日系車載電池、再興の鍵は信頼性の高さ…車載バッテリー最前線 第3回

車載電池用部材業界の現状と課題

車載用電池の安全性・信頼性確保に関するビジネスモデル

試験機業界や受託試験の役割が拡大

厳格な限界試験が日本車の安全性を実現

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全5回にわたって国内の車載電池の今を紐解く連載「車載バッテリー最前線」。3回目となる今回は、車載電池開発の要となる、電池部材に着目する。

EVシフトが急速に進む中、海外では、リチウムイオン電池(LIB)を搭載したEVやPHEVの火災事故が問題となっている。しかし、日系勢の電動車ではこれまで火災事故を1件も発生させていない。この理由と背景について、これまで、本田技術研究所やサムスンSDIなど車載電池の第一線で研究開発に携わってきた佐藤登氏が自身の経験と業界の現状から、車載電池の安全性に迫る。

◆車載電池用部材業界の現状と課題

以下の図1に示すように、2010年以降の日系電池部材業界のシェア低下は如実であり、今後を展望すれば対応策を考えるべきであろう。そこで、表1には昨今の日系部材業界の動き、特に事業統合を示した。これは、このように展開しないとグローバル市場で闘えないことを意味しており、セパレーター事業も似たような対応が必要ではないかと考える。

日系電池部材の顕著なシェア低下
日系電池部材事業の事業統合例

このように考えた背景は以下の図2で説明する。2010年までは日系部材が中韓部材に対しハイエンド系を軸に圧倒的な優位性を保っていた。この差別化により日系部材業界は競争力の高い事業を展開できていた。その後、中韓部材業界は進化し、日系勢の強みであるハイエンド領域に食い込んできた。その結果、日系部材と中韓部材のギャップは小さくなり、中韓部材を適用できる範囲が拡大し、同時に、日系部材より安い価格でビジネスを仕掛けてきたことで日系部材のシェアが低下することとなった。

これで日系部材の下限に達したのかというと、そうではない。今後さらに日系部材の市場シェアが低下する可能性がある。ハイエンド系での有意差が小さくなった現状では、日系部材業界としてはハイエンド系でさらなる高みを目指す一方で、ボリュームゾーンの価格帯での競争力も高めるビジネスモデルが必要と考える。


《佐藤 登》

佐藤 登

佐藤 登:工学博士 1978年に本田技研工業に入社。1990年からは本田技術研究所の基礎研究部門へ異動し、電池研究開発部門にて車載用電池の研究開発を担う。その後、2004年に韓国のサムスンSDIにて常務に就任。2012年に同社を退職し、現在は経済産業省「蓄電池産業戦略検討官民協議会」に有識者委員として参加。名古屋大学未来社会創造機構客員教授、エスペック上席顧問、イリソ電子工業社外取締役を務める。

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