自動車流通業界における新たなチャレンジ – 横浜トヨペット 小廻俊満氏[インタビュー]

自動車流通業界における新たなチャレンジ – 横浜トヨペット 小廻俊満氏[インタビュー]
自動車流通業界における新たなチャレンジ – 横浜トヨペット 小廻俊満氏[インタビュー]全 1 枚

自動車流通業界が大きく変わろうとしているなか、「自分だけの1台を創る・趣味とカーライフの融合」をキーワードに生活関連に入り込み、既存のディーラーの枠を超えた取り組みを推進しているウエインズグループ 横浜トヨペット U-Car営業推進部 部長の小廻俊満(こさことしみつ)氏に、同社が手掛ける新業態「U-BASE」について聞いた。

日本における自動車流通業界の新たなチャレンジの事例を紹介し、その将来像と方向性について展望する無料のオンラインセミナー「自動車流通業界における新たなチャレンジ~Honda Cars 川越・横浜トヨペットの取組み~」が7月28日に開催されます。各社のインタビュー記事やセミナー詳細はこちら

新しい販売手法への挑戦

---:「U-BASE」を始めたのは、どのようなきっかけがあったのですか。

小廻:ウエインズグループのスローガン「新しいうれしい!をつくる」と、会社方針「常に挑戦者であり続け、新しい未来を作っていく」のもと、U-BASEという新しい販売方法への挑戦を検討しました。

先程ご説明させていただきましたが、U-BASEは、「自分だけの1台を創る」「趣味とカーライフを融合させていく」「お客様の個性を刺激する新しいクルマの遊び基地」を実現するということがコンセプトの新スタイル店舗です。

またU-BASEのUには、「YOU=お客様・あなた」「遊=趣味とクルマの融合」「友=地域・お客様と繋がりをつくる」といった思いが込められており、これらを融合させた新しいカタチの発信基地といった思いも込められています。

---:もともと御社として、新しい販売方法を開拓したいという思いがあったのか。

小廻:はい。もともと横浜トヨペットには新しいことに挑戦してきた歴史があります。納車前の新車点検工場や女性セールスの採用は日本で最初ですし、自動車販売会社で海外進出したのも弊社が初めてです。ほかにもいろいろな「初めて」があるのですが、昨年7月に「新しいうれしい!をつくる」という新スローガンを策定し、あらためて「新しいことに挑戦しよう!」という全社的な機運が高まっています。U-BASEの取り組みはその中のうちの1つということです。

---:U-BASEは、アウトドアをテーマにした新業態だそうですが、アウトドアをテーマに選んだのはなぜですか。

小廻:まず、垣根を越えた販売方法を行いたいという中で、お客様の趣味やライフスタイルにより密接に関わることができる店舗、キャンピングカー、カスタマイズしたスポーツ・SUV等のクルマで「お客様のための1台を創る」それらが融合した店舗づくりや新しい販売方法への挑戦したい気持ちがある中、その中のギアの1つとして「アウトドア」がありました。コロナ禍のタイミングを狙ったわけではないですが、ちょうどアウトドアが再注目されはじめたタイミングでしたね。

---:U-BASEを立ち上げたタイミングはいつごろですか?

小廻:2020年の1月頃から検討しはじめて、立ち上がったのは2020年の11月です。なので、ちょうどコロナ禍が厳しくなりつつある頃でした。

---:ちょうどコロナ禍が厳しかった時期ですね。

有力ブランドを巻き込んでコラボを実現

小廻:2020年11月に1号店のU-BASE湘南、2021年2月にアリオ橋本のU-BASEの湘南のアンテナショップ、2021年6月には2号店目のU-BASE西湘がオープンしました。

U-BASEは、多くの他業者の皆様とコラボをさせていただいています。
<1>バンライフ・キャンピングカーのパイオニアであるトイファクトリー様
<2>アウトドアギア専門てんである、オレンジ様、sotosotodays様
<3>車両カスタマイズのJAOS様、モデリスタ様、TOM’S様
そして、小田原ダイナシティ様、アリオ橋本様とのショッピングモールでのテナント展開等多くの他業者様とのコラボを実現させていただいております。

今回のU-BASEを展開したうえでの大きなポイントは、他業種さんとのコラボができたことです。U-BASEをスタートするにあたり、トイファクトリー様、Orange様、sotosotodays様に実際に足を運んで工場や店舗を見学させていただき、ご縁をいただいことが、今のU-BASEにあります。またビジネスパートナーとして信頼関係を築かさせていただいたことも大きな点です。

