「なにをどこから手を付けていけばいいのか?」ディーラーのモビリティシフトを支援する…スマートバリュー[インタビュー]

「なにをどこから手を付けていけばいいのか?」ディーラーのモビリティシフトを支援する…スマートバリュー[インタビュー]
「なにをどこから手を付けていけばいいのか?」ディーラーのモビリティシフトを支援する…スマートバリュー[インタビュー]全 1 枚

電動化やコネクテッドがクルマの機能を再定義し、BYDやソニーのような新しいプレーヤーも登場した。シェアリングが利用形態や所有スタイルを、リースやサブスクリプションのような販売方法も広がっている。メーカーのみならず、販社・ディーラーもこれら変化への対応に迫られている。

対応を模索する販社・ディーラー

自動車業界は、いまのままではダメだという市場の空気はひしひしと感じているはずだ。だが、現実には「なにをどうすればいいのか」というそもそもの疑問や課題の答えを模索中なのではないだろうか。CASE革命やモビリティ革命は比較的新しい潮流なので、答えがないのは当然だ。だが、手がかりがないわけではない。横浜トヨペットの「U-BASE湘南」、関東マツダの新世代店舗など、業界の新しい取組みもある。

経営の多角化ではトヨタカローラ名古屋の「しぇあくる」というサービスは、従業員に格安で週末などに貸し出すものだ。レンタカーとの違いは、ナンバーが「わ」「れ」ナンバー(=レンタカーではない)ではない社用車をシェアカーとして活用する。この事業の立上げ下支援を行ったのはスマートバリュー。同社は、「クルマベース」「クルマツナグプラットフォーム」という2つのクラウドサービスプラットフォームを持ち、これらを使った各種モビリティサービスの他、スマートシティやMaaS事業のコンサルティング、構築支援、運営・成長支援を行っている。

スマートバリュー フリートサービスDivision フィールドセールスGroup GroupLeader の齋藤譲一氏が、7月8日に開催予定の無料オンラインセミナーカーディーラー業界におけるDXトレンド~シェアリングプラットフォームを活用した事業作りのユースケースに迫る~」にて、ディーラーのDX支援、新事業支援の内容、「しぇあくる」の事例について講演する。講演に先立ち齋藤氏に話を聞いた。

社用車をシェアリングカーにする

――スマートバリューは、モビリティや車両向けIoTのプラットフォームを持つ、いわゆるプラットフォーマーとして、さまざまな企業のカーシェア事業、フリート管理システムの基盤を提供しています。このビジネスと「しぇあくる」のような新事業の構築支援、戦略コンサルはどうつながっているのでしょうか。

齋藤氏(以下同):弊社のモビリティサービス事業は、単にクラウドプラットフォームを提供するだけでなく、保険会社やオートリース会社など金融系のパートナーやIT系のパートナーとの関係を生かしたデータ利活用のフレームワークもあります。また、クルマベースやクルマツナグプラットフォーム上では、自社のアプリケーションも提供しています。つまり、ディーラーがカーシェアを始めたい、新しいモビリティサービスを作りたいといったとき、予約・課金、ドアロック解除などのサービスインフラを提供するだけでなく、実際のビジネスでの知見やマーケット情報を利用できます。

――なるほど。相談や支援を依頼する側としては、先行事例のリアルなデータや知見が活用される点は大きいですね。しぇあくるの立上げ支援は、まさにこの事例ということですか。

はい。もともとトヨタカローラ名古屋様では、事業改革やメーカーからの自立の必要性を認識しており、この課題に取り組んでいました。新規事業のプロジェクトが動いていたのですがなかなかうまくいかない状態が続いていたところ、縁があってお手伝いさせていただくことになったのです。その中でディーラーの課題や希望などを聞いて、「しぇあくる」というサービスを構築しました。

――「しぇあくる」は社用車の稼働していない時間、社員などに貸し出すサービスと聞いています。これはいつごろからスタートしたものですか。

プロジェクトは2018年から始まり、2019年9月に正式ローンチしています。クルマが所有から利用へというトレンドがある中、事業や営業に使う白ナンバーの社有車の維持コストはできれば下げたいという事業所や経営者の課題ニーズというか本音があります。夜間、土日(休業日)など白ナンバーの社有車の稼働率は(旅客・貨物の緑ナンバーと比較して)それほど高くありません。使わないときは社員や社員などのコミュニテイに格安で貸し出せれば、車両維持コスト負担軽減、社員には福利厚生として生かすこともできます。

車両の維持コストを上回る価格で、有償で貸し出すと、レンタカー事業として事業申請や証明書などのハードルがありますが、共同使用契約の中では、わナンバーなど取らずともシェアカーとしての活用が可能になりました。「しぇあくる」はこの制度を利用しています。

――都市部でも営業車を通勤に活用できそうですね。

そのような利用方法もあるとは思いますが、実際には福祉・介護事業者や単身赴任者向けの車両として導入する事業所、企業が多いです。

――ところで、ディーラーの新規事業やモビリティシフトについて取材をしていると、トヨタ系のディーラーでの取り組みに触れる機会が多く感じられます。根拠はないのですが、実際、スマートバリューへの問い合わせや事例でそのようなことはありますか。

明確な相関はないと思います。国内最大手メーカーの販社ということでニュースになりやすいという理由はあるかもしれません。ただ、新規事業やプロジェクトは結局資金力がなければ実行に移せません。国内の販売シェアではトヨタが50%近くを占めているので、必然的に多くなる傾向がでても不思議はないですね。

トヨタは、ディーラーとの関係も他メーカーより強いと言われています。地域ごとの4つのディーラーを展開し車種ごとにうまく競合、共存をさせていましたが、昨年車種統合を行いました。ディーラー専売車がなくなった分、他社+他店舗との競争部分が増えたので、メーカー依存を切り替えていかなければ、という危機感から自立や新事業へのモチベーションになっている面もあるでしょう。

――その動きはトヨタに限らず全ディーラーに広がっていくでしょうか。

トヨタ以外は車種統合やディーラー再編はすでに済んでいますが、モビリティビジネスへの多角化はあり得ると思っています。しかし、新車販売および整備メンテナンスなど店舗の意味がなくなるわけではありません。役割や機能の変化はあっても、メーカーとの関係が大きく変わるということはないと思います。メーカーも自社のクラウドプラットフォームを整備する動きがあり、モビリティビジネスへの対応も行っています。車両販売だけでなく、コネクテッド機能とサービスプラットフォームを活用した事業がメーカーとディーラーの間で広がっていくと思います。

奇をてらうのではなく地域の課題やニーズに向き合う

――なるほど。オンライン販売が増えても店舗との共存は可能ですね。最後に、ディーラーが新規事業を考えるときのポイント、またはアドバイスはありますか。

確かに100年に一度と言われる業界の変革期ですが、奇をてらったビジネスや戦略である必要はありません。まずは自分達のもっているアセット(顧客や技術)をベースに考えることをお勧めします。

ディーラーはもともと地域密着型のビジネスといえます。現在持っている顧客や地域の課題やニーズを掴み、そのソリューションはなにか、という視点で考えることが重要です。

アドバイスとしてはシンプルで「誰をどう幸せにするのか?」からスタートすることです。これが明確になれば、なにをどうするが決まります。それを実現するには、どんな技術、インフラ、サービスが使えるかということは我々がいっしょに考えることができます。

――本日はありがとうございました。

齋藤氏が登壇する無料のオンラインセミナー カーディーラー業界におけるDXトレンド~シェアリングプラットフォームを活用した事業作りのユースケースに迫る~は7月8日開催。

《中尾真二》

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