バイク開発の未来を「SFプロトタイピング展」で見た…世界初公開の最新シミュレーターで広がる可能性

実際にヤマハ発動機がバイクの開発現場で使用するシミュレータ『MOTOLATOR』を世界初公開。デザイナーの渡辺さん(左)にレクチャーを受ける筆者・青木タカオ(右)
実際にヤマハ発動機がバイクの開発現場で使用するシミュレータ『MOTOLATOR』を世界初公開。デザイナーの渡辺さん(左)にレクチャーを受ける筆者・青木タカオ(右)全 44 枚

モーターサイクルの未来を感じる「SFプロトタイピング展」

モータースポーツの魅力を拡張するVRシミュレータの研究開発に取り組むPROTOTYPE INC.(プロトタイプ)が、羽田イノベーションシティにて4月30日まで「SFプロトタイピング展」を開催している。

そこでは、これまでに見たことがない新しいモーターサイクルの世界を感じることができ、驚きの連続であった。

SFプロトタイピング展に展示されたサイバーパンクなヘッドセットSFプロトタイピング展に展示されたサイバーパンクなヘッドセット

まず衝撃的だったのが、現代造形作家・池内啓人氏が手がけたヘッドセットやメカが織りなすサイバーパンクな世界観。近い将来、バイクをライディングするときにはこうしたものを身につけるのだろうか。想像すると、ワクワクしてくる。

「モータースポーツをデジタル化する」と題されたイラストでは、誰でも楽しむことができる「FUTURE RACE」が提案されているが、ライダーはドローンより得た情報で、自分とマシンを俯瞰的に見たり、その先がどうなっているのか知ることができるという。

『モトロイド』は人の相棒となる!?

ヤマハ発動機の自立走行が可能な『MOTOROiD(モトロイド)』ヤマハ発動機の自立走行が可能な『MOTOROiD(モトロイド)』

未来のマシンはどんなものだろうか? 展示されているのが、ヤマハ『MOTOROiD(モトロイド)』だ。顔認識機能によって持ち主にのみ反応し、オーナーが手招きすれば無人のまま自立して、すぐ近くまでやってくる。

走行後に降りて「向こうへ行きなさい」と合図を送れば、自ら走り去って所定の場所でスタンドを出して駐車。再び呼ばれるときまで待機する。

人が乗って操ることなく、マシンが自立し倒れずに前進・停止・後退することができるモトロイドは、2017年の東京モーターショーで公開されたが、その後も着実に進化している。

バイク開発の最新シミュレーター『モトレーター』の可能性

SFプロトタイピング展に展示されたヤマハ発動機のシミュレーター『MOTOLATOR』SFプロトタイピング展に展示されたヤマハ発動機のシミュレーター『MOTOLATOR』

ヤマハは今回、ライディングシミュレーター『MOTOLATOR』(モトレーター)を世界初公開した。モーターサイクルを開発するとき、想定するべきあらゆるシチュエーション、環境をデザインラボで再現するためにつくられたもので、ハンドルやグリップ、シート、ステップなどの高さや角度など位置を自在に設定でき、ライディングポジションをはじめとした乗り心地を検証できる。

傍らにはセンサーが張り巡らされたライディングスーツやVRゴーグルがセットされたヘルメットなどライディングギヤが置かれ、その頭上ではロボットの手もしきりに動いているから驚く。

SFプロトタイピング展に展示されたヤマハ発動機のシミュレーター『MOTOLATOR』SFプロトタイピング展に展示されたヤマハ発動機のシミュレーター『MOTOLATOR』

ヤマハはバイクを運転するロボット「MOTOBOT」(モトボット)も開発中で、2017年に発表した「Ver.2」ではサーキットをMotoGPライダーとともに走る映像も公開しているのだ。

45度の角度に車体を寝かし込んでのコーナリングは世界中に衝撃を与えたが、今回展示されているのは腕だけ。現在では感覚を再現する技術も進んでいるというから、もしやロボットがバイクを運転する感触を人間が味わえたり、人が運転する動作をロボットにそのまま伝えたり、今後さまざまなことができるようになるのかもしれない。モトレーターの展示は、そんなことを期待せずにはいられないものとなっていた。

ボンネビルを走る!リアルすぎるライディング体験

PROTOTYPE INC.が開発中の二輪型MRシミュレーター「GODSPEED XR」を試す青木タカオPROTOTYPE INC.が開発中の二輪型MRシミュレーター「GODSPEED XR」を試す青木タカオ

PROTOTYPE INC.が開発中の二輪型MRシミュレーター「GODSPEED XR」は、筆者も体験することができた。ヤマハ『YZF-R1』の実車にまたがって、VRゴーグルをつけると、目の前には最高速アタックの舞台となるボンネビル・ソルトフラッツの景色が広がっている。

実際にバイクを操縦しているかのように、アクセルをワイドオープンし平原を駆け抜ける。車体をフルバンクさせて右に左へコーナリングしてみようと、シート上でイン側にお尻をずらして膝を出してみたり、ライディングをリアルに体験でき、高い没入感が得られた。

PROTOTYPE INC.が開発中の二輪型MRシミュレーター「GODSPEED XR」を試す青木タカオPROTOTYPE INC.が開発中の二輪型MRシミュレーター「GODSPEED XR」を試す青木タカオ

オートバイのシミュレーションは、乗り手のボディアクションなどさまざま要因が複合的に絡む乗り物であるがゆえ、非常に難易度が高いが、PROTOTYPE INC.では、2014年12月に開催されたヨコハマホットロッドカスタムショーにて「GODSPEED」の初号機をすでに発表している。

8年を経て、さらに進化したセンシング技術と連動したシミュレーションアプリケーションにより、実車に近い操作感を実現した。

『鉄騎』復活にゲーマー歓喜!

ロボットゲーム『鉄騎』のコックピットをリビルドした「TYPE00R」ロボットゲーム『鉄騎』のコックピットをリビルドした「TYPE00R」

PROTOTYPE Inc.と池内啓人によるコクピット作品「TYPE00R」は、2004年にPROTOTYPE Inc.が創業のきっかけとなった『鉄騎』コックピットのリビルドプロダクトで、ゲームファンやロボット好き、SFファンに大注目されている。

「鉄騎」はカプコンがXbox向けに発売した二足歩行ロボット「Vertical Tank」の専用コントローラーで、当時ファンの度肝を抜き、いまもゲーマーたちの間で伝説となっているが、その「鉄騎」コックピットがよみがえった。

ライダー、ゲームファン、SF・アニメ好き、ファッションに敏感な人、あらゆるファン層に強い刺激を与えること間違いなしのSFプロトタイピング展」は入場無料、日時指定予約制。羽田イノベーションシティ ZONE-K[HANGER-B](京浜急行電鉄空港線・東京モノレール天空橋駅直結)にて4月30日まで開催中だ。

SFプロトタイピング展SFプロトタイピング展

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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