【マツダ CX-60】CX-5との差別化、デザインに盛り込まれた「日本の美」が生み出すラグジュアリーとは

チーターの動きを表現する魂動デザイン

『CX-5』とのデザインの差別化は

たったひとつだけ付け足したパーツ

インテリアも骨格の強さを表現

日本人だからこそ感じられる美意識

マツダ CX-60 XD ハイブリッド プレミアムモダン
マツダ CX-60 XD ハイブリッド プレミアムモダン全 16 枚

マツダはラージアーキテクチャーを使用したプレミアムSUVの第一弾『CX-60』の予約受注を開始した。そのデザインコンセプトワードは“Noble Toughness(ノーブル・タフネス)”だという。ミドルクラスの縦置きパワートレインSUVが持つ強さと魂動デザインの知性、エレガンスをしっかりと両立させるというものだ。

チーターの動きを表現する魂動デザイン

「CX-60をデザインする上で1番大切にしてきたのは、走りの良さが見る人にしっかりと伝わる骨格の表現だ」と話すのはマツダデザイン本部チーフデザイナーの玉谷聡氏だ。「鍛え抜かれたアスリートの肉体のように、一目見てその運動性能の高さを感じ取り、自然で堂々と力強い骨格を目指した」という。

その根本は、魂動デザインが当初から追い求めてきた地上最速の動物であるチーターの走る動きの美しさ。つまり「後ろ足によって前へと跳躍し、前足でしっかりと地面を掴んで方向を定める動き」だという。クルマに置き換えると、4輪を踏ん張らせながら後輪にしっかりと荷重をかけて前方に加速する様子となるだろう。

マツダ CX-60 XD ハイブリッド プレミアムスポーツマツダ CX-60 XD ハイブリッド プレミアムスポーツ

玉谷氏はCX-60について、「意のままに走るための構造やレイアウトを追求し、その結果としてロングノーズ、ショートデッキのバランスが生まれた。これは魂動デザインが目指してきた“生命化の動き”のバランスとも方向性が一致する」と、機能と魂動デザインが一致していることを強調。

さらに走りの面においても、「しなやかで強い走りを持つCX-60のポテンシャルと、生命感ある形を両立させ、自然で力強い骨格として表現。そして堂々としたその骨格の上にシンプルなデザインテーマで奇をてらわず、美しさの正当を表現した。どのアングルから見てもその骨格の魅力がしっかりとわかるように、丁寧に作り込んでいる」とコメントした。

『CX-5』とのデザインの差別化は

マツダ CX-60 25S Sパッケージマツダ CX-60 25S Sパッケージ

プレミアム価格帯へ参入するCX-60をデザインする際に、デザインとして挑戦しなければならない課題が2つあった。そのひとつが「『CX-5』に対してしっかりと一目見てわかる車格の高さを表現すること」。そしてもうひとつは、「1つのネームプレート(車種)で、ノンプレミアムゾーンからプレミアムゾーンに至る広い価格帯の商品価格の展開を実現すること」だった。

まず車格感の表現については、「威風堂々としたプロポーション。そしてシンプルなデザインテーマの美しさの正当を、しっかりと表現することで実現した」とのこと。

ではCX-5と比較してどうか。玉谷さんは「CX-5もスタンスが良くウェッジが効いたスポーティなSUVで、デビュー当時から高く評価してもらっている」としたうえで、このCX-5の骨格上の良さは、「ウェッジした形によってすばしこく動くそのフィーリングにある。骨格にも若々しいイメージを持っており、クラウチングスタートのイメージを感じさせる」と説明。

マツダ CX-60 25S Sパッケージマツダ CX-60 25S Sパッケージ

一方のCX-60では「厚みを増したフロントフェイスなどにより、ウェッジを和らげて、ゆったりと堂々とした姿勢が感じられる。印象としては、どっしりと少し大人っぽい感じがするだろう」。また、「前後に貫く“背骨”がウエッジを和らげ、ボディ断面の変化によって光を変えながらも、後ろから前への加速感を表現した。ぐっと後方に位置するキャビンがその荷重をしっかりと後輪にかけているのがわかってもらえるのでは」と説明する。

「キャビンの後端からリアアクスルをかすめて地面に突き抜ける大きな動きが、CX-60の大胆で大きな造形テーマ。後方に引いたキャビンに溜めた力を、リアアクスルに伝える強い荷重を感じさせている。堂々とした縦置きパワートレインを持つクルマの風格を骨格全体で表した」

