【三菱 アウトランダーPHEV 新型試乗】ランエボ時代から培ったS-AWCがいよいよ完成の域に達した…中谷明彦

三菱 アウトランダー PHEVモデル 新型(アウトランダーPHEV)
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三菱自動車が2代目となる新型『アウトランダーPHEV』を発表した。今回、そのプロトタイプモデルにいち早くクローズドサーキットで試乗することが出来たのでご紹介しよう。

三菱のクロスオーバーSUVアウトランダーは世界の約60か国で販売される三菱自動車の主力モデルといえる。2012年に初代が販売され、その中で世界初となるプラグインハイブリッドシステムを搭載したモデルを設定した。当時、その完成度の高さは驚異的であり「自動車業界のノーベル賞」と評していたほどだ。その後何度かのマイナーチェンジが盛り込まれ、今回約8年半ぶりのフルモデルチェンジとして3代目へと進化するのである。

「威風堂々」見るからに走りの良さそうな佇まい

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3代目アウトランダーのコンセプトは「威風堂々」。その名の通り圧倒的な迫力を醸し出す三菱の特徴的なデザインであるダイナミックシールドデザインがフロントマスクに採用され、ボディサイズのディメンション拡大のみならず、その圧倒的な存在感を示すような意匠となっている。

パワートレインは2.4リットルのガソリンエンジンを発電機として用い、前後に強力な駆動モーターを装備して4輪駆動方式となっている。

使用されるモーターはフロントが85Kw、リヤには100Kwの高性能モーターが新たに採用され、より力強い動力性能を確保している。またバッテリーも従来の13.8kWhから20kWhへと強化され、動力性能だけでなくEV走行できる航続距離も約80km(WLTCモードで87km)にまで伸ばすことに成功しているという。

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ボディのディメンションは全長が4710mmで従来モデル比で+15mm、全幅は1860mmとなって従来から+60mmで最も格副幅が大きい。また全高1745mmは従来モデル比+35mmだ。

一方、トレッドの寸法はフロントは1595mm、リアが1600mmで、フロントは55mm、リアは60mmと大幅に拡幅されたことで走行性能の向上が期待できる一方、20インチ/255サイズの大径ワイドタイヤを装着したことで、見るからに走りの良さそうな佇まいを確立している。

今回、3列シートを備えた7人乗り仕様も選択可能となり、従来モデルから極めて顧客要望の強かった3列シートがいよいよラインナップに加えられたのも見逃せないポイントといえる。

これまでの三菱車とは違う、豪華でデザイン性の高いインテリア

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室内に乗り込むとこれまでの三菱車のイメージとは大きく異なり、極めて豪華でデザイン性の高いインテリアが迎え入れてくれる。水平を基調としたインストルメントパネルデザインはレザー張りソフトパッドにステッチもあしらわれ、欧州のプレミアムブランドと遜色のない素晴らしい仕上がりを見せている。

メーターナセルには液晶のメーターが新規採用され、さまざまなインフォメーションをステアリングのトグルスイッチを使い表示わけが可能となっている。またセンターの大型カラー液晶モニターは9インチとなりナビゲーション機能だけでなくさまざまな機能の設定や操作にも用いられるように進化していた。カメラボタンをプッシュすればマルチアラウンドモニターが起動し車両の前後や左右の状況を瞬時に知ることができる。

エアコン関係のスイッチはセンターコンソール上部に整然と並べられるように備えられ、それらは物理スイッチを採用していて操作性も高まっている。センターコンソールのセンターより左側にシフトレバーを供え、右側にはサイドブレーキやEVモード切り替えスイッチ、また1ペダルのスイッチなどが配され、シフトレバーの後方にはドライブモードの選択が可能なダイヤルスイッチが備わった。それらの一連の操作はドライバーが極めて行いやすく、操作性視認性ともに非常に優れているといえる。

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シートは電動のフルアジャストメント機能付きが前席左右に備わり、後席もリクライニング機能やシートヒーターなどが備えられ快適性は全席ともに増している。これまで後席の居住性についても非常に多くの意見を述べてきたが、今回リアシートリクライニング機能やシートヒーターのみならずドアウィンドウに手動式のサンシェードが備わったことで、高級セダン並みの装備をフルマークで備えたと言っても過言ではない。

