体験チャネルとして試乗を強化。カーシェアでディーラー支援…「エニカ」馬場光 代表取締役社長[インタビュー]

体験チャネルとして試乗を強化。カーシェアでディーラー支援…「エニカ」馬場光 代表取締役社長[インタビュー]
体験チャネルとして試乗を強化。カーシェアでディーラー支援…「エニカ」馬場光 代表取締役社長[インタビュー]全 1 枚

2022年2月にヒョンデ モビリティ ジャパンが「IONIQ 5」と「NEXO」で12年ぶりの国内市場参入を果たした。実店舗を持たずオンライン販売や提携業者によるメンテナンスが話題となったが、発表と同時にカーシェアアプリ「エニカ」を通して、自由に試乗ができるという発表もあった。

グローバルでは「テスラ モデルY」と真っ向勝負している「IONIQ 5」。エニカはこれを「わ」ナンバーのレンタカーとして貸し出すビジネスを始めた。その背景や狙いはなにか。「エニカ」を運営するDeNA SOMPO Mobility 代表取締役社長 馬場光氏に聞いた。

馬場氏は、7月8日に開催されるカーディーラー業界におけるDXトレンド~シェアリングプラットフォームを活用した事業作りのユースケースに迫る~に登壇し詳説する予定だ。

――さっそくですが、エニカが「試乗車」として16台(※2022年6月時点)の「IONIQ 5」をレンタカーとして提供したのはなぜでしょうか。

馬場氏(以下同):

パートナーであるヒョンデさんが日本に再参入するにあたり、完全オンライン販売を採用するというお話をうけまして、それならエニカのカーシェアが、オンライン販売における体験チャネルを担う事ができるのではないかと考え、提供を開始しました。体験チャネルとは、オンライン購入前に車を実際に「見る」、「乗る」の部分で、これまでの試乗に近い部分ですね。

そのような考えに至ったのも、エニカは元々個人間のカーシェアから始まったサービスではあるのですが、2021年から事業者の保有車両における法人カーシェアリング事業も本格的に開始しました。

背景には、企業が保有する試乗車や社用車の有効活用・経費削減として、社員や地域の住民などに貸し出す動きが活発化したことがあります。その中で、特に自動車ディーラーから、試乗車が「わ」ナンバーにせずとも登録できるので、シェアリングにも使いやすくなったとして取り扱いが増えました。これまでの協業としてはステランティスジャパンとアウディを含む様々な事例があります。このような実績を踏まえ、カーシェアとディーラービジネスの交わり方の方向性が見えてきましたので、今回のIONIQ 5の提供にも踏み切った次第です。

ステランティスジャパン(旧FCAジャパン)については、現在、国内における多くのディーラー様で旧FCAグループのほとんどの車種がエニカで利用できます。ジープ「コンパス」は1日乗っても5000円程度から利用できると非常に人気です。また、FIAT初の電気自動車として話題を集めている「FIAT 500e」も今後ラインナップに加わる予定です。

アウディ「e-tron」のシェアが非常に好評で、アウディジャパン販売では全店舗でエニカの取り扱いがあります。さらに、2022年4月からは「アウディGo」のレンタカーもエニカ経由で申し込むことができるようになりました。

――ディーラーがエニカを利用するのはなぜでしょうか。

まずは、ユーザー側に「有料でも長時間試乗したい」というニーズが少なからずありますし、旅行などの機会に新型車を試しに乗ってみたいという人もいます。一般的なレンタカーでは車種が限定されがちですが、ディーラー様が行うカーシェアであれば新型車も試すことができます。

ディーラー様からすると、エニカの仕組みを導入するだけで、そのような価値を簡単に提供できるようになりますし、直接的にユーザーの来店頻度が向上することで顧客接点を増やすことに繋がります。

実際にディーラー様から、新規顧客の開拓や既存顧客の活性化、再来店のきっかけになる点が評価されています。

――お店の周りをちょっと走るくらいでは、わからないことのほうが多いですからね。EVなどは乗って、使ってみないと不安な人も多いのでニーズがありそうですね。

はい。1日、数日といった長期試乗はEVととても相性がよいようです。IONIQ 5のレンタルでは、7時間以上の長時間利用が全体の9割を超えています。さらに面白いのは、ほとんどの人が充電をしてくれるという点です。EV残量が減ったから充電をするということに限らず、街中の充電器を使って、EV車の充電とはどういうものなのかを体験している人が多いようです。

――日産もリーフで1泊2日試乗などを展開していますが、普及過渡期のEVでは長時間試乗は必須かもしれませんね。試乗に対する売り手の意識も変える必要がありそうです。

現在ディーラー様の多くが、お客様の来店機会の減少に悩んでいます。ある調査では成約までの来店回数が2回を切ったという報告があります。お客様からすると、事前にネットなどで車の情報を集め、車種を絞り込んでほぼ決め打ちで来店する傾向になってきています。

そのような状況下でカーシェアによる長時間の試乗は、マーケティング効果も期待できます。たとえばIONIQ 5を借りた人は、隣に営業スタッフが乗っている従来型の試乗とは異なり、自分の好きな時間、好きな場所へ自由に運転ができるので、写真や動画撮影がしやすく、SNSなどにも積極的に投稿してくれます。試乗した方の投稿内容やコメントを見て、ユーザーの疑問や不安が解消され、車購入検討の材料につながることもあります。また、エニカの個人間カーシェアの場合、シェアするドライバーはその車を所有するオーナーに直接車両の情報や使い勝手などを聞くことができます。購入前に試乗がしたいという理由で、エニカを使っていらっしゃる方もいますし、利用したときのオーナーとのやりとりが購入の参考にされることもあります。

――バイラルマーケティングの見本のようですね。

はい。試乗車のカーシェアは、顧客との接点を増やすだけでなくディーラー様の業務の一部を外だしする機能として活用できる可能性があります。今述べたようにネットでの販促や口コミがプラスに働くことがありますし、試乗というサービスを、エニカを利用することで、コストやリスクを転嫁できます。カーシェアを活用すれば試乗をマネタイズすることも可能です。

さらに、メーカー様やディーラー様がカーシェアに対してインセンティブを与えれば、集客・販促に役立てることができます。IONIQ 5では、エニカを通じて試乗した人が実際に車両を契約すると、エニカにインセンティブが発生します。また、このインセンティブは個人オーナーとしてIONIQ 5をエニカに登録したユーザーにも適用されます。

――なるほど。これまで試乗というとただのサービスであったものが、エニカやシェアリングのしくみを生かすことで、既存顧客のアフターケア、新規を含む集客、販促やマーケティングツール、マネタイズまで可能になるということですね。

ディーラー様や店舗が持つ機能のすべてを担うことはできませんが、Anycaを活用すればディーラー様がリーチしにくかった層へのアピール、顧客や地域との接点拡大、口コミによるプロモーションなどを支援できるのではないかと考えています。

馬場氏が登壇する無料のオンラインセミナー カーディーラー業界におけるDXトレンド~シェアリングプラットフォームを活用した事業作りのユースケースに迫る~は7月8日開催。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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