【ベンガルール通信 その17】 それぞれの移動・通勤事情と求められる戦略性

涼しくて眺めの良い特等席
涼しくて眺めの良い特等席全 1 枚

南インドより、ナマスカーラ!

4月末から5月に掛けて、日本がGWの頃、インドは122年ぶりという熱波が全土を覆っていた。道理でこのところ、海抜900m超の当地も暑いわけだ。昼間はシーリングファンを強めに回しているが、風通しのある下層階にいる限り空調を入れるほどではない。

普段なら “エアコンつけて” と乗客が頼んでも、聞こえないふりして無視されるか、窓を全開にしてスピードを上げて “涼しくなっただろ” とドヤ顔で返されるばかりのUber やOLAのドライバーたちも、客待ち中の暑さに耐えられず自らの為に冷房を使っている、と記事にされていた。

十数秒の信号待ちでも必ずエンジンを切るほどの燃費重視の倹約運転が一般だから、燃料価格の高騰が続く中、普段なら絶対に考えられない光景、ということなのだろう。

***

ベンガルールから南西に伸びる国道をちょうど1時間ほどいった距離に、日系OEMを中心に自動車関連事業者が集積する工業団地がある。都心から数十キロの道のりは、平日の日中、普通に流れている状態で所要1時間。慢性的な渋滞ポイントを迂回したり、工事や冠水による通行帯規制に阻まれたり、思いがけず祭事や催事に参列させられたり、市内のどの辺りを起点・終点とするかによっても日々の移動時間の振れ幅は大きく、余裕を見て2-3時間の想定で出発しても間に合わないことがある。

ここを勤務先として毎日通う多くの日本人駐在員は、通勤ラッシュを避けてより朝早く夜遅い時間に移動しようとするから、必然的に一日の大半を工場内で過ごすことになる。根城をどこに定めるかによりQOLも大きく変わってくるが、“インドに仕事をしに来る日本人” が長期滞在して身体的・精神的な健康を維持できるエリア・物件は現実的には限られているから、会社は運転手付き借り上げタクシーを自家用車として与えるのが一般的。日本以上に仕事に専念できる幸せな環境 (!?) が保証されている。

他方、当地の従業員たちの通勤の足は、徒歩か路線バスか二輪車か、または近所の誰かに便乗するか、くらいしか現実的な選択肢はない。例え高等教育を受けて専門領域を持つ者でも、大家族を残して離れた土地で働く自由はなかなか得難いから、“仕事を選ぶ” というより手近に現金収入を得られる “職場を選ぶ” 感覚が強い。必然的に職場には近隣住民が集うことになるが、それを超えた人材を求める企業は、好ましい人材が住まう住宅エリアまで送迎車やシャトルバスを手配することが求められる。


《大和 倫之》

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