また35mm拡大されたホイールベースにより後席の足元スペースは長さが903mmとなり、非常にゆとりがある居住空間が確保された。ちなみにホイールベースは従来の2670mmから新型では2705mmとなっている。

日常のほとんどをEVで走ることができる

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スタートストップスイッチを押しシステムを起動すると、メーターの中に鮮やかなイルミネーションが展開されシステムの起動をドライバーに示してくれる。この時点ではエンジンは始動せずシフトレバーを操作してDレンジを選択し、アクセルを踏み込むことで車が動き始める。

新型では従来の温水式エアコンからヒートポンプ式に改められ完全電動エアコンとなったことで、冷間時でもエンジン始動を極力抑える静かな走り初めが可能となっているのだ。

EVモードセレクトスイッチが備わっているが、それを操作しなくても走り出しは基本的にEV走行になる。そもそもアウトランダーPHEVのシステムはガソリンエンジンは発電に特化し、走行の非常に幅広い領域をモーターがカバーしているのでエンジンが駆動する部分は非常に大きな動力を求められた場合や、充電されたバッテリーの残量が低下した時などに限られている。

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モード計測でフル充電時の航続距離は80km台にまで伸びた。これにより日常的な市街地での使用はほとんどEVとして走行することが可能になったと言えるだろう。バッテリーが大きくなったことで充電に関する時間は当然伸びてくるが、一般家庭電源でフル充電するのに約7.5時間、急速充電を使えば約38分で80%まで充電することが可能とされている。

デフォルトではノーマル走行モードが設定されており、走り出すと電動の力強さと静かさ、スムーズさにより高級セダンも顔負けなジェントルな発進を見せる。

遮音ガラスの採用や室内の吸音材などが強化され、外部の音を遮断し、また車自体が発するロードノイズやエンジンが始動した際の遮音性にも優れており、極めて快適なキャビンとなっている。

『デリカD:5』にも似た剛性の高いステアフィール

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ステアリングを通して感じるフィーリングは『デリカD:5』に似ていて非常に剛性が高く、ふらつきのないしっかりとした操舵フィールに仕上げられている。これはデュアルピニオンの電動パワーステアリングによる効果が大きいと言える。

20インチで255という大径タイヤでバネ下重量の大きな車輪を装着しているにもかかわらず、操舵フィーリングの剛性感が高くかつ安定しているのはこのパワーステアリングによるところが大きい。

足回りはフロントサスペンション、リアサスペンションとも新たに開発され、フロントはマクファーソンストラット、リアサスペンションはマルチリンクのコイルスプリング方式を採用している。フロントロアアームとリアのアッパーアームにアルミ鍛造素材を採用し軽量化としなやかな操縦性の味付けに貢献させている。また前後にスタビライザーを装備しているが中空タイプで軽量化されているので、コーナーでも車体ロールが少なくかつ軽快なハンドリングを可能としているのだ。

今回車両寸法アップと強力なモーターの採用、また様々な豪華な装備の追加などにより車両重量は平均して2トンを超えるが、それでもしっかりしたサスペンション剛性と、また強化されたボディ構造の効果で重さを感じさせない。SUVゆえ重心の位置は高くなりがちだがフロア下に収められたバッテリー、そして車軸上のモーターなどが低重心化を可能としていて、またエンジンフードにもアルミの軽量素材を採用することでより重心を下げることが可能となっていて、重さを全く感じさないフラットな乗り味が魅力だ。

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ランエボ時代から培ってきたS-AWCがいよいよ完成の域に

コースインしてアクセルを踏み込むと一気に駆動力が発揮されEVらしい力強い加速性能を見せる。今回採用されたフロントモーターは85kW。これは従来の60kWから25kWも強化されており、リアモーターも70kWから100kWにまでパワーアップされていてアクセル全開加速を加えるとスーパーカーも顔負けなほど鋭く力強い加速を瞬時に発揮することができる。

ドライブモードでパワーモードを選択するとより少ないアクセル操作量でこれらの最大出力が一気にディプロイされるので身構えていないと体を飛ばされてしまうほどの力強さが与えられている。4輪駆動ゆえタイヤが空転するようなこともなくこれらが有効に路面へ伝わっていくので動力性能は圧倒的だ。

