ロックだぜ!! タントカスタム Red&Black…東京オートサロンでしかできない[デザイナーインタビュー]

ダイハツ タントカスタムRed&Black
ダイハツ タントカスタムRed&Black全 16 枚

ダイハツは東京オートサロン2023にダイハツ『タントカスタムRed&Black』を出展する。デイリーストリートをテーマに往年のカスタムを目指してデザインされたという。

ダイハツ タントカスタムRed&Blackダイハツ タントカスタムRed&Black

◆好きじゃないけど、嫌いじゃない!?

---:かなり車高が下がって、ボディーに赤と黒のグラデーションがついてという、まさにRed&Blackのネーミングの通りですね。まずは、この企画した意図を教えてください。

ダイハツくるま開発本部デザイン部第2デザインクリエイト室先行開発グループの秦麻衣香さん(以下敬称略):大きく2つあります。まず1つは、普段の市販車の開発ではできない、オートサロンでしかできないような飛び抜けたものを作りたいという思いです。2つ目はオートサロンには各メーカーが出展します。そういったところはたぶん王道のコンセプトモデルを作り上げてくるでしょう。そこに対して、「うわ、ダイハツはこんなに面白いことしてるんだ!」というものを出したかったのです。そこでぱっと見の印象が強いものを提案しました。

ダイハツくるま開発本部デザイン部第2デザインクリエイト室先行開発グループの秦麻衣香さんダイハツくるま開発本部デザイン部第2デザインクリエイト室先行開発グループの秦麻衣香さん

始めはいろいろ議論しながら様々な案を出していきました。やはり最初は王道のカスタム車で、テーマがちょっと不良っぽいクルマが好きな世代と、それに憧れる若者社会のどちらにも響くクルマを作ろうとしていました。ですからちょっとプレミアム感が漂うような白や、グラデーションも色々考えていたのです。

そうした中で、“ロックなやつ”を作ってみないかと、軽いノリでアドバイスをもらったんです。私も結構アイデアに行き詰っていた時だったので、息抜き程度にやってみようと思って、ロックな要素を“モリモリ”で作ったんです。私のロックのイメージは赤と黒だったので、それをもとにロックバンドやアーティストなど参考にしながらデザインしていきました。実はそれがデザイン部内で大受けしまして、こんなの見たことがないとか、好きだなという評価になったのです。それでこの案が進むことになりました。

---:ターゲットはどんな感じの人たちですか。

:40代から50代ぐらいのドンピシャでメタルとかが好きなおじさん世代はもちろん盛り上がるでしょうし、それだけではなく、ポストパングファッションが好きな20代から30代くらいの女性にも刺さると思っています。

かなりマイノリティに見えるかもしれませんが、ここまでスペシフィックに極めていますから、意外と、「好きじゃないけど、嫌いじゃない」と思ってもらえるのではないでしょうか。そう思って自信を持って出しています。

始めにお話したとおり、オートサロンでしか挑戦できないことをやりたかったので、色々なところにそういう要素を盛り込んでいます。ですからこのクルマ、ちょっと大丈夫?と物議を醸しだすくらいがむしろ成功だと私は思っています。

◆音楽という共通性

---:なぜロックを提案したんですか。

ダイハツデザイン部第1デザインクリエイト室課長の芝垣登志男さん(以下敬称略):ド定番のカスタムをやりたいといった時に、僕ら40代50代のド定番だとツッパリ系(笑)の方向になるんですけれど、それだと面白くないのと、いま時の若い人にも受けるド定番のその先を考えた時に、音楽だと共通点があるのではないかと思って、ロックみたいなテーマを出した感じですね。今回、ダイハツが掲げるオートサロンのテーマが、“DAIHATSU VILLAGE2023 夢ふくらむ、はじけるダイハツ”ですから、どうせやるなら弾けろ、好き放題にやろうと決めました。そして出来上がってきたスケッチを部内で見ていると、たまたま後ろを通りがかった人が「なんか目が覚めた!」っていったんですよ。

そのぐらいパンチ力があったので、これはいけると思い絶対作ってやろうと思いました。少し感じているのが、ファッションなども含めて今回提案している往年の世界に、ひとまわりして戻ってきているような気がしますので、若い人たちにも受けれられているんじゃないかと思います。

---:パッと見た瞬間に目を惹くボディーカラーの想いを教えてください。

:赤と黒をフロントからリアにかけてグラデーションにしています。このグラデーションは全部塗装です。今回の裏テーマとしてカスタムイズバック、王道のカスタムというものがありましたので、あえて全部塗装でやることにこだわりました。

ダイハツ タントカスタムRed&Blackダイハツ タントカスタムRed&Black

そのグラデーションですが、赤と黒が見え隠れするところで妖しさを表現したかったのです。また、リアが黒になっていますので、暗闇から出てきたみたいな、そんなイメージを醸し出しています。マスキングもビーム光線みたいな感じで入れています。実はこの柄の見え方も結構さりげなさに気をつけました。ガンと見えてしまうより見え隠れした方がこのクルマの妖艶さ、妖しさみたいなところが表現できるからです。また、この柄を入れることによって、シートに入っているキルティングとともに内外の一体感を出すことができました。

ダイハツ タントカスタムRed&Blackダイハツ タントカスタムRed&Blackダイハツ タントカスタムRed&Blackダイハツ タントカスタムRed&Black

この赤は、かなり輝度の高いキャンディーレッドを使用してます。大粒形のフレークを使った塗装ですのでギラギラ感を出しつつ、同時に陰影が出てボディーの立体感も表現できました。実はこの2つを両立するのが結構難しく、塗装は職人さんの手塗りで、4コートぐらい塗っているので、量産車では考えられないスペシャルな一台です。

◆気分がアガルインテリア

---:インテリアはいかがですか。

:インテリアは、一目見た瞬間に気分がアガってほしい。そこにこだわって外装の赤と、内装の加飾にも同じ色を使っています。それと同じように、ステアリングやシートにも刺繍やステッチが入っているんですけれど、その赤もなるべく明度が高く、きちんと見えるようにこだわりました。

ダイハツ タントカスタムRed&Blackダイハツ タントカスタムRed&Black