また、そのボディサイドは、「アーティスティックな光の移ろい、動きを表現している」とのことで、これはマツダ車共通の印象だ。「余分な要素を徹底的に廃して、その光の表現がしっかりとシンプルに強く表現できるようにした」。そして、「シルエットやグラフィックラインのスピード、ボディサイドの面の動きの全てが、骨格的なテーマの動きや速さに沿って連動し、シンプルなテーマを全身で表す強い動きとして完成させている」とそのこだわりを述べた。

たったひとつだけ付け足したパーツ

マツダ CX-60 XD ハイブリッド プレミアムスポーツマツダ CX-60 XD ハイブリッド プレミアムスポーツ

魂動デザインは引き算の美学だが、CX-60ではひとつだけ付け足したものがある。それはフロントフェンダーにあるパーツだ。「このエリアには我々の誇るエンジンが載り、そのパフォーマンスの高さと環境性の高さを誇りたいという思いと、FRの骨格をしっかりと強調するためだ」と玉谷氏。「これは昔のFRの車のエアトレットのオマージュで、機能的意味はないが、ここにこのクルマを所有してもらう喜びを感じてもらいたい」とその理由を話す。また、この意匠はグレードによって変化し、プレミアムモダンなどはブライトメタル。スポーティグレードは黒。ベースグレードは樹脂パーツだ。同時にPHEVと6気筒のマイルドハイブリッドエンジンはここにネーミングも入る。

インテリアも骨格の強さを表現

インテリアもエクステリア同様、縦置パワートレインの骨格の強さ、それと空間構成に表現した。車幅を生かしたワイドなインストルメントパネルや、前後方向につき抜けるスピード感と構造的な強さを見せるドアトリムアッパーやコンソールによって構成される。これらの動きはマツダ車がよく用いているものだが、中でもCX-60では、「ワイドなコンソールがハイパワーを伝える強靭なトラスミッションの存在とその前につながる縦置きの強力なパワートレインの存在を想起させている。これら空間構成の特徴、魅力となるところにアイキャッチによる素材を配し、空間構成の強さ、そして縦置きレイアウトの魅力を強く感じられるデザインにしている」と語った。

日本人だからこそ感じられる美意識

マツダ CX-60 XD ハイブリッド プレミアムモダンマツダ CX-60 XD ハイブリッド プレミアムモダン

もうひとつの課題が、プレミアムゾーンからノンプレミアムゾーンまでを有するCX-60ならではの差別化だ。ここで注目したいのは、プレミアムゾーンの中でも頂点に位置する「プレミアムモダン」グレードだ。PHEVとディーゼルハイブリッドに設定されるプレミアムモダンは、インテリアの作り込みで他グレードとの差別化を図った。表現したのは「マツダが考えるジャパニーズプレミアムによるインテリア」だ。

日本の高級な工芸素材をそのままインテリアにインストールする表現ではなく、例えば自然に親しんできた日本人だからこそ感じる四季の中にある光の移ろい、一瞬のその美しさを感じ取る日本人の感性、美意識を元に考えたデザインだという。「工業製品ではあれど、職人の手によって作り出す手のぬくもりを、その製品に残していくことを大切に考えている」これがマツダが考えるジャパニーズプレミアムなのだ。玉谷氏によると、「大切にしてきた日本に根差したものは4つ。魂動デザイン、日本の美意識、人馬一体、そして匠」だという。

マツダ CX-60 XD ハイブリッド プレミアムモダンマツダ CX-60 XD ハイブリッド プレミアムモダン

「魂動デザインは、引き算の美。要素をシンプルに削ぎ落し、本当に見せたいものだけをしっかり見せるという考え方を持っている。多くの素材の配色を絞って凝縮し調和したコーディネーションにしていくことを諧調(かいちょう)という。そして諧調で整えた空間の中に、あえて1つ異質なものを織り込んで心地よい変化、あるいは心地よい乱れを作って空間にリズムやダイナミズムを作ることを破調(はちょう)といい、そういう表現技法も取り入れている。(CX-60では)織物の光の光沢をメインに諧調で整えた空間を作り、メイプルウッドの揺らぎある木目の変化で破調を表現した」

そして人馬一体と匠については、「人馬一体では結ぶということに着目。古来から日本の馬具には結ぶことを様々に極めることによって、人馬一体を極めてきた。人と車の間にあるあらゆるアジャストメントにイメージを重ねた」とその発想を説明。また結ぶ手法は多くあるが、今回は、「かけ縫いの手法にその結ぶイメージを挟んで、その縫い目の調整の難しさ、そして美しさに匠の手のぬくもりのイメージを重ねている」とし、このかけ縫いはインストルメントパネルセンターに採用されている。

玉谷氏は、「日本人の感性で想像した、マツダの考えるジャパニーズプレミアムを感じてもらいたい」とそのこだわりを語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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