斉藤鉄夫国土交通大臣は12月6日に開かれた定例会見で、リニア中央新幹線におけるトンネル掘削前ボーリング調査について記者の質問に答えた。
リニア中央新幹線の工事主体であるJR東海は、大井川流域の水資源問題のため着工できていない静岡工区の南アルプストンネル掘削に伴なうリスクを事前に把握し、その対応へ向けた具体的な計画を策定するため、山梨工区側から静岡工区方向へ水平に穴をあける「削孔(さっこう)」と呼ばれる作業を行なう「高速長尺先進ボーリング」の実施を表明している。
山梨・静岡県境のボーリング調査ついては、2021年12月にリニア中央新幹線静岡工区有識者会議でまとめられた中間報告において、高速長尺先進ボーリング調査が地表から地下へ垂直に削孔する「鉛直ボーリング調査」と比較して地質や湧水の状況を把握する調査手法として有効であること、作業期間中にトンネル湧水が静岡県外に流出しても大井川中流域の河川流量は維持されること、解析結果には不確実性が伴なうことが報告されている。

JR東海が公表したボーリング調査はこの中間報告を受けてのもので、2022年12月3日にはリニア中央新幹線静岡工区有識者会議の委員と大井川流域市長の首長(くびちょう)との間で、このことについての意見交換会が非公開で行なわれているが、内容を問われた斉藤大臣は「御出席された市町のおおかたの首長さんは、ボーリング調査を行った方がいいのでは、という意見であった」という報告を受けていることを明らかにしている。

一方、静岡県は実質的にトンネル工事の一部となる恐れがあることなどを理由に反対しており、斉藤大臣は「中間報告の内容を踏まえ、JR東海が静岡県や流域市町をはじめとする地域の方々と向き合い、地域の御理解と御協力が得られるよう、引き続き指導してまいりたいと思っています」と述べ、静観の構えを見せている。
