ボッシュはこれまでCVTの開発で培ってきた技術を活用し、EV向けの無段変速機(CVT)「CVT4EV」の開発に取り組んでいる。現在はデモカーを使用した技術開発を進めており、2025年の実用化を目指す。
CVT開発で培った技術でEVの性能向上に貢献

通常、モーターは回転し始めると瞬時に最大トルクを出すことができるため、変速機の必要性が低い。では、なぜボッシュはCVT4EVの開発を進めるのか。
CVT4EVが最も力を発揮するのは坂道での走行や高速走行などのシーン。例えば、バンで重い荷物を載せて山道を走る時には十分な登坂性能を出すことができたり、普通乗用車が高速道路での走行時にスポーツカーと同等の速さで走行することができるようになる、などさまざまな場面でメリットがある。
ボッシュのパワートレインソリューション事業部トランスミッション事業室トランスミッションコンポーネント開発部の木村健ゼネラル・マネージャーは「電動走行時の滑らかな加速感覚を損なうことなく、フレキシブルな変速が可能なCVTは確かな一つの将来の選択肢になる」と話す。
コンパクトなデザインで幅広いセグメントに対応する

ボッシュが栃木県那須塩原市の試験場で公開したデモカーはフォルクスワーゲンの『e-Golf』がベースとなっている。デモカーは、CVT4EVを搭載することで、元々のモーターの最高トルクである290Nmから30%ほどトルクを落としても、元のクルマ以上の加速・登坂性能を発揮することが可能だという。さらに、最高速度は元の時速150kmから時速170kmまで伸び、電費は4%ほど向上する。
CVT4EVは、インバーターやモーター(最大150kw)、CVTの一体モジュールでコンパクトなデザイン。これにより、現代のEVプラットファームに柔軟に合わせることができるため、幅広いセグメントの乗用車から小型商用車まで、様々なアプリケーションに対応する。
Cセグメントでは最高速度が10%以上向上

ボッシュによると、デモカーのベースとなっているフォルクスワーゲンe-GolfのようなCセグメントでは、CVT4EVを搭載することで最高速度が10%以上向上するという。このほか、Dセグメントに搭載した場合には最大4%効率が向上し、E、Fセグメントでは加速性能が13%向上するとしている。
先日、トヨタ自動車が新たなBEV戦略を発表したように、今後はさらにEVの開発競争が加速するとみられる。そのような中で、単一のデザインで中型車やスポーツカー、小型商用車までさまざまなアプリケーションに対応できるCVT4EVは、EVの性能を高める技術として期待が高まっている。