本当に皆さんのネームバリューもお借りしており、「ウエインズ」や「横浜トヨペット」だけではここまでの店舗展開はできておりません。また、MODELLISTAやJAOS、TOM’Sといったカスタマイズブランドとのコラボも含め、他業種とのコラボが非常に大事であると思っています。

---:Orangeはアウトドアの有名なショップですよね。

小廻:はい。Orangeさんは和歌山県に本社があり関西では特に有名で、関東エリアでは茨城県に出店、首都圏、神奈川では当社が初出店で、すでに沢山のリピーターがいらっしゃいます。様々なコラボの中でも、U-BASEの展開に大きな影響があります。

---:集客力のある展示ですね。コンテンツが充実していて、企画力が素晴らしいです。

小廻:担当役員はじめ担当者が、「あれやろう」「これもやりたい」という熱い思いがあり、楽しみながら実現することができました。新規のお客様はもちろん、従来であればディーラーには来ていただけないようなお客様にも多く来ていただいていますので、これは1つの新たなやり方だと感じています。

---:新しい顧客層のお客様が来られるのは素晴らしいですね。

小廻:そうですね。弊社グループ180店舗が全部がこのような店舗になってしまったら、それは面白味がないと思いますが、幾つかの店舗は、時代に即した・また時代の先を見た店舗が必要だと思っています。

---:有名なコラボ相手を次々に巻き込んでいく御社のパワーも感じます。

小廻:パワーというよりも、「新しい事への挑戦」に向けて熱い気持ちをもってお話をさせていただいたことと、タイミングや運が大きかったと思います。お陰様で短期間で様々なお話を進めていくことができました。。

5倍の集客力で新たな顧客層を獲得

---:実際の集客は、既存の販売店とは違う結果が出ているのでしょうか。

小廻:先程もお話しさせていただきましたが、通常のU-Car店舗の場合、ご来店客は1日あたり30名程度ですが、U-BASE湘南では平均100名、U-BASE西湘では平均200名を超えるお客様にご来店いただいています。さらに土日になると湘南で200名、西湘では多い時には300名と多くのお客様にご来店いただいていております。

---:商圏も広いのでしょうか?

小廻:はい。神奈川県に隣接します東京・千葉・埼玉・静岡などの県外からも来られます。また、U-BASE湘南では、地元のお客様も多く、自転車やバイクで来られのも特徴です。

---:クルマでないお客様も惹きつけるのはスゴイですね。

小廻:はい。U-BASE湘南の通りは、ディーラーの激戦区ですが、アウトドアやキャンピングカーに関するショップがあまりない事もあり、多くの地元のお客様が来てくださっているのではと思います。

---:Orangeやトイファクトリーのブランド力もありそうですね。

小廻:はい。相乗効果もあると思います。肝心のクルマの受注も沢山いただいております。通常のU-Car店舗では50-60代が中心なのですが、U-BASEでは、新規の若年・ファミリー層も多く30-40代のお客様の比率が他店より15%増の60-70%になっています。若い世代への取り組みができているということは価値があることだと思います。立ち上げて1年半となりますが、今のところ順調に展開させていただいております。

---:ロケーションが良いですね。今後はこのような店をもっと増やしていくのですか。

小廻:はい。先程も話させていただきましたが、県内に多くのこのような店舗は必要ありませんが、神奈川県のエリアの東西南北で4-5カ所、このような店舗展開を中長期で検討しております。

さらに新しいテーマにも挑戦

---:U-BASEの取り組みを始めて1年半ですが、御社内ではこの取り組みをどのように評価していますか。

小廻:U-BASEを立ち上げる時は、「キャンピングカーやアウトドアグッズの展開は?」という話もありましたが、社内的にも1つのブランドとしてU-BASEの事例は浸透してきております。U-BASEをきっかけに、また違う新しいジャンルの店舗も取り組みが始まっていますので、新たな展開に進んでいるのではないかと思っています。

---:新しいジャンルというのは、アウトドアではないジャンルということでしょうか?

小廻:本日の最後に宣伝も含め(笑)少しお話をさせていただきます。

---:テーマを絞ると新しいお客様にリーチできるという感覚を得たのでしょうか?

小廻:はい。今後の自動車業界、時代のニーズを踏まえ、特徴のある店舗をいくつか展開していく必要がある。逆に、そうしていかなければ今後、生き残れないかもしれないという危機感もあります。

---: U-BASEのビジネス面での貢献はいかがでしょうか?

