やらまいか精神はスズキにも流れている

スズキ・フロンテクーペ
スズキ・フロンテクーペ全 5 枚

スズキ
鈴木式織機創立から100年
編者:自動車史料保存委員会
発行:三樹書房
定価:3800円
ISBN978-4-89522-770-4

1920年に創業したスズキの全面的な資料協力により、カラー口絵48ページにわたって収録した4輪車の図版とともに100年の歴史を詳細に解説した1冊。

1920年に創立された鈴木式織機は、1954年に自動車メーカーに転身。『キャリイ』などの実用的な車種を生産する一方で、『ジムニー』、『アルト』、『ワゴンR』といった新しいジャンルの軽自動車も数多く生み出してきた。また、小型車分野では『スイフトスポーツ』などのスポーティなモデルも生産するなど幅広いファンを持つメーカーである。

本書は、2007年に刊行された『スズキストーリー』をもとに、創立100周年となった2020年までの内容を追加して、一世紀におよぶスズキの歴史を、多数収録された図版をもとに分かりやすく解説。増補にともない巻末の年表は全面的に見直して大幅に充実させるとともに、生産・販売台数や海外生産拠点も収録して、資料性を高めたものである。

スズキという社名は、1909年10月に静岡県浜松市に鈴木式織機製作所を鈴木道雄が開設したことに由来するという。この浜松というのがキーワードで、この地域の方言、“やらまいか”精神が強く根付いており、これはホンダの創業者、本田宗一郎も同様だ。このやらまいかとは、とにかくやってみようとか、やろうじゃないかという意味で、遠州人のあれこれ考え悩むより、まず行動しようという意気込みを表している。因みにいまスズキが発行している広報誌のタイトルも“やらまいか”である。実は鈴木道雄はこの精神にのっとり、1937年に購入したオースティン『7』をベースに1年を費やして試作車を完成させるなど、当初から自動車に目を向けていたようだ。そういったことも本書から知ることが出来る。

そのほかにも『フロンテ(LC10)』のデザインスケッチや、プロトタイプ、キャリイとフロンテクーペとジョルジェット・ジウジアーロのかかわりなども触れられているので、単にスズキファンならずとも楽しめる1冊にといえよう。

なお本書は2020年に刊行された“スズキストーリー 小さなクルマ大きな野望”をベースに、2008年以降の主な車両紹介を加え、巻末の年表を充実させたうえで、タイトルやカバーデザインを一新した増補四訂版である。

『スズキ 鈴木式織機創立から100年』『スズキ 鈴木式織機創立から100年』

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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