【三菱ふそう eキャンター 新型】選択肢は28車種:初代以来5年の蓄積

新型eキャンター:ワールドプレミア
新型eキャンター:ワールドプレミア全 26 枚

量産EVトラックの草分けである三菱ふそうトラックバス(MFTBC)の『eキャンター』の次世代モデルが正式発表された。発売予定は2023年春。見た目の変化は大きくないが、架装の自由度も増した。独自開発のeアクスルなど中身の進化が大きい。

新型eキャンター:ニーズの多かった標準キャブでショートホイールベースモデル

■ボディサイズ・バッテリー容量で28車種展開

EVトラック5年の販売実績から、モデルチェンジの目玉はボディサイズ、バッテリー容量などが複数選べるようになったことだ。現行モデルはバッテリー容量、ボディサイズとも1パターンしかなかった。新型では、ホイールベースが2500mmから4750mmまで5種類まで選べるようになった。このサイズごとに総重量(GVW)、積載量が変わる。総重量区分では、5トンクラス、6トンクラス、7.5トンクラス(現行サイズ)、8トンクラスが選べる。キャブ幅は標準幅(1700mm)ワイド(1995mm)拡幅(2130mm)が用意される。

バッテリーは41kWh(S)、83kwh(M)、124kWh(L)の3種類が用意される。このうちSとMは6トンクラスまでの車両に搭載可能。Lは7.5トンクラス以上向けの」バッテリーとなる。現行モデルのバッテリーは6つのパック(合計82kWh)を左右と内側に配置していたが、新型では、41kWhのパックを3つ、SMLの容量によってひとつずつ増える。このパックは、バッテリーとBMSが一体化しており、パック全体はウォータージャケットによって温度管理が行われる。

搭載されるバッテリーはCATLからの供給を受ける。バッテリーの種類はLFP(リン酸鉄)だ。乗用車よりスペース制約が少ないトラックはLFPでも必要な容量は確保しやすく、コストダウンにもなる。

バッテリーサイズやホイールベース、キャブ幅の組み合わせは28種類あるそうだ。

後輪から見えるe-Axleの一部後輪から見えるe-Axleの一部

■eアクスルを独自開発した理由

バッテリーのバリエーションを広げるために、eアクスルは新開発となった。モーター、変速機、デフ、MCU(モーターコントロールユニット)とインバーターが一体化されている。モーターやインバーターなど主要ユニットは調達だが、eアクスルとしての設計は三菱ふそう内部で行っている。バッテリー搭載スペースをホイールベース内側に集中させたかったので、キャブ下のアクスル部分をリアにeアクスルとして移設した。これに伴いプロペラシャフトがなくり、制御やドライバビリティが格段に向上したという。シャフトやギアがなくなりバックラッシュや遊びが低減されトルクの出方がなめらかになり、バッテリーやモーター制御の精度も向上した。

三菱ふそうによれば、EVならではの制御により、冬の北海道でもリア駆動で問題ないことを確認しているという。4WD化のニーズがあれば、フロントにもう一基アクスルを増設することになる。eキャンターではすでに統合ECU型の次世代E/Eアーキテクチャが搭載されているので、2アクスルの協調制御に問題はないとする。

キャンターのバッテリーパック。41kWh。最大3個まで搭載できるキャンターのバッテリーパック。41kWh。最大3個まで搭載できる

■回生ブレーキ強化で電費も向上

回生ブレーキも機能強化された。現行モデルは回生ブレーキの利き具合は2段階しか変えられなかったが、新型は4段階をレバーで切り替える。排気ブレーキの容量で減速を制御できる。回生を最大効率で効かせると、ほぼワンペダルドライブが可能になり、市街地や渋滞でのストップアンドゴーが楽になる。ただ、トラックドライバーの多くは、クリープ状態を駆使してバースに寄せたりするので、アクセルオフでは完全停止はしていない。

