輸送密度で一律に扱うことは適当でない…斉藤国交相が地域交通の再構築に期待感 JR西日本の不採算線区問題

姫川沿いを北上する大糸線南小谷~糸魚川間。同線はJR西日本が唯一新潟県内で挙げた輸送密度2000人/日未満の線区。2007年6月23日。
姫川沿いを北上する大糸線南小谷~糸魚川間。同線はJR西日本が唯一新潟県内で挙げた輸送密度2000人/日未満の線区。2007年6月23日。全 15 枚

斉藤鉄夫国土交通大臣は4月12日に開かれた定例会見で、JR西日本が4月11日に公表した輸送密度2000人キロ/日未満の線区別収支について、記者の質問に答えた。

冒頭、今回の公表をどのように受け止めているのかについて問われた斉藤大臣は、「JR西日本からは、地域の方と各線区の実態や課題を共有し、持続可能な地域交通体系の実現について議論を行っていく必要があるため、線区の経営状況に関する情報開示を行うこととしたものであり、事業の休廃止など路線の見直しを行うためのものではないと聞いています」と述べ、廃止を前提にしたものではないと前置き。公表は地域交通の再構築の上で有意義なことであるとした。

反面、「輸送密度2000人未満であることをもって一律に取り扱うことは適当ではないと考えています」とも述べており、JR西日本に対し、情報共有を通して地域と円滑に対話することを期待した。

大臣自身も2018年4月に廃止された三江線(三次~江津)沿線で育っており、鉄道がなくなることに寂しさを実感しているとも述べているが、それだけに地域の公共交通を残していくことは非常に重要であるとして、鉄道事業者に任せるだけではなく、自治体を含めて地域で話し合う空気を醸成するためにも、意義ある公表だったという認識を示した。

また、国土交通省では2月から、地域鉄道のあり方を検討する「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」を開いているが、ここで輸送実態を踏まえた議論を行ない、その結果を夏頃にもとりまとめたい意向も示している。

このほか記者からは輸送密度2000人/日未満の線区のみを公表したことは後ろ向きな姿勢ではないのかという意見が出たが、これについては「鉄道事業者がどの範囲で路線別収支を公表すべきかについては、各社の事情に応じて地域との対話の過程で鉄道事業者が適切に判断していくべき事柄と考えています」と述べるに留めた。

一方、JR西日本が公表した線区の中で唯一、新潟県内に含まれている大糸線については、新潟県の花角英世(はなずみひでよ)知事が4月13日に開かれた定例会見で記者の質問に答えている。

質問で、記者からは「廃止を前提にした議論が」という言葉が出たが、これに対して花角知事は「あなた(記者)の個人的な見通しではないのか」と釘を刺し、廃止ありきの空気をけん制。数字自体は厳しいものであると認識しつつ、大糸線の活性化策を協議する場づくりの最中であり、今後は南小谷~平岩間が含まれる長野県と連携して取り組んでいくと述べるに留めた。

新潟県糸魚川市内の頸城大野駅。糸魚川駅から2つ目の駅。2007年6月23日。新潟県糸魚川市内の頸城大野駅。糸魚川駅から2つ目の駅。2007年6月23日。

大糸線については、2017~2019年が年平均5億7000万円の赤字となっており、100円を稼ぐために要した費用を示す営業係数は2693円だが、収入に対する費用の割合を示した収支率は3.7%と低い水準にある。これは運行本数が少なく、その分、線路保守などに要する営業費用も少ないことの証左で、逆に特急や貨物列車が多く運行されている幹線では比率が高くなる傾向にある。

また、コロナ禍を反映した2018~2020年の平均では、収支率こそ2.9%と低くなったが、2020年度の1日あたりの輸送密度が対2019年度比で半減(102人→50人)していることから、赤字額は4000万円、営業係数は738円増加している。

新潟県糸魚川市内の平岩駅。早朝・夜間は糸魚川から同駅折返しの列車がある。2007年6月23日。新潟県糸魚川市内の平岩駅。早朝・夜間は糸魚川から同駅折返しの列車がある。2007年6月23日。

《佐藤正樹》

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