【スズキ バーグマン400 ABS 試乗】スズキの400ccクラスを一手に担うラグジュアリースクーター…伊丹孝裕

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スズキ バーグマン400 ABS
スズキ バーグマン400 ABS全 52 枚

ストレスや不安を感じない足つき性の良さ

全長2235mm、ホイールベース1580mm、装備重量218kg。スズキ「バーグマン400 ABS」(以下、バーグマン)のこれらの数値が、一体どれくらいものかと言えば、同社のアドベンチャー「Vストローム650XT ABS」とほぼ同等だ。

その佇まいはスクーターというよりもセダンを思わせる重厚感があり、ヒョイとまたがって、スルスルッと走り出せるような身軽さは感じさせない。

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というのは、見かけの話であって、シートに身体を預けると印象は一変する。この手のモデルは、意外なほど足つき性に難ありなのだが、バーグマンは両足のかかとが余裕で接地(筆者の身長は174cm)。フロアボードが大きくくびれていることも手伝って、足の出し入れはスムーズそのものだ。またがった状態での車体の押し引きや方向転換も容易に行える。既述のVストローム650XTを引き合いに出すと、シート高に関しては80mmも低く、ストレスや不安感はまったくない。

スピードや走破性に特化した生粋のスポーツモデルは別にして、足つきの良し悪しは大事な要素だ。日常的なライディングが苦にならず、ことバーグマンに関しては、その低重心がハンドリングの良さと高い安定性に貢献。スポーツツアラーとしてのポテンシャルも体感することができた。

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トラクションコントロールも搭載され、ビジネスでも違和感のないスマートなデザイン

現行のバーグマンは2021年6月に発売され、その時に大小さまざまな改良が施されている。エンジンは新しいインジェクターの他、デュアルスパーク化(2本のプラグを装着)などによって、燃焼効率の向上と排出ガスの低減を実現。電子デバイスの充実も図られ、トラクションコントロールの新採用がトピックになった。

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デザインは奇をてらったところがない、クリーンなものだ。スズキらしいブルーに彩られたホイールに、シンプルな外装色が組み合わせられ(試乗車両はマットソードシルバーメタリック)、どこにあっても悪目立ちしない。3種の表皮が使い分けられたダブルステッチ入りシート、位置調整が可能なバックレスト、開閉ダンパー付きトランクスペース、大容量フロントボックス(右側:3.5L/左側:2.8L)、12VのDCソケット……と充実の装備を誇り、質感も高い。バイク然とした使い方もさることながら、ビジネスなどのアーバンユースでもスマートなツールになってくれるはずだ。

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スターターには、他のモデルでも実績のあるスズキイージースタートシステムを採用しているため、セルボタンのワンプッシュで、エンジン始動まで自動的にクランキングを続けてくれる。セルボタンはトラクションコントロールの操作ボタンも兼ね、これを長押しすることによってONとOFFを切り替えることができる。

399ccの水冷DOHC単気筒ユニットは、21kW(29PS)/6300rpmの最高出力と35N・m(3.6kgf・m)/4900rpmの最大トルクを発揮し、アイドリング+αの領域では心地いい鼓動感を、高回転域に至ると伸びやかな爽快感を堪能することができる。

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とりわけ好印象なのが、3000rpm~5000rpmの中回転域だ。発進加速や一般道での法定速度内では多用することになるのだが、この領域でのピックアップが抜群にいい。スロットル開度に応じて、パワーとトルクがリニアに追従し、その時の加速フィーリングは穏やか過ぎず、物足りなさ過ぎず。速度を意のままにコントロールすることができる。このあたりの躾は、日本の道路環境下での徹底した作り込みを感じさせるポイントだ。

スクーターでもコーナリングの醍醐味に身を浸すことができるライディングポジション

作り込みと言えば、スズキのモデルは例外なくライディングポジションがいい。単に安楽という意味ではなく、全身の力がほどよく分散され、入力しやすいことが特徴になっている。バーグマンのようなスクータースタイルでもそれは踏襲され、腰をホールドしてくれるバックレストのおかげで下半身がしっかりと安定する。スクーターを好ましく思わないライダーの言い分として、ニーグリップできないことへの不安を口にするライダーは多いが、それが気にならない。臀部や足を介して荷重を加えたり、抜いたりする操作を正しく車体へ伝達してくれる。

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では、その結果もたらされるハンドリングはどうだろう。ひと言で表すのなら、コーナーを楽しめる仕上がりになっている。無論、旋回スピードを追求するものではないが、必要ならばかなり深いバンク角まで対応。そこに至る時の手応えが一定のため、特に小難しい操作を与えることなく、コーナリングの醍醐味に身を浸すことができる。

前後17インチ以上の一般的なスポーツバイクの場合、必然的にシート高も高い位置にあるため、車体をリーンさせる時は不安を覚えやすい。直立時とバンク時の落差があるからだが、バーグマンはフロントに15インチ、リアに13インチのホイールを採用。純正タイヤ(ダンロップ・Scoot Smart)の特性としても、丸みのあるきれいなプロファイルを持っているため(スポーツ性重視のタイヤは尖っていく傾向にある)、浅いバンク角でもごくナチュラルに旋回していく。

街乗り、高速巡行、ロングツーリングまでこなすオールラウンダー

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反面、ホイール径が小さいということは、路面のギャップや継ぎ目などの影響を受けやすくなりがちながら、スズキのラインナップ中、最長となる1580mmのホイールベースがそれをフォロー。アベレージスピードが高くなるステージでは、グランドツアラーさながらのスタビリティで淡々と距離を重ねていくことができる。

走りの上質さが感じられるのが、コーナーから立ち上がる時の振る舞いだ。エンジンのスムーズな過渡特性に任せてスロットルを開けると、荷重がフロントからリアへきれいに移り変わり、リアサスペンションの踏ん張り感が明確に向上。いわゆるトラクションが掛かる様が分かりやすく、右手とリアタイヤが直結したような感覚を楽しむことができる。

その意味で、バーグマンは一線級のスポーツモデルであり、実用ありきのスクーターではない。街乗りから高速巡行まで、あるいは日常の足からビジネス、果てはロングツーリングまで対応するオールラウンダーとして、その役割を果たしてくれるはずだ。スズキの400ccクラスを一手に担う存在であり、その懐の深さにはそれだけの価値がある。

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■5つ星評価
スズキ バーグマン400 ABS
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★★
オススメ度:★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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