【ヤマハ XSR900】若い人にもハマるかも?ジャーナリスト2人が語る「ヤマハ流ネオクラ」の真髄

アラフィフ狙い撃ちだが、意外と間口は広いかもしれない

おおらかな乗り味で、兄弟との差別化もきっちり

充実した装備でこの価格も好印象

ヤマハ XSR900について語る伊丹孝裕氏(右)と鈴木大五郎氏(左)
ヤマハ XSR900について語る伊丹孝裕氏(右)と鈴木大五郎氏(左)全 20 枚

ヤマハの新型スポーツネイキッド『XSR900』のリリースが6月から始まり、好調だ。その乗り味をよく知る伊丹孝裕氏と鈴木大五郎氏、ふたりのモーターサイクルジャーナリストが、改めてその印象を語りあった。

アラフィフ狙い撃ちだが、意外と間口は広いかもしれない

ヤマハ XSR900ヤマハ XSR900

伊丹孝裕(以下、伊丹):初代XSR900が登場したのが2016年のこと。『MT-09』をベースにした派生モデルという立ち位置は、今回の新型でも変わらないのだけど、印象はかなり違うよね。

鈴木大五郎(以下、大五郎):そうですね。どちらもいわゆるネオクラシックですが、初代のそれよりも時代が少し新しく、ネイキッドながら80年代後半のレーサーレプリカを想起させる造形やカラーリングが印象的です。

伊丹:僕が免許を取ったのが1987年、大五郎が1990年くらいだっけ?その意味で、XSR900が想定する世代にドンピシャでハマる。実際、プロモーションビデオやカタログには、クリスチャン・サロンと(80年代から90年代にかけて活躍したフランスのGPライダー)、その代名詞でもあるソノートカラー(ブルーメタリック)の車体が起用されていて、完全にアラフィフ世代が狙い撃ちされている。

ヤマハ XSR900と伊丹孝裕氏ヤマハ XSR900と伊丹孝裕氏

大五郎:でも、若い人達の間でも昭和が流行りだったりするじゃないですか。だから、意外とこのモデルの間口は広いのかもしれませんね。逆に当時を知っている僕ら世代の方が、少しでも感性に合わないと、否定してしまいがちなのに対して、平成世代の方が素直に受け入れてくれそうです。

伊丹:以前、開発メンバーにインタビューをさせてもらう機会があって、確かにその平均年齢は若かった。なのに当時の文化やレースシーンにすごく詳しくて、ヤマハで管理している昔のレーシングマシンに全員で触れたり、またがったりしたんだって。XSR900のディティールにはそういう実体験がちゃんと活かされていて、「流行りだから作ってみました」っていう軽さがないところがいい。

ヤマハ XSR900の開発メンバーヤマハ XSR900の開発メンバー

大五郎:他のメーカーや業界でもよく聞くのは、とにかく若い世代の言うことに耳を貸して、その感性を取り入れなきゃダメだってこと。いつまでも重鎮が幅をきかせていたり、単に昔を懐かしんでいては先がない。それを踏まえると、ヤマハはうまく過去を継承していますね。

おおらかな乗り味で、兄弟との差別化もきっちり

ヤマハ XSR900について語る伊丹孝裕氏(右)と鈴木大五郎氏(左)ヤマハ XSR900について語る伊丹孝裕氏(右)と鈴木大五郎氏(左)

伊丹:デザインだけじゃなく、乗った感じも80年代のいいところを上手く取り入れていると思う。そのひとつがシート高かな。

大五郎:確かに。あの頃のバイクは、レーサーレプリカとはいえ、ライディングポジションがそれほどきつくなく、今のスーパースポーツのように腰高じゃなかったですよね。その点、XSR900のシートはスリムで足つき性がいい。特に僕は身長が高くないので(165cm)、またがった時の安心感が好印象でした。

伊丹:ハンドリングも少し昔っぽいというか、バンク角に頼らなくてもスッを素直に向きが変わっていく。タイヤのグリップや荷重をことさら意識する必要がなく、クリスチャン・サロンじゃないけど、リーンウィズで軽やかにコーナーをクリアしていける。

ヤマハ XSR900ヤマハ XSR900

大五郎:車重は軽いんだけど、ハンドリング自体は機敏過ぎず、ちょうどいいところに落とし込んであります。自分で積極的にコントロールしていくというよりも、流して楽しめるキャラクターだと思います。

伊丹:言い方を変えると、サスペンションの奥を使おうとしたり、深くバンクさせても思ったよりは運動性は上がらない。MT-09よりもホイールベースが65mm長くなっていて、そのおおらかさが旋回力にそのまま表れているよね。もっともこれはネガティブな要素ではなくて、スタビリティを重視した開発陣の狙いがちゃんとハンドリングに活かされている。

大五郎:サスペンションは一般的なネイキッドと比較すると硬めですね。しっかりとストロークさせてギュッとコンパクトに旋回させるような乗り方ではなく、ストローク初期を使ってサラッと走らせるといい感じです。シャープさを求めるのなら、MT-09か、その上位グレードのMT-09 SPを選択すればよく、きちんと差別化されています。

ヤマハ XSR900ヤマハ XSR900

伊丹:キビキビとしたスポーツ性なら軽くてコンパクトなMT-09 SP、快適なツーリングを求めるなら大柄で安定性の高い『トレーサー9GT』がある。まったく同じエンジンで、上手くバリエーション展開していると思う。

大五郎:この3機種のエンジンって、マッピングもギヤ比も含めてまったく同じ仕様だそうです。なのに、それぞれ異なるフィーリングに感じられるのがおもしろいところ。車重やディメンション、ライディングポジションの違いがもたらす個性が明確で、XSR900はMT-09 SPとトレーサー9GTの間に位置するキャラクターに仕上がっています。

充実した装備でこの価格も好印象

ヤマハ XSR900ヤマハ XSR900

伊丹:ホンダからもうすぐ『ホーク11』が登場するでしょ。スペックにもハンドリングにもトゲトゲしいところがなく、でもカフェレーサー気分を味わえるという意味で、奇しくもXSR900と似たコンセプトを持っている。ユーザーの反応が楽しみだし、どちらも基本的に狙っている年齢層は高めとはいえ、20~30代にも受け入れられそうな気がする。

大五郎:幅広く支持されるには価格も重要ですが、XSR900は装備の割に抑えられているところが好印象です。6軸IMUが搭載され、D-MODE(ライディングモード)やトラクションコントロール、リフトコントロール、スライドコントロール、クイックシフター(アップだけでなくダウンにも対応)なども装備して121万円(消費税10%込)。コストパフォーマンスはかなり高いと言えますね。

ヤマハ XSR900ヤマハ XSR900

伊丹:4パターンあるD-MODE(ライディングモード)の変化は明確だし、クルーズコントロールも標準装備しているから快適性にも配慮されている。なにかヤマハにリクエストしたい部分はある?

大五郎:ブレーキの制動力とコントロール性は高いんですが、レバーの調整幅がもう少し広いとさらにいいかなと。一番手前にしても結構距離があったんですが、でもそのくらいでしょうか。あとはサスペンションを自分の好みに合うようにセッティングするくらいですね。

伊丹:おそらくカスタムパーツもいろいろと出てくるだろうから、長く楽しめる一台だと思うね。

ヤマハ XSR900と伊丹孝裕氏(右)と鈴木大五郎氏(左)ヤマハ XSR900と伊丹孝裕氏(右)と鈴木大五郎氏(左)

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト
AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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