マツダ100年の歴史を1つのストーリーで表現…ミュージアムがリニューアル

マツダミュージアムリニューアルオープン
マツダミュージアムリニューアルオープン全 30 枚

マツダは広島本社に隣接するマツダミュージアムをリニューアルオープン。5月16日より公式ホームページ上にて見学予約の受付を開始し、翌週の23日から来館が可能となる(完全予約制)。

◆累計176万人が来場したミュージアム

マツダミュージアムは創業100周年を節目に合わせて、リニューアルオープンを予定していたが、コロナ禍の影響で延期。今回開館が発表された。

マツダミュージアムは、「本物のクルマやエンジンといった展示を通じて、ファンや広島へ観光に来たお客様に、マツダや広島のモノづくりを知ってもらうとともに、小学生を対象とした、自動車産業学習の支援を行う施設として1994年にオープンした」と語るのはマツダ取締役専務執行役員コミュニケーション・広報・渉外・管理領域統括の毛籠勝弘氏。

そして、「展示コーナーと工場見学コースが同じ施設内にあるミュージアムは、マツダミュージアムだけ。実際の生産現場を間近で見ることが出来、来館したお客様から大変ご好評をいただいてる点の1つ」だと述べる。この大きな2つの点を通じて「マツダの歴史やクルマづくりに込めた思いを、展示物を通して感じてもらいたい」という。

マツダミュージアムリニューアルオープンマツダミュージアムリニューアルオープン

オープン以降、来館者数は年間およそ7万人、累計で176万人が、国内外から来館している。

今回のリニューアルオープンに際し、意義、役割を再定義し、2つのコンセプトが掲げられた。1つ目は、「お客様や地域の皆様との大切な出会い、双方向の交流の場として、その絆を育んでいくこと」。2つ目は、「マツダのDNAやブランドを発信する基地」だと毛籠氏。

そのために、「過去100年の歴史、そして次の100年に向けたマツダの思いや活動を、ストーリー性を持って開発からマツダのモノ作りまでの一連の流れを感じてもらえる施設とした」。さらにオンラインマツダミュージアムを新たに備え、「より多くの方にご覧いただけるようになった」と話し、「今後も地域をはじめ、世界中から広島にお越しになる全ての皆様に、生まれ変わったマツダミュージアムを楽しんでもらい、マツダのクルマづくり、クルマの楽しさ、その可能性について感じてもらいたい」とコメントした。

◆マツダのデザインメンバーが企画演出

全体のデザイン監修を行ったマツダシニアフェローブランドデザイン前田育男氏は、ミュージアムの空間構成とデザインのポイントについて、「一番のこだわりはストーリー性だ」という。「マツダがこれまで培った100年の歴史や、商品・技術に込めたモノづくりへの思いなど、マツダの挑戦の歩みをエピソードと実車を合わせて1本のストーリーとして感じてもらいたいという思いで設計した」と自身が込めたこだわりを語る。

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前田氏はもうひとつこだわりがあるという。それは「空間表現への作り込みだ」。展示は10のゾーンで構成しているが、少々複雑な空間となっていることを逆手に、「時代・領域に合わせ、レイアウト、色合い、照明など、エリアごとの世界観を作り込んだ。同時に、その“つなぎ”の部分を大事にして、結果、1つの物語として完成する空間構成としている」と説明。当然のことながら、「これら全てマツダのデザインメンバーで企画演出を行った“作品”だ」と述べる。

◆隅々にまでこだわった演出

マツダミュージアムはエントランスと10のゾーンで構成されている。エントランスはブランドスタイルを表現したホールと最新のマツダ車が展示され、ゾーン1は 1920~59 年を焦点にマツダのモノ造り精神の原点。ゾーン2、3、5、6、7は 1960年以降の総合自動車メーカーとしての歩み。そしてゾーン4はモータースポーツにフォーカスし、企業と技術の威信をかけた世界への挑戦をテーマとされた。続いてゾーン8では技術展示とされ、人を第一に考えるマツダのモノ造りをわかりやすく展示。続いてゾーン9は生産ライン見学。最後のゾーン10では次の100 年に向けたマツダのビジョンを見せている。

前田氏はこれら構成をデザインという視点で、次のように解説する。「エントランスはお出迎えの場所。周りの色合いを暗めに抑え、工場の一部にいきなり現れたエントランスは、少し秘密基地のようでワクワクしてもらえる場所とした」。そこから中へ入るとマツダの新世代店舗や、モーターショーブースと同様、「最新のブランドスタイルに合わせたインテリアだ。クルマが綺麗に見える照明、温かみを感じさせる素材で構成し、マツダの世界に皆さんを温かくお迎えする空間だ」。

