BYD Auto Japanの日本市場参入戦略 - BYD Auto Japan 代表取締役社長 東福寺厚樹氏 [インタビュー]

BYD Auto Japanの日本市場参入戦略 - BYD Auto Japan 代表取締役社長 東福寺厚樹氏 [インタビュー]
BYD Auto Japanの日本市場参入戦略 - BYD Auto Japan 代表取締役社長 東福寺厚樹氏 [インタビュー]全 1 枚

世界戦略EV「ATTO 3」の発売を来年1月に控えたBYDは、どのような戦略で日本市場に参入するのか。まもなく開催予定のセミナー「EV海外OEM・部品メーカーセミナー 第1回 BYD Auto Japanの戦略 」に登壇するBYD Auto Japanの東福寺厚樹 代表取締役社長に、セミナーの見どころを聞いた。

■セミナー概要
【EV海外OEM・部品メーカーセミナー】第1回 BYD Auto Japanの戦略
開催日時:2022年12月15日(木)10:45~12:00

1.中国市場の概況
2.BYD(深圳)の事業について
3.BYD Japanについて
4.BEV販売開始に向けた各種準備状況
5.充電設備、販売体制、保証とアフターサービス
6.ディスカッション・質疑応答

セミナーの詳細はこちらから

BYDの概要

---:まずBYDがどのようなメーカーなのかをご紹介ください。

東福寺:BYDは、王伝福(現BYD会長)というエンジニアが1995年に中国の深圳でバッテリーメーカーとして事業を開始したことが始まりです。テクノロジーを通じて世の中をより良くしたいという理念のもとにBYDという会社は始まりました。そして2003年に中国の国営自動車メーカーを買収したことから自動車産業にも進出しました。

2008年には世界で初めてプラグインハイブリッド車を発売したことも大きなマイルストーンになり、それ以降、バッテリー事業、セミコンダクター、IC チップなどを内製し、そういった技術が自動車の方にも投入されています。

2015年から海外向けに商用車の輸出を始めていて、今では全世界70を超える国と地域にEVのヘビーデューティートラックや EV バス、港湾作業車などのEVを輸出しています。

---:商用車のEVも幅広いですね。

東福寺:そうですね。EVバスに関しては、世界中多くの国で毎日路線バスや観光バスに使われています。アメリカでも電動の黄色いスクールバスがかなり出ていますし、イギリスではロンドンの真っ赤な2階建てのバスもEVになっています。

そして乗用車に関しては、EV/PHEVを中心に急速に生産台数を拡大しています。今年3月末の時点でICE車両の生産は今後一切しないというアナウンスをし、以降完全に新エネルギー車に移行しました。1~10月ですでに約140万台の販売実績になっています。

---:世界中のメーカーが減産せざるを得ない状況で、BYDが台数を増やすことができたのはなぜなのでしょうか。

東福寺:BYDは、バッテリーや主要なモーター、半導体などコア部品は内製なので、工場団地のような広い土地を確保して、内製の部品のサプライヤーに相当する工場と組み立て工場を一緒にして一気にパッケージで作っており、そのような工場グループがこの数年で複数新設されたわけですが、それぞれが25-30万台規模の生産キャパシティがあるので、全てがフル稼働するとその分大幅な生産キャパシティアップになりますよね。そのスピード感と投資の決断、さらに人の集め方もそうですが、全てを同時並行的にこれだけの短時間で行えるというすごさ、これは私も想像を超えている部分があります。

世界戦略EV ATTO 3

---:ATTO 3がEURO NCAP でファイブスターを獲得したとのことですね。

東福寺:そうです。日本でも販売台数が伸びていくと、国交省から試験を受けるよう案内がくることになると思います。安全性能に他国のテスト結果を持ってきて日本でも安全と言えるのかについては議論があるかもしれませんが、EURO NCAPで5スターが取れているというのは大きな勲章ではないかと思います。

---:ディーラーネットワークについて、100店舗展開されるとのことですが、どのような販売会社と提携するのでしょうか。

東福寺:基本的にはインポート業界が中心になっていて、私がこれまでのキャリアで知り合ったネットワークをフル活用しています。2023年1月下旬より、22の開業準備室を順次オープンし「ATTO 3」の商談や試乗のご案内を開始する予定です。

経験値のある販売店が中心

---:地道なリクルートを続けられてきたんですね。

東福寺:そうですね、以前から知り合いのインポーター系の方々を中心に、中古車の専業の方にも入ってもらうなど、さまざまなところからコネクションを作っていきました。

---:中心となるのは各地域の輸入車販売店ですか?

東福寺:そうですね。輸入車販売店だけでなく、国産車を中心にマルチブランド展開をしている会社も多いですね。さらに、輸入車のみで全国展開している大手の販売会社もご参加いただくことになっています。

---:販売修理アフターサービスに経験値のある販売会社さんが中心だということですね。

東福寺:そうですね。それは場所もそうですがやはり人の問題が大きいです。セールス、サービス、マネジメントのリソースがある程度あって、かつ会社としてマルチブランド化することでより人材の活用育成に資すると思っていただけるようなビジネスモデルを提供していくことで、販売会社にとってプラスのダイバーシティだと感じていただけるようなアプローチをずっとしてきましたので、そこがないとゼロスタートは非常に厳しいと思います。

---:保証やアフターサービスについてはどうなる予定でしょうか。

東福寺:保証に関しては、他社と同等レベルの保証内容になっています。一部消耗部品は除き車体全部に対して4年10万キロの保証が付いています。

パワーバッテリーに関しては、SOH(State Of Health)について、8年15万キロ到達時点でのバッテリーの容量として、新車時点の70%が下限値です。途中でそれを下回ったら無償交換する保証が付いています。

日本のお客様の年間走行距離を平均的に見ると、都心部だと1万キロ行く方は少ないと思いますし、例えば北海道のようにたくさん車を走らせる地方でもなかなか10万、15万キロの距離に行く方は珍しいと思います。つまり、お客様全員に対してしっかりとした保証をお届けできると考えています。

---:国内にBYDが100店舗あれば身近になるでしょうし、店舗に行き、実際に見てちゃんと説明を聞いてEVを検討したい、という人もいるでしょうね。

東福寺:現在のEV市場はアーリーアダプターの方が多いと思いますが、我々が進出する来年、またはネットワークが整ってくる24、25年の時点では、数多くのバッテリーEVがさまざまなブランドから出てきていると思うので、選択肢が多い中で「そういえばあそこにお店があったな」「ちょっと入ってみようかな」「試乗車があるなら乗ってみようかな」というように、店舗が近くにあるというのは、我々のようなあまり知られてないブランドが、お客様が興味を持っていただく仕掛けとしては絶対必要だろうと思います。

---:EVは日本メーカーでも納車待ちが多いですが、BYDの日本法人として割り当て台数は十分確保されているのでしょうか。

東福寺:お客様に実際に車両をお届けできる来年3-4月あたりに、量販でのボリューム展開ができるのではないかと思っています。

---:補助金もその時期に来年の枠ができますね。

東福寺:そうですね。ちょうどディーラーも2-3月あたりから本格稼働になって、3月からフルスイングしていけば4月の登録から上がっていくのではないかという理想的な絵は頭の中にはあります。本当にその通りに行くかどうかはわかりませんね(笑)。

東福寺社長が登壇する【EV海外OEM・部品メーカーセミナー】第1回 BYD Auto Japanの戦略は12月15日開催。詳細・お申込はこちらから

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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