モーターが発する最大トルクもフロントが137Nmから新型では255Nmになり、リアモーターは137Nmから195Nmへと強化された。フロントタイヤがより強力なトルクを発揮するのは重量配分から言えば、それが駆動力確保という意味においては非常に理想的といえる。このモータートルクの力強さを活かして、斜度45度の登坂も可能だという。一方、最高速近くではリアの最高出力100kWが威力を発揮し走りを支えていると言えるのである。

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コーナーへ差し掛かりステアリング操作しても重さを感じさせず、かつ安定しながらもフラットでシャープな旋回特性を見せてくれる。さらにクリッピングポイントへ向かうとリアのヨーレートも高まり車両全体が旋回姿勢となってスポーツカーのような ターンイン特性が発揮されていることがわかる。

これは『ランエボ(=ランサーエボリューション)』譲りのS-AWCによる効果が大きく、今回特にリアアクスルにもスーパーAYCが採用され車体内輪側ブレーキをかけることで、よりスムーズな旋回性を確保した。4輪駆動制御を知り尽くした三菱だからこそこうしたことが高度に行えるのであって、ランエボ時代から培ってきたS-AWCがいよいよ完成の域に達していると感じさせるに充分なものであった。

あらゆる路面を確実に走破できる性能

今回の試乗では、路面の所々にウェットパッチがあった。そうした所では非常に車が滑りやすくなる。車両重量がある上に旋回速度が速いので、一旦グリップを失うと慣性力で車両全体が横滑り方向にスライドして行くが、そうしたグリップ限界をすばやく感知するとASCが作動し車をより安定化させるのでドライバーは安心して運転操作、ハンドル操作に集中することができる。

ただこのASCが介入するとS-AWCの多くの機能がキャンセルされ、ブレーキのABSと姿勢安定装置のASCが主たる制御を行う。スポーツカーのようにパワースライドさせながら速さを維持しつつの旋回ということは行いにくくなってしまった。

ただASCをオフにすることも可能で、例えばぬかるみの脱出、雪道でのスタックを防止するような場面ではASCの使用をオフにして行うが、その状態でサーキットなどを走ってみるとスライドしながらパワーをコントロールしてスライド姿勢を維持することも可能なシーンもあった。

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ただブレーキを踏んでABSが作動したり、過大なロールオーバーモーメントを与えるとASCが自動復帰し制御介入を行う。ブレーキを離し姿勢が安定すればまた元に戻るが、パワーモードを選択してもそうした基本的な制御のロジックをドライバーが意図的に変更することはできない。(といっても高速での急激なレーンチェンジやサーキット走行のようなこの車にとっては最も不釣合いの場所での話しだ)

そういった場面で意のままにコントロールするにはASCとS-AWCの更なる協調制御が大事になってくるだろう。

ドライブモードはデフォルトのノーマルモードに環境性能を高めるエコモード、乾燥路で使用するターマックモード、未舗装路面や濡れた路面で使用するグラベルモード、加速性能を最大限に発揮するパワーモード、そして雪道で滑りやすい路面で使用するスノーモード、ぬかるみや深い新雪で使用するマッドモードという7つのモードが選択可能で、ほとんどの一般道での走行を確実に走破できる性能を持たされていると言えるだろう。

8年以上の歳月の中で培った成果が盛り込まれた

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世界60か国で販売され、さまざまな地域のデータや要求性能を解析し新型にフィードバックされたことで走破性はより高くなっている。ステアリングのレスポンス良さは単なるモーター制御によるものだけでなく、ロックtoロックが従来モデルの3.3回転から2.6回転へとスポーツカー並みにクイック化されたことも見落としてはならない。また燃料タンク容量が従来の45リットルから56リットルに拡大され、燃料満タン時では1000km以上走れる航続距離が確保された点も見逃せない。

このように新型アウトランダーは外見、見た目、内装、インテリア、デザイン、機能、装備、仕上がり、そして環境性能と先進安全性能など現代要求されるさまざまな性能を非常に高度にバランシングして登場したことがわかった。

8年以上の歳月の中で培った、あるいは研究されてきた成果が盛り込まれ、いよいよ発表と発売を迎えた。果たしてどれほどの受注がアウトランダーPHEVに集まるのか、注目していきたいと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。

《中谷明彦》

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