「これが本当に2Lの4気筒なのか」マセラティのハイブリッドがこだわった“数秒のレスポンス”に痺れる

エポックメイキングなマセラティ『レヴァンテ』と『ギブリ』

「eブースター」でこだわった数秒のレスポンス

「これが本当に2リットルの4気筒なのか」と驚く

マセラティは官能的なサウンドやデザインだけではない

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マセラティ レヴァンテ GTハイブリッド
マセラティ レヴァンテ GTハイブリッド全 23 枚

エポックメイキングなマセラティ『レヴァンテ』と『ギブリ』

マセラティの『レヴァンテ』と『ギブリ』は、1914年の創業以来、連綿と続くマセラティの歩みの中で、“エポックメイキング”という言葉を共有する2台と言えるかもしれない。

「地中海を吹き抜ける東風」を意味するレヴァンテは、マセラティ史上初めてのSUVとして2016年に誕生した。クーペやセダン、スポーツカーの開発と製造を生業としてきたマセラティにとってはまさしく新たな挑戦であったいっぽうで、当初は「マセラティまでもがSUV市場に参入するのか」といった懐疑的な見方があったのも事実である。しかし実車がワールドプレミアされ、試乗記が世界に発信されると、もはや懐疑的な見方は跡形もなく払拭された。

「サハラ砂漠に吹く熱風」を意味するギブリは、ジウジアーロによるデザインを身にまとい、1966年に登場した2ドアクーペ(1969年にはオープンモデルのスパイダーも誕生)から始まる。ロングノーズ/ショートデッキで構成される端麗なスタイリングで、瞬く間に当時のマセラティを象徴する存在となった。1992年に復活した2代目も、ガンディーニが関わったとされる2ドアクーペのボディを継承した。

マセラティ ギブリ GTハイブリッドマセラティ ギブリ GTハイブリッド

ところがご存知のように、現行のギブリは4ドアセダンである。マセラティの4ドアセダンといえば『クアトロポルテ』という不動の地位を確立したモデルがあるだけに、当初は「なぜ4ドアセダンなのか」と困惑の声も聞かれたが、実際にはフレームレスのサイドウインドウを採用した“4ドアクーペ”の流麗なスタイリングと、4ドアとは思えないスポーティな走りを備えており、いまではギブリが4ドアであることに疑問を呈するような声はほとんどなくなった。

マセラティ初のSUVのレヴァンテと、ボディ形状を変えたギブリは、それだけでもマセラティの歴史的転換として名を刻むモデルだけれども、パワートレインにもマセラティの新境地がうかがえる。それが『レヴァンテ GTハイブリッド』と『ギブリ GTハイブリッド』に搭載されるハイブリッドシステムの存在だ。

「eブースター」でこだわった数秒のレスポンス

マセラティ ギブリ GTハイブリッドマセラティ ギブリ GTハイブリッド

ハイブリッドシステムは内燃機とモーターを組み合わせたパワートレインで、元々は燃費の向上が主たる目的だった。ところがそれだと、エンジンの質感をブランドの魅力のひとつとして掲げてきたメーカーにとっては、訴求ポイントが薄れてしまう。そこで各社は知恵を絞り先進の技術を投入することでこの難題に挑んできた。

マセラティ初となったハイブリッドシステムは、2リットルの直列4気筒ターボにBSGを組み合わせている。BSGは「ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター」の略で、エンジン始動時に使うスターターモーターを走行時にもエンジンのサポート役として活用できるようにした仕組み。これ自体は多くのメーカーが採り入れているものだが、マセラティはこのBSGに「eブースター」を組み合わせた。

eブースターはターボと同様に空気を過給する装置で、48V電源を使用するため稼働レスポンスに優れている。アクセルペダルを踏み込むと、まずはエンジンとBSG(=モーター)がクルマの動き出しを司り、ターボが十分に威力を発揮するまでのわずかな間をeブースターが補う。つまり、クルマが停止した状態からスムーズに加速を開始するまでの過程で、エンジン+モーターからeブースター、そしてターボへとたすきを繋いでいくわけだ。

時間にしたらほんの数秒に過ぎないけれど、マセラティはこのほんの数秒のレスポンスにこだわって、こうした複雑な制御と機構をあえて使っているのである。

「これが本当に2リットルの4気筒なのか」と驚く

マセラティ レヴァンテ GTハイブリッドマセラティ レヴァンテ GTハイブリッド

例えばレヴァンテ GTハイブリッドの場合、全長は5m、ホイールベースは3mを超えるSUVのボディを動かすのに、2リットルの4気筒ターボでは十分なパワーを得られないのではないかと疑問視するかもしれない。eブースター付きのハイブリッドであれば、そんな心配は杞憂だったと運転を開始した直後に気が付くはずだ。そしてむしろ「これが本当に2リットルの4気筒なのか」と驚くに違いない。

右足の動きに対するパワートレインの反応は控え目に言って瞬速なレスポンスであり、4輪へのパワーデリバリーにも遅れは一切感じられない。ドライバーはおそらく、いつeブースターが稼働していつターボに切り替わったのかほとんどわからないと思う。それくらい、スムーズかつ滑らかな加速感を実現している。

この印象はギブリ GTハイブリッドでも同様だ。ハンドリングのみならず動力性能でもセダンらしからぬ俊敏性を披露する。パワートレインのレスポンスがいいクルマの中には、反応が敏感すぎて普通の人にはちょっとナーバス過ぎて扱いにくい場合も少なくないが、マセラティはその塩梅が絶妙なのである。ボンネットの下では煩雑な機械的運動と制御が行われていながらも、ドライバーはそんなことを知る由もなく、ただただ気持ちよくアクセルペダルをコントロールできるようになっている。

マセラティは官能的なサウンドやデザインだけではない

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とかくマセラティは、官能的なサウンドやデザインなどに注目が集まるが、実は徹底的にこだわるという技術的側面が昔からある。『MC20』と共に登場したV6エンジンの「ネットゥーノ」は100%自社開発で、プレチャンバーと呼ばれる構造も制御も複雑な機構を有している。これもやはり、優れたレスポンスや高回転域での伸びのよさを追求した末に至った技術である。

このネットゥーノにもeブースターを用いたハイブリッドシステムにも、パワートレインだけでも100年以上継承されてきたマセラティらしさを感じてもらいたいという、エンジニアの熱い想いが詰まっているのである。

レヴァンテ GTハイブリッドとギブリ GTハイブリッド。そのどちらを選んでもマセラティがこだわった最新の電動パワートレインの味を楽しむことができるのは間違いない。あとは使い勝手に優れた流行のSUVか、オーセンティックに走りを楽しむセダンか。そのスタイルや世界観が、選択を後押ししてくれるだろう。

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《渡辺慎太郎》

渡辺慎太郎

渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター 1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。

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