車高調には一般的に直巻きと呼ばれるスプリングが組み合わされる。これは長さ、内径、バネレートなどがある程度同じ規格で作られたもので、同じスペックでさまざまなメーカーからラインアップされている。
このスプリングはメーカーを変えることで乗り心地やハンドリングが変わる。バネレートはもちろん、同じレートでも全長の異なるモデルにすることで変わる。セッティングを大きく変えることができるのはスプリングなのだ。
◆バネレートの基礎と挙動
スプリングはクルマを支えているパーツ。車高調ではそのバネレートが表記されていて10kg/mmとか8kg/mmとか書いてある。これはバネが何kgの重さで1mm沈むかという数値。バネレートが高いと同じ車重でも少ししか沈まなくなる。ブレーキを踏んだりアクセルを踏んだ時、コーナリング時のサスペンションの沈む量が少なくなる。
このバネレートを変えて、数値を大きくしていくと沈み込む量が少なくなり「サスペンションが硬くなった」と感じる人が多い。硬くなるというよりは沈み込む量が減っている。このバネレートを変えればフィーリングも乗り心地も変わるのは当然だが、バネの全長や銘柄でも乗り味は変わる。
◆全長で変わる固有振動数と乗り味
全長で変わるのはその固有振動数。長いスプリングほど沈んでから伸びて元の長さに戻るまでがゆったりと時間がかかる。短いとすぐにスプリングは伸びてくる。この沈んでからの反発のスピードが変わる。乗り心地をよく、ゆったりと走りたいなら長いスプリングが合う。キビキビと走りたいなら短いスプリングが合っている。
そういった特性の違いがあるので、乗り心地をよくするならとくに影響の大きいリアサスペンションのスプリングを長いものに交換するのもひとつの手段。もっとスポーツ走行でキビキビとクルマを動かしたいならフロントサスのスプリングを短いものにするといった手もある。
ただ、スプリングが短くなると沈み込めるストローク量の許容限界が少なくなってしまうので、物理的に取り付けられないこともある。そんなところに着目したのがハルスプリング。このメーカーでは同じ長さやレートでも、素早く反発するスプリングとゆっくり反発するスプリングがラインアップされている。
◆エンド形状の違いと使い分け
こういった特性の違いはスプリングメーカーによっても異なる。見た目にわかりやすいのは、スプリングの巻き終わりの部分が開いているものと閉じているものがある。
開いているオープンエンドと言われるものは、沈み始めが柔らかくなり、乗り心地が良くなりやすいと言われる。クローズドエンドと呼ばれる両端が閉じて鋼材同士が接触しているものは、沈み始めから大きく沈むまで、同じバネレートでリニアにストロークしていくと言われる。
これはどちらが良いわけではなく、その特性の違いなので、どう扱うかはセッティング次第なのだ。レーシングカーではクローズドエンドの特性が好まれる傾向にあるが、高めのスプリングレートでオープンエンドのものを使い、動き始めにソフトさを持たせることもある。
ダウンサスや純正サスペンションに使われる樽型スプリングは、ストロークの最初と奥の方で大きくレートが異なる。沈み始めは柔らかく、奥に行くほどレートが上がる特性で、乗り心地が良くなりやすい。対する直巻きスプリングは最初から奥までほぼ同じレートで沈み込んでいく。これも使い方次第なのだ。
車高調であれば直巻きスプリングが使われていることが多く、ほかのメーカーのものも使うことができる。レートはそのままでも銘柄や長さを変えることで、好みのハンドリングに調整できる。そういった楽しみ方ができるのも車高調の魅力のひとつである。