航続500kmの電気大型トラックを発表、ダイムラートラックの電動戦略拡大の道とは…IAAトランスポーテーション2022

メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)
メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)全 38 枚

ドイツ・ハノーバーで19日に開幕する商用車の見本市「IAAトランスポーテーション2022」に先駆け、ダイムラートラックは18日夜に電動車両のポートフォリオ拡大について発表。その中で、ベルセデスベンツブランドから、長距離輸送向けの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』を目玉として世界初公開し、市場投入することを発表した。

全方位で輸送におけるCO2ニュートラルを掲げるダイムラートラック

ダイムラートラックの主要ラインアップ(IAAトランスポーテーション2022)ダイムラートラックの主要ラインアップ(IAAトランスポーテーション2022)

ダイムラートラックは、CO2ニュートラルな輸送の実現を掲げている。2030年までにすべてのセグメントでCO2ニュートラルモデルを提供することを目標としており、4年前の2018年に開催されたIAAから現在までですでに8台の量産型電動車両を市場投入している。

今回のIAAに向けてダイムラートラックは、メルセデスベンツから航続距離500kmを実現する電気大型トラック「eアクトロス ロングホール(eActros LongHaul)」、電気中型トラック『eアテゴ(eAtego)』、三菱ふそうブランドからは日本でもすでに公開された次世代『eキャンター(eCanter)』の欧州仕様など、あらゆるカテゴリーの電動車を発表。全方位で輸送におけるCO2削減に向けた取り組みを強化していく構えだ。ダイムラートラックは、走行時のCO2ニュートラル商用車の販売を、EU30か国で2030年までに最大で60%とすることを掲げている。

さらにバス事業部門のダイムラーバスも、2030年までに全セグメントでCO2ニュートラルモデルを提供することを掲げている。今回のIAAに向けては、従来型のパワートレインを搭載した次世代観光バス『セトラ・トップクラス(Setra TopClass)』、『コンフォートクラス(ComfortClass)』を世界初公開。さらに、2025年には初の都市間輸送向け電気バスを、2020年代後半には初の電気大型観光バスを発表することを明らかにした。

メルセデストラックの『eアクトロス』と『GenH2』(IAAトランスポーテーション2022)メルセデストラックの『eアクトロス』と『GenH2』(IAAトランスポーテーション2022)

ダイムラートラックは、2039年までに欧州、日本、北米の主要3市場で、全ての新型車両を走行時にCO2ニュートラル化する目標とし、最終的には2050年までに公道でのCO2ニュートラルな輸送を実現することを掲げている。また「デュアルアプローチ」として、BEV(バッテリー式電気自動車)だけでなく水素を燃料するFCV(燃料電池車)の開発、量産化も積極的におこなう。

現在メルセデスブランドでは、試作FCV『GenH2』の公道試験もおこなっており、航続距離1000km以上をめざし開発が続けられているという。FCVは特に長距離における重量物輸送において期待されており、2020年代後半には、量産FCVの登場が予定されているという。

ダイムラートラックのマーティン・ダウム代表(IAAトランスポーテーション2022)ダイムラートラックのマーティン・ダウム代表(IAAトランスポーテーション2022)

ダイムラートラックのマーティン・ダウム代表は「4年前のIAA以来、私たちはCO2ニュートラル輸送へのシフトを全力で進めてきました。今年、私たちはすでに8台の量産型電気車両を展開しています。しかし、適切な車両を提供するだけでは十分ではありません。お客様には、適切なインフラも必要となります。それを踏まえて、私たちはさまざまなレベルで積極的に動いています。迅速に環境を整えるためには、業界全体と政府が協力することが不可欠なのです」と語っている。

日本ではメルセデスベンツブランドのトラックは正式導入されていないが、同グループの三菱ふそうは「eキャンター」を日本展開している。これらのパワートレインや技術はグループ内での共有化が可能で、今後三菱ふそうにも導入される可能性は大いにある、と同社関係者は明かした。

三菱ふそう『eキャンター』(IAAトランスポーテーション2022)三菱ふそう『eキャンター』(IAAトランスポーテーション2022)

航続距離500km、電気大型トラックの「eアクトロス ロングホール」

今回のIAAに向けた発表の中でも目玉となったのが、前述した電気大型トラックの「eアクトロス ロングホール」だ。「eアクトロス」シリーズとしては、これまでも航続距離300kmの「eアクトロス300」、同400kmの「eアクトロス400」を展開してきたが、「ロングホール」では同500kmを実現、これまで長距離輸送はBEVに向かないとされてきた既成概念を覆すモデルとなる。

“LongHaul”は長距離輸送を意味する言葉で、600kWh以上のバッテリー容量をもつ3つのバッテリーパックを備え、2つの電気モーターは最高出力600kW以上、連続出力400kWを実現する。バッテリーには長寿命でより多くのエネルギーを使用できるというリン酸鉄リチウムイオン電池を採用する。約1メガワットの出力を持つ充電設備で、30分以内に20%から80%まで充電することが可能。また、従来の大型長距離輸送トラック『アクトロス』と同等の耐久性要件を満たすように設計されており、10年間で120万kmを走行できるものになるという。

メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)

長距離輸送の電気トラックにおけるコンセプトの中核は、車両の技術だけでなく、「コンサルティング、充電インフラ、サービスからなる総合的なソリューションの提供であり、eアクトロス ロングホールは収益性、持続可能性、信頼性の面でユーザーにとっての正しい選択になるよう計画されている」とダイムラートラックは説明する。

最初の試作車両はすでに試験がおこなわれており、2022年内に公道での試験をおこなう予定。2023年には実際に顧客のもとで、量産型に近い試験車両での実用供試をおこなうとしている。

《宮崎壮人》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. マツダ、電動セダン『EZ-6』世界初公開、24年発売へ SUVコンセプトも…北京モーターショー2024
  2. 【ホンダ ヴェゼル 改良新型】開発責任者に聞いた、改良に求められた「バリュー」と「世界観」とは
  3. トヨタが新型BEVの『bZ3C』と『bZ3X』を世界初公開…北京モーターショー2024
  4. 見逃せない! ホイールのブレーキダスト除去術 ~Weeklyメンテナンス~
  5. Sズキが電動マッサージ器を「魔改造」、25mドラッグレースに挑戦!!
  6. <新連載>[低予算サウンドアップ術]“超基本機能”を駆使して「低音増強」を図る!
  7. 郵便局の集配車が「赤く蘇る」、KeePerが8000台を施工
  8. ホンダ『ヴェゼル』マイナーチェンジで3グレードに集約、納期改善へ…「HuNT」「PLaY」新設定で個性強調
  9. タイヤブランドGTラジアルよりオールシーズンタイヤ「4シーズンズ」発売
  10. 中国製部品の急成長で2025年以降日本製の車載半導体は使われなくなる…名古屋大学 山本真義 教授[インタビュー]
ランキングをもっと見る