自動車に関するALSOKの取組み - 綜合警備保障 干場久仁雄氏[インタビュー]

自動車に関するALSOKの取組み - 綜合警備保障 干場久仁雄氏[インタビュー]
自動車に関するALSOKの取組み - 綜合警備保障 干場久仁雄氏[インタビュー]全 1 枚

自動車に関する安全安心への脅威は、あおり運転や高齢者ドライバーによる事故、大型車による通学路等での事故へと変化している。社会情勢や技術の進歩によって変化してきた自動車に関する警備業のサービスについて、綜合警備保障(ALSOK)商品サービス戦略部 次長 兼 HOME ALSOK事業部 担当次長の干場久仁雄氏に聞いた。

干場氏は、8月29日開催の無料のオンラインセミナー「クルマを売った後の儲け方~コネクテッドカーのマネタイズ~」に登壇しこのテーマで講演予定だ。

---:自動車に関する安全安心について、警備業はどのような関わりがあるのでしょうか。

干場:警備業が自動車に関わったきっかけは、自動車盗が増えた90年代の終わり頃で、ALSOKも2000年にカーセキュリティと連携した駆け付けサービスの提供を開始しました。

自動車盗は2003年がピークで、1年間で6万4千台が盗難被害に遭いました。今も人気のランドクルーザーやハイエースなどが多く盗まれています。その後、イモビライザー等の普及で盗難は減少し、2021年は当時の10分の1の年間5千台まで減少しています。車上狙いも2002年がピークで、年間57万件の被害がありましたが昨年は2千件となり、自動車盗よりも少なくなっています。

この間、日本全体における犯罪も減少しており、2003年をピークに現在は8割減少していますが、車に関してはそれ以上に減少しています。背景には自動車メーカーや警察、地域住民の努力があると思います。

一方、近年はドライバーの高齢化や女性ドライバーの増加を背景に、事故発生時の対応に警備業が関わるようになっています。車の性能が良くなり、事故発生件数は減っているのですが、その上で、ドライバーを含めた乗員の安全安心を確保するニーズが高まっています。

---:事故を起こしたときの警備、ということでしょうか。

干場: TVCMでお馴染みですが、2016年から「おとなの自動車保険」の契約者に対してALSOKが事故現場に駆けつけるサービスを提供しています。とても好評で自動車保険の1つの看板サービスになっていると思います。

---:これはどういうサービスですか。

干場:事故が発生した時にドライバーが保険会社に連絡すると「ALSOK隊員を向かわせましょうか」と聞いてくれます。ALSOK隊員は現場に急行して、事故を起こして動揺しているドライバーを支援し、三角板の設置などの安全確保や救急車の手配、現場の記録等を行います。

---:事故をしたら、通常は当事者同士で第一対応をするところを、ALSOK隊員が来て手伝ってくれるということですか。

干場:そうです。特に女性や高齢者は事故の相手方が男性だと怖いと感じる事もあるでしょうし、パニックになる場合もあるので、支援が求められています。このサービスは標準付帯なので、ご利用しやすい事も重要なポイントです。

---:保険会社に電話をしてから、ALSOKの警備員は何分ぐらいで来てくれるのですか。

干場:地域によって違いがありますが、30分程度で到着するとお伝えしています。ALSOKはホームセキュリティ等のサービスのために、全国で24時間365日、現場急行を行いますので、その体制を活用しています。なお、使用する車両は警察のような緊急車両ではありません。

現在、自動車関連ではこのサービスが拡大しており、セゾン自動車火災保険様、損保ジャパン様、日産自動車様やJA 共済様の保険に対して同様のサービスを提供しています。

---:自動車保険の標準的なサービスになるかもしれませんね。この事故時のサポートのサービス名は何というのですか。

干場:保険会社ごとに違いますが、セゾン自動車火災保険様では「ALSOK事故現場安心サポート」と呼んでいただいています。

---:セキュリティについてはいかがでしょうか。盗難台数はかなり減ったようですが、新しい犯罪手口もありますよね。

干場:そうですね。最近メディアでもよく取り上げられていますが、リレーアタックに続いてCANインベーダーという手口が広まっています。これは車自体の脆弱性を狙ったもので、CAN端子に装置を接続して、ロック解除し、エンジンを起動するものです。この手口で、レクサスLXやランドクルーザーが盗まれているそうです。

---:犯罪の手口も高度化していますね。

干場:そうなんです。しかも昔のように職人のような犯人が鍵を開けるのではなく、装置があれば作業そのものは簡単になっているのかもしれません。

自動車盗が減ってきたのは確かですが、実は去年と一昨年はほぼ同じ5,200台前後でした。車上狙いは引き続き減少しているので、自動車盗だけが下げ止まっており、もしかしたら増加傾向になる可能性もあります。

---:御社としてもそのような状況になれば、対応していくのですか。

干場:そうですね。市場が求めるサービスを探らなければいけません。盗む方はプロですから、車両に標準で付いているセキュリティ等は無効化されてしまいます。盗まれないようにするにはデバイスを後付けする必要があります。

つまりセキュリティ専用のシステムを設置しないと守れないという事です。これはホームセキュリティと同じで、普通の家にはついていないセキュリティシステムを設置するので、犯人は対策ができず、盗みに入りにくくなります。

---:新型のランドクルーザーにプレミア価格がついていて、狙われているというニュースもありますね。

干場: 海外で人気の車が盗まれるようですね。最近は車両を輸出するのではなく、すぐにバラバラにして、部品として売るようです。

---:犯罪チームもかなり高度化しているのですね。

干場:そうですね。組織犯罪のようです。

---:事故や盗難以外では、どのような傾向がありますか。

干場:ドライバーレスの自動車が登場してきており、一時の予想ほど早くはなさそうですが、最初に実用化すると言われているのが路線バスです。

路線バスは不特定多数が利用しますが、運転手がいない場合、車両内の治安維持が問題になります。具体的には痴漢や喧嘩、強盗などが起きる可能性もあります。

---:監視する人がいないのですね。

干場:そうです。警視庁は「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準(令和2年9月)で、「乗客を乗せて走行することを予定しているときには、遠隔監視・操作者が、映像により実験車両内の状況を常に把握することができ、必要に応じて実験車両内にいる者と通話することができるものであること(1 許可に係る審査の基準、(4) 実験車両等の構造等、イ 遠隔型自動運転システムの公道実証実験に関する事項、(エ) )としています。

ALSOKでは2020年12月に群馬大学等と連携して、路線バスの自動運転公道実証実験で遠隔管制業務を実施していますが、その際は遠隔監視に加えて車内トラブルや故障時に警備員が現場急行して初期対応を行う事も検討しています。

ドライバーレス車両の安全安心の確保は警備業が関わる領域の一つになりそうです。

干場氏が登壇する無料のオンラインセミナー「クルマを売った後の儲け方~コネクテッドカーのマネタイズ~」は8月29日開催。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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