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そこからミュージアムツアーがスタート。ゾーン1へは“タイムトンネル”と呼ばれる渡廊下を進みマツダの創業時に時計を巻き戻す。前田氏は、「歴史の幕開けを感じさせる、静かで落ち着いた空間で、工業で世界に貢献するという創業者の真剣な決意、我々のものづくりの原点を感じてもらいたい」という。そこからマツダの黎明期から弧を描くように順を追って、「各時代を代表し、新たな価値づくりに挑戦し続けたエポックメイキングなプロダクトたちを見せている」と前田氏。

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そしてその空間の最後に現れるのが、モータースポーツのコーナーだ。「マツダのモノ作りスピリットの象徴ともいえる飽くなき挑戦の歴史で、モータースポーツを通じてその独自の技術で世界と戦ったクルマたちを紹介」。因みに前田氏個人が大好きな空間とのこと。

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ゾーン8は最新技術を見ることが出来る。「熱いレースシーンから一転し、研究ラボをイメージさせる白を基調としたクリーンでシンプルな空間とした。クルマづくりに対するエンジニアの総意と工夫、その独創性を感じてもらいたい」と前田氏はいう。続いてマツダミュージアムだからこそみられるアッセンブリーラインを通り、ツアー最後は、デザイン中心の未来展示のコーナーだ。「過去の展示にはなかった新しいコーナーで、我々が今回とても力を入れたゾーン」だという。「技術展示、アッセンブリーラインからこの空間へのトランディションで左脳から右脳へ意識を変えてもらい、落ち着いた空間の中で、匠の手で作り込まれたデザインの美しさ、その先にあるマツダの未来を感じてもらいたい」とそこに込めた思いを語る。

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実はもう2つ前田氏のこだわりがあった。その1つがスタッフのユニフォームだ。地元広島を拠点に活動しているデザイナーの中神一栄さんと、マツダデザインのコラボレーション。「1枚の鉄が美しい造形を作るように、1枚の布で美しい洋服を作るというテーマで、シルエットの美しさにこだわったデザインだ」。もうひとつはグッズショップ。「ここまでの盛り上がりの余韻に浸りながら、その世界観を再認識してもらえる場所にした。自然に財布の紐が緩くなる場所になっていれば成功だ(笑)」とコメントした。

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◆子供たちにも授業を通じて楽しんでもらいたい

リニューアルオープン後のマツダミュージアムの新たな取り組みについて、マツダコーポレート業務本部総務部コーポレートサービスグループの佐藤貴哉氏は大きく3つあるという。ひとつめは、マツダミュージアムの公式ホームページ内にオンラインマツダミュージアムというサイトを開設。このサイトは、「遠方などで、来館が難しいお客様にも、マツダミュージアムの魅力を感じてもらいたい、そしていつか来館したいと思ってもらうことを目指して作られたもの」で、館内動画や、オフィシャルサイトから各ゾーンに関連する情報を集約。「リアル見学とは違う目線からオンラインならではの楽しさを味わってもらえる」という。

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次に教育支援の充実を挙げ、「閉館時にも小学校の社会科見学シーズンにオンライン授業を行い、楽しく、自動車産業について理解を深めてもらえたことから、リニューアルオープン後もさらに内容を充実させて実施する予定だ」。もうひとつは、「公式ホームページから見ることのできるマツダキッズチャンネルだ。これまではキッズミュージアムとして小学生向けサイトはあったが、これまで以上に楽しく学習できるサイトにした。マツダのデザイナーやエンジニアなどの社員が、動画でクルマづくりについて分かりやすく解説。クイズコーナーなど遊び要素を取り入れて、より気軽に楽しんでもらえる」と話す。

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そしてミュージアムショップではオリジナルグッズも用意されている。テーマは「感動を持ち帰ろう」。例えばゾーン2で壁画になっている『コスモスポーツ』の設計図をアートフレームにしたもので、シリアルナンバー入りの数量限定品のほか、歴代マツダ車をグラフィックデザインにしたハンドタオルやトートバッグなど「子供から大人まで楽しめて、お土産としても購入しやすいグッズを揃えている」と佐藤氏はこだわりを説明。

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最後に毛籠氏は、「しっかりと準備をしてくれた全てのスタッフに感謝する」と述べたうえで、「マツダの100年の歴史が詰まったミュージアムのリニューアルオープンなので、地域の皆様には地元企業であるマツダの歴史をより深く知ってもらえる機会になると思う。また、マツダ車のオーナーやマツダファンの方には、思い出の1台を含めて丸ごとマツダがぎゅっと詰まった内容になっているので、ぜひドライブして来て欲しい。そして平和都市広島の観光スポットの1つとして来館もして欲しい」とし、地元広島に根付いた企業として、大きく、幅広い人々に貢献したい旨を語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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