本格システムで力強くかつ緻密に…アクティブシステム[スピーカーの鳴らし方・大研究]

「アクティブシステム」を構築したオーディオカーの一例(製作ショップ:ジパング<鳥取県>)。
「アクティブシステム」を構築したオーディオカーの一例(製作ショップ:ジパング<鳥取県>)。全 8 枚

スピーカーは音の出口であるがゆえに、「何を使うか」で聴こえ方が大きく変わる。しかしカーオーディオでは、「どう鳴らすか」も問題となる。取り付け方やシステムの組み方でも、得られる結果に違いが出るのだ。当特集では、そこのところを深掘りしている。

◆「アクティブシステム」は、コストがかかる…。

さて、前回は「パッシブシステム」にスポットを当てた。それに引き続いて今回は、その対極的な鳴らし方である「アクティブシステム」について考えていく。

最初に、「アクティブシステム」とは何なのかを説明しよう。セパレートスピーカーを鳴らす際には必ず、信号の帯域分割をどこかしらで行うこととなる。それをパワーアンプの後段にて行う形態のことが「パッシブシステム」と呼ばれていて、パワーアンプの前段にて行う形態のことが「アクティブシステム」と呼ばれている。

なお、「アクティブシステム」の方がコストがかかる。なぜならば、システムが大型化するからだ。

例えば使用するスピーカーがセパレート2ウェイのときには、音楽信号をツイーターに送り込む高音信号とミッドウーファーに送り込む中低音信号とに2分割することとなるわけだが、それをパワーアンプの後段にて行う場合には、パワーアンプのch数は「2」で良い。

対して「アクティブシステム」では、左右の各chの音楽信号をあらかじめ2つずつに分割するので、パワーアンプのch数は計「4」が必要となる。

で、外部パワーアンプにて鳴らす場合には、必要なch数が増える分アンプ購入予算が膨らみがちだ。さらには必要なケーブルの本数も増え、取り付けの手間も多くかかる。このように「アクティブシステム」では何かとコストがかさんでしまう。

「アクティブシステム」を構築したオーディオカーの一例(ジャンライン&パートナーズ・デモカー)。「アクティブシステム」を構築したオーディオカーの一例(ジャンライン&パートナーズ・デモカー)。

◆ベストな帯域分割のさせ方を模索可能に!

しかし、音的にはメリットがある。コストがかかるのはダテではないのだ。メリットは主には3つある。まず1つ目は、「状況に応じたベストな帯域分割のさせ方を模索できること」だ。カーオーディオでは、車種によりさらにはオーナーの考え方により、スピーカーの取り付け方が変化する。なので、帯域分割のさせ方もベストな設定値が都度変わる。その点「アクティブシステム」では、プロセッサーにて帯域分割の設定値を自在に変えられるので、ベストな帯域分割のさせ方を試行錯誤しながら見つけ出せる。

なお、「パッシブシステム」でもパッシブクロスオーバーネットワークを自作する場合にはその設定値をいかようにも変更可能だ。しかし、さまざまな設定値を試しづらい。設定値を変えては音を確認するという作業を、繰り返すのが難しいのだ。

そしてメリットの2つ目は、「スピーカーの駆動力が上がること」だ。「アクティブシステム」では1つ1つのスピーカーにパワーアンプの1chずつをあてがえるので、よりトルクフルにスピーカーを鳴らせるようになる。

ただしこの利点については前回の記事にて触れたように、「パッシブシステム」では「バイアンプ接続」にて鳴らすことにより、同様の利点を享受可能だ。とはいえこれを実行すると「システムが大型化しにくい」という「パッシブシステム」ならではの利点を失うこととなる。しかし、それと引き換えに音を良くできる。このことは、頭に入れておいて損はない。

「アクティブシステム」を構築したオーディオカーの一例(フォーカル・デモカー)。「アクティブシステム」を構築したオーディオカーの一例(フォーカル・デモカー)。

◆「アクティブシステム」では、「タイムアライメント」を緻密に運用可能に!

で、「アクティブシステム」だからこそ得られる利点の3つ目は、「タイムアライメント機能をより緻密に運用できること」だ。

なお「タイムアライメント」とは、スピーカーの発音タイミングを変えられる機能だが、当機能が使用するプロセッサーに搭載されている場合、「パッシブシステム」では基本的にツイーターとミッドウーファーを「1つのスピーカー」として扱わざるを得なくなる。

しかし「アクティブシステム」では、ツイーターとミッドウーファーのそれぞれに対してベストな発音タイミング設定できる。この違いは結構大きい。

ところで、どのような「プロセッサー(DSP)」があり、それぞれにはどんなメリットがあるのか等々は、並行して展開している「DSPのススメ」という特集記事にて解説中だ。興味があれば、そちらの記事もぜひともチェックを。

今回は以上だ。次回以降もスピーカーの「鳴らし方」のいろいろを解説していく。お楽しみに。


《太田祥三》

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