小廻:新しい業態へのいい取り組み事例になっていると思っています。コラボ相手の各社様と繋がりができたということも、当社としては大きいと思いますし、アウトドアグッズやキャンピングカーの展開は他社でもありますが、キャンピングカー、アウトドアグッズ、カスタマイズカー、e-sports、イベント等の趣味とクルマを融合させた展開はこれまであまりなかったと思いますので、今後のビジネス展開の1つの試金石にもなっています。

---:U-BASEの売り上げはどのような構成になっているのでしょうか?

小廻:カスタマイズ、キャンピングカーなどの車両販売、カスタマイズ用品、メンテナンス等のサービス売上、アウトドア等のグッズ販売がありますが。比率としては、当然のことながら車両販売が大きな部分を占めています。

---:車両販売というのは、U-BASEに展示しているカスタマイズカーのことですか?

小廻:はい。キャンピングカー・SUV・アルファード・GR等の車両にアルミやエアロパーツなどでカスタマイズした、U-BASEオリジナルの車両販売のことです。

---:普段はあまり見られないような、気の利いたオリジナルの中古車がU-BASEに行くと見られるのですね。

小廻:お客様に対しては「お客様だけの1台」という言葉を大切にしています。U-BASEに来ていただくと、他にはない楽しいコンテンツが沢山ありますので、是非一度ご来店お待ちしております。

---:そしてその中古車を買うと、ガレージの納車ブースでセレモニーをしてもらえる、ということですね。

小廻:はい。U-BASE湘南でのアピールポイントでもあります。お客様にとって納車は最高にうれしい瞬間でもあり、クルマ乗りの夢でもあるガレージで納車をさせていただき、お客様にもよろこんでいただきたい思いからこの納車ブース(ガレージ)を作りました。お客様からも好評をいただいており、記念撮影もさせていただいています。インスタ映えもしていますよ。

---:オリジナルのU-Carも含めて、他にはないコンテンツがたくさんありますね。

小廻:はい。来ていただければ楽しめる場所です。また、コロナ禍でしばらく休んでいましたが、月に1回のペースでイベントやセミナーも開催・検討をしております。

---:イベントというのは、アウトドアに関連したものですか?

小廻:アウトドア勿論、沢山のコンテンツの企画・実施しています。アウトドア関係では、芸人のたけだバーベキューさんとのおいしいキャンプ飯レシピを紹介イベントやアウトドアでのおいしいコーヒの入れ方セミナー、お外パンなどを開催、また、e-sportsの定期大会、プロゴルファーによるゴルフ教室、U-BASEアンバサダーのプロサーファーとのサーフレッスン、TOM’Sさん契約のレースクイーンに来ていただくイベントなども実施しました。

---:展示もそうですが、イベントも企画力が素晴らしいですね。

小廻:普通にやっているだけではなかなか集客が増えませんので、違った角度でのイベントもどんどん企画していき、U-BASE、ウエインズグループを知っていただける機会を増やしていきたいと思っています。

---:このような経験を活かして、テーマ別に絞り込んだ形で、また新しい店舗にもチャレンジしていくということなのですね。

小廻:はい。ウエインズグループとしては、他の様々なジャンルでも、いろいろなコラボをしながら新たな挑戦をしていきたいと思っています。

最後に宣伝になりますが、新たな挑戦として7月23日には、ハイエースなどの商用車を中心とした専門店「ワークピット横浜」を、ららぽーと横浜に近い横浜市都筑区にオープンさせていただきます。

そして、先程ご紹介させていただきました8月5日にはU-BASE3店舗目となるU-BASE相模を相模原市の城山にオープンさせていただくなど、U-BASEもそうですがウエインズグループとして今後、地域特性にあった新しい要素も加味した事業展開・店舗展開をどんどん実行していきたいと思っております。

小廻氏が登壇する無料のオンラインセミナー自動車流通業界における新たなチャレンジ~Honda Cars 川越・横浜トヨペットの取組み~は7月26日(火)正午申込締切。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
  2. BEVを2年間所有した、“リアルな”ランニングコストを大公開
  3. 日産の新型セダン『N7』、発売50日で受注2万台を突破
  4. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
  5. VW『ゴルフGTI』50年の歴史で最強、325馬力の「EDITION 50」発表
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  2. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  3. コンチネンタル、EVモーター用の新センサー技術開発…精密な温度測定可能に
  4. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  5. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
ランキングをもっと見る