【トヨタ シエンタ 新型試乗】「ガソリン×2列5人乗り」仕様のメリットとは…中村孝仁

「走る、曲がる、止まる」は大きな意味を持たない

「2列5人乗り」ならではのメリットはあるか

300万円を切るお買い得仕様

トヨタ シエンタ 新型(ガソリン Z 2WD 5人乗り)
トヨタ シエンタ 新型(ガソリン Z 2WD 5人乗り)全 24 枚

「走る、曲がる、止まる」は大きな意味を持たない

7人乗り3列シートを備えたコンパクトなミニバン。初代から継続されるトヨタ『シエンタ』の基本コンセプトである。

そんなモデルの購買層を想像するに、普通は子育て中のファミリー層が中心と考えるのは当然で、そうしたターゲット層に向けたクルマ作りがなされていると考えていたのだが、驚いたことに最近はいわゆるエンプティネスターと言われる子育て終了組の少し歳の行った夫婦などが購買層の4割を占めるという。だから今回のシエンタは顧客層のライフステージに寄り添うという基本テーマのクルマ作りがなされている。

トヨタ シエンタ 新型(ガソリン Z 2WD 5人乗り)トヨタ シエンタ 新型(ガソリン Z 2WD 5人乗り)

まあ考えてみたら「子育て中のファミリー層が中心」という考えはこちらの勝手な思い込みで、如何にこうしたクルマの購買層を拡大するかもメーカーの腕の見せ所。今回はどうもペットがテーマになっているようで、犬との暮らしを想定したであろうアイテムやオプション用品などが並べられていたし、実際子育て終了組がペットを連れてどこかへ出かけるという想定もなされたクルマ作りもされている。

こうなると、自動車本来が持っている基本性能、即ち走る、曲がる、止まるという3要素は、正直基本さえしっかりしていればあまり大きな意味を持たず、如何に使い勝手が良いクルマに仕上がっているかが、使う側の基本テーマというかチョイスする際の中心事項になる。ネット販売などもその数を増やしているという話を耳にするが、最近はクルマに試乗せずに車を購入する層もいて、クルマ選びの質そのものが変わっている印象を強く受ける。

だからと言ってその部分を外すことはできないので、自動車としてのシエンタという切り口でお話をしよう。

「2列5人乗り」ならではのメリットはあるか

トヨタ シエンタ 新型(ガソリン Z 2WD 5人乗り)トヨタ シエンタ 新型(ガソリン Z 2WD 5人乗り)

今回の試乗車は2列5人乗りのガソリンモデルである。2列目シート下にダイブダウンする3列目シートがないので、2列目をたたむと室内にはフラットで広大なラゲッジスペースが出現するのが2列シート仕様の大きな特徴である。テールゲートを開けたすぐ手前の床面を開けるとかなり深い床下収納が顔を出す。ハイブリッド車の場合ここにバッテリーが収納されているので、収納は限られてしまうが、2列仕様はここが有効に使えるというわけだ。

その2列目のシートが今回は見直されて、より快適な空間として仕上げたとあるが、5座仕様の場合はこの快適空間を誰が享受できるのかは少々わかりづらかった。

エンジンは1.5リットル3気筒のダイナミックフォースと名付けられたもの。ただし、ハイブリッドとは仕様が異なっていて、ガソリン仕様は直噴。ハイブリッドはポート噴射という違いがある。ハイブリッドと違ってエンジンの独り舞台なわけだが、まあ加速をした場合は比較的顕著な3気筒のビートが室内に侵入する。

トヨタ シエンタ 新型(ガソリン Z 2WD 5人乗り)トヨタ シエンタ 新型(ガソリン Z 2WD 5人乗り)

加速感はこれも可もなく不可もなくと言ったところで、特段の力強さは感じられないが、いわゆるファミリーカーという範疇のクルマとしてはこれで十分であろう。今回の試乗は2人乗車で行ったが、果たしてフル乗車になるとこれで気持ち良い加速感が得られるかどうかは少々心許ない。

3代目はTNGAのプラットフォームに変わり、より高い剛性が確保されているという話だったが、ガソリン仕様に乗る限りガッチリとした剛性感が感じられるかというと残念ながらこれまでのTNGAと違って少々期待外れ。特にリア周りから進入する微妙な微振動は少し気になるところではあった。やはり『ヤリス』や『アクア』と違って大きな開閉部が存在することがこうした印象を持たせていると言えよう。

300万円を切るお買い得仕様

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今回の試乗車「Z 2WD(5人乗り)」は39万7650円分のオプションが載って車両価格291万7650円。オプションの中にはドラレコ(前後方向)やETC2.0も含まれているので、これ以上装備するものとしては個人の趣向に関するものだけといった印象。それで300万円を切っているのだから、移動空間としてのお買い得感は高いと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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