水素社会の実現に向けて技術開発と連携を加速…日本エア・リキード合同会社

日本初となる年中無休の水素ステーションの建設を決定

将来的な大型トラックの需要を見据え、急速充填技術を開発中

水素ステーションの社会基盤整備に向けて、トヨタ自動車と連携した取り組みも

あらゆるモビリティでの水素活用に向けて、各企業、行政と連携

日本エア・リキード合同会社 専務執行役員 水素エネルギー事業本部 本部長 植野 敬弘氏
日本エア・リキード合同会社 専務執行役員 水素エネルギー事業本部 本部長 植野 敬弘氏全 7 枚

産業ガスの大手メーカーである日本エア・リキードは、酸素や窒素、そして水素の製造と販売において国内有数の企業だ。同社は、空気を液化する技術を基に1902年にフランスで設立された。主に医療分野や溶接、溶断などで使用する産業用ガスの製造と販売を軸とした事業を開始し、設立からわずか5年で日本へ進出するなど、早い段階から日本での取り組みを進めてきた。

そんな同社は今、日本初となる24時間、365日の営業を可能とする水素ステーションの開設に取り組んでいる。現在国内で展開している国内における水素ステーションや今後の水素活用の動向について、専務執行役員水素エネルギー事業本部の植野敬弘本部長に話を聞いた。

日本初となる年中無休の水素ステーションの建設を決定

本宮インターチェンジ水素ステーションのパース図

植野敬弘氏(以下、敬称略):我々の本業は水素を製造して販売することです。しかし、水素ステーションの整備にはまだまだ時間がかかり、これを待っているだけではなかなか先へ進むことができません。そのため、本業から一歩踏み込む形で水素ステーションの設置と運用を手掛けています。現在、国内に17か所の水素ステーションがあり全て弊社で運営しています。今も建設を進めているものがあり、さらに、来年には2か所の水素ステーションを開設する予定で、2024年に福島本宮市に開設するステーションで20軒目となります。

---:福島県本宮市に開設予定の水素ステーションには、どのような特徴がありますか?

植野:24時間、365日、年中無休で営業することです。これまで日本になかった形態です。お客様の利便性を高めるのが目的です。本宮市は東北の物流の玄関口にあたり、国道4号線沿いに物流向けの軽油スタンドが多く営業しています。弊社では、伊藤忠商事グループと水素バリューチェーン構築の覚書を交わしており、今回は、伊藤忠エネクスの子会社であるエネクスフリートが運営する軽油スタンドに、併設する形で水素ステーションを設置します。

本施設の特徴は二つあります。一つは、大型トラックなどを視野に入れながら乗用車向けとは異なる物流での充填量を確保すること。二つ目は、トラックドライバーが求める施設が整っていることです。例えば、既存のステーションには大型トラックの洗車に必要な敷地や設備が必ずしも設けられていない例があり、水素充填だけではなく洗車もできることで顧客満足度を高める必要があります。これにより、既存の軽油ステーションと併設することの利点が生まれます。

また、当面は運送会社も全てのトラックを燃料電池(FCV)トラックなどへ転換することはできませんので、既存のディーゼルトラックと併用しながら切り替えを行っていくこととなります。そのため、軽油スタンドと水素ステーションが併設されることで、同じ施設でFCトラックへの円滑な切り替えを行うことができます。

◆将来的な大型トラックの需要を見据え、急速充填技術を開発中

---:水素ステーションを24時間、365日営業するとなると、トラックへの水素ガス充填には容量などの問題があるかと思いますが、こちらはどのような取り組みが必要でしょうか。


《御堀直嗣》

御堀直嗣

御堀直嗣|フリーランス・ライター 玉川大学工学部卒業。1988~89年FL500参戦。90~91年FJ1600参戦(優勝1回)。94年からフリーランスライターとなる。著書は、『知らなきゃヤバイ!電気自動車は市場をつくれるか』『ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本』『電気自動車は日本を救う』『クルマはなぜ走るのか』『電気自動車が加速する!』『クルマ創りの挑戦者たち』『メルセデスの魂』『未来カー・新型プリウス』『高性能タイヤ理論』『図解エコフレンドリーカー』『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』『ホンダトップトークス』『快走・電気自動車レーシング』『タイヤの科学』『ホンダF1エンジン・究極を目指して』『ポルシェへの頂上作戦・高性能タイヤ開発ストーリー』など20冊。

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