたりもするが、それがいつまで何日続くのか、その間にどんなイベントが催されて「仕事をする暇」はあるのか、在住6年目を迎えても未だに予測がつかない。昨年は大規模集会も制限され、誰もがおよそ自宅に引き籠っていたらから捕まえるのも容易だったが、今年はそうもいくまい。

《大和 倫之》

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