半導体不足のなぜ?いつまで? 大手メーカーが語る原因と対策、キーワードは「時間軸と生産計画」

世界的な半導体不足の原因とは。大手半導体メーカー、インフィニオンの担当者に話を聞いた。(写真はインフィニオンの製品イメージ)
世界的な半導体不足の原因とは。大手半導体メーカー、インフィニオンの担当者に話を聞いた。(写真はインフィニオンの製品イメージ)全 1 枚

コロナ同様になかなか収束しない半導体不足。この問題を半導体メーカーはどのようにとらえているのか、どんな対策をとっているのか。現状と今後の見通しについて半導体メーカーの専門家へのヒアリングをベースに考えてみたい。

生産計画から異なる自動車と半導体

半導体不足は2020年のコロナパンデミックが引き金となって起きた。その後、2021年ごろには回復基調がみられたものの、供給の乱れとそれに連動する製造サプライチェーンの混乱が続いている。直接の原因は、2020年世界的なロックダウンで多くの経済活動が縮退したことにある。自動車業界も工場の停止や生産調整を余儀なくされた。その影響はサプライチェーンにも波及し、半導体メーカーもオートモーティブ分野の需要が落ち込んだ。

自動車はもちろんあらゆる製品に欠かせないともいえる半導体。最先端技術のシンボル的な存在であるが、じつは、そのビジネスサイクル、製造工程と自動車製造チェーンとの相性はよくない。

大手半導体メーカーであるインフィニオン テクノロジーズのオートモーティブ事業部 OEM Business Development & System Competence部長、杵築弘隆(きづき・ひろたか)氏は語る。

「半導体の製造は、IGBTやSiC-MOSFETのようなディスクリート半導体で14週くらいの期間が必要です。マイクロプロセッサなど微細なものになると24~40週かかります。また、受注に応えるために製造ラインを増強するのも簡単ではありません。ラインを増やすだけもで12か月から18か月かかります。クリーンルームなどから作る必要があると、最低でも24か月、つまり2年かかります。戦略の意思決定は常に2年先の市場・需要を見据える必要があります。半導体製造は、自動車製造のタイムラインとは時間軸のスケールが異なります。別の生き物と思っていただくのが正しいかと思います」

半導体不足の経緯のおさらい

自動車業界と半導体業界のタイムスパンの違いを考慮すれば、2020年に始まった半導体不足といまだに変動する需給バランスの説明が可能だ。トリガーは、いうまでもなくコロナパンデミック。ロックダウン等で自動車の需要・生産が減少したため、OEMからサプライヤーへの発注が減り生産調整も始まった。コンポーネントごとにECUやセンサーが搭載される現在、半導体業界もキャンセルや減産の憂き目にあう。

半導体には機能や集積度(微細度)などによっていくつかの種類が存在する。見た目は同じでも、マイクロプロセッサを作るラインでパワー半導体を作ることはできない。メモリやMEMS(センサー)も同様だ。杵築氏が指摘するように、車載半導体の需要が減ったからといって、安易にラインの作り替えはできない。ラインの変更や増設を決定したとしても稼働を始めるのが2年後となると、決断は簡単ではない。


《中尾真二》

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