【トヨタ ノア/ヴォクシー 新型】今のミニバンに必要な「静粛性のレベル」とは

トヨタ ノア 新型
トヨタ ノア 新型全 8 枚

トヨタの新型『ノア』と『ヴォクシー』は静粛性にこだわり、防音材の使い方も先代よりもより緻密に設計が為されているという。

性能評価で主に静粛性にかかわる部分を担当したトヨタ車体車両実験部動的性能開発室第1振動騒音グループ主任の田嶋大輔さんは、新型ノア・ヴォクシーの開発に際し、「ある程度目標を持って静粛性を作っていった」という。「競合のクルマや、市場のトレンドを読み、2022年1月に出すクルマとして、このミニバンクラスに必要な静粛性はどこかを考え、そのレベルを目指して吸音材や遮音材を入れ込み、目標性能に到達させた」と説明する。

コストを抑えながら静粛性を実現

トヨタ ノア 新型トヨタ ノア 新型

具体的には、「コストを考えるとそうお金もかけられるクルマではない。吸音材、遮音材をどんどんつぎ込めば静かにはなるが、同時にお金もどんどん上がっていく。そこで先代モデルにもある部品を有効に活用して性能を上げられないかにこだわった」という。

例えば、エンジンルームとキャビンの間にダッシュパネルがあり、そこにサイレンサーを設定した。「(従来モデルでは)インパネのリインフォースを組付ける上で、どうしてもサイレンサーにどんどん穴があいていく。そうすると、せっかくパネル面に対してサイレンサーがあるのに、色々なところに穴があいてしまいもったいない。そこで新型ではお金をかけずに、出来るだけその取り付け点に対して穴をどれだけ小さく出来るかにこだわった」。それはフロアのサイレンサーも同様で、「お金をかけずに遮音性を上げている」と述べる。

同時に田嶋さんは、会話明瞭度にもこだわった。その結果、「エンジン音などは会話明瞭度のデータを考慮し、良くなっている」と語る。

トヨタ ノアの2列目シート。車内の会話明瞭度にもこだわったというトヨタ ノアの2列目シート。車内の会話明瞭度にもこだわったという

またパワートレイン系でも静粛性は追及された。担当したトヨタパワートレーンカンパニーモータユニット開発部企画計画室グループ長の柴田僚介さんは、今回刷新したパワートレインでも、「モーターや電池の出力を上げ、パワーが出る一方、エンジンの回転数は先代のモデルよりも少し押さえている」とエンジンの回転数を押さえることでの静粛性を確保。

さらに、インバーターから出るキャリアのノイズも、「昇圧させるところの音が結構耳障りになるので、人の視聴覚域から少し外す工夫もしている」という。このように、「色々なものの積み重ねをしながら、吸音や発生する音を抑えている」とのことだ。

意図した通りに走れるE-Four

ハイブリッドトランスアクスル高出力モーターハイブリッドトランスアクスル高出力モーター

また柴田さんは、走りにもこだわりを持って開発した。「走りを良くするためにパワーを上げている。(先代よりも)モーター出力15%、電池も15%上げつつ、双方ともサイズは15~20%小さくした」ことで軽量化も実現。パワーを上げた分は、「走り出しがスムーズ、快走感といったところに使えるようにしている」。

また、今回ハイブリッドにも4WDのE-Fourが設定された。柴田さんによると、「リアモーターの出力はプリウス比で、約6倍(プリウスは7.2ps/55Nm、ノア・ヴォクシーは41ps/84Nm)とかなり大きい出力のものを新しく開発」。「積雪地などで1番ニーズがあるので、走り出しのところに重きを置いているが、ドライ路面でも、旋回時に後ろが膨らみそうな時にフィードフォワードを用い、ハンドルの舵角や車速によってリアからのモーターアシストをする制御を入れた。その結果、運転手が意図した通りに走れるような接地感が増し、アンダーステアになりにくいセッティングにしている」と仕上がりを語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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