航続距離は現行モデルが約100kmのところ、三菱ふそう内部での計測(JE05相当)の数値は、Lで200km、Mで140km、Sで80kmとなる。Sは現行モデルより航続距離が短くなるが、同社によればグローバルでの販売及び走行実績から、ラストマイルや都市部の輸送では問題はないとする。ユーザーにとってもその分導入コストが下がったほうがうれしいはずだ。

新型eキャンター:ワールドプレミア新型eキャンター:ワールドプレミア

■ダンプや塵芥車もOK…架装の幅を広げたe-PTO

トラックでは、架装用の動力としてトランスミッションのから駆動をとりだす、PTOという装置がある。新型eキャンターはバッテリーからの電力をとりだせるe-PTOが装備されている。これによりモーターやポンプなど架装の幅が広がった。保冷車、クレーン、ローダー、ダンプ、塵芥車(パッカー)など一般的な架装に対応する。保冷車や塵芥車などは、住宅地や商店街での走行が多くなる。現行タイプのボディサイズはこのニーズには少し大きいという声がユーザーや自治体から寄せられていた。新型の1700mm幅ショートボディは、これに応えるものだ。

ADAS機能では、助手席側の巻き込み警報とドライバー異常検知機能が追加される。現行モデルでは衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)や車線逸脱防止機能などディーゼル版と同等なADAS機能が搭載されていた。新型に追加された巻き込み防止機能やドライバー異常検知機能は大型のスーパーグレートにオプション設定がある機能だ。巻き込み防止は側方ミリ波レーダーが死角の自転車や歩行者を検知し、ブレーキ介入も行ってくれる。

EVは非常用電源や屋外電源としての機能も期待されている。新型は10kWのV2Hに対応している。10kWあればかなりの作業に使えるはずだ(乗用車のV2Lは1.5kWが標準)。新型eキャンターの電源ソリューションは、三菱ふそうが展開する「eモビリティソリューションズ」の中で、パートナー企業らの製品やシステムによって、事業者・用途ごとの要望に応える体制がある。

新型eキャンター:ワールドプレミア新型eキャンター:ワールドプレミア

■EVはハード(車両)を売るだけでは不十分

新型の主だった新機能は以上だが、もうひとつ大きく変わったものがある。eモビリティソリューションズは、単にEVトラックを提供するだけでは不十分と考え、事業者に導入コンサルや充電設備のサポート、車両メンテナンスのためのコネクテッド機能(Truckコネクト)、フリート管理のアプリやバックエンドシステム、リースなどのファイナンシャルサービス、バッテリーのリサイクルといった、業務用EVにまつわる周辺環境のサポート体制を充実させた。カーボンニュートラルで荷主がゼロエミッションやLCAの要求がきているが、どう対応すればいいのかわからない、といった場合に三菱ふそうおよびパートナーのソリューションを相談できる。

販売形式はリースが基本となるが、新型からは要望のあった買い切りのオプションも用意する。

新型eキャンターは、車両の進化もさることながら、輸送やカーボンニュートラルにまつわる課題解決のソリューションと一体化している。EVトラックの議論では、充電設備や航続距離ばかり取り上げられるが、生産財である商用車にはじつはあまり大きな問題ではない。充電は拠点ごとに6kWの普通充電器があれば、拠点間輸送、ラストマイル輸送には対応できる。それよりも、必要な設備、補助金、メンテナンスサポート、効率化や安全性の確保といった周辺体制が重要だ。

ソリューションとしてのEVトラックという視点およびメーカー支援がない状態では、電動化メリットが生かせない。荷主や親会社がいうからでEVを導入すると、カーボンニュートラル対応も不完全なものとなる。商用車こそメーカーは、トラックという輸送機械を売るだけのビジネスから、ソリューションプロバイダとしての機能拡張が求められている。

新型eキャンターは、トラックメーカーがソリューションプロバイダーとしての変革を担う存在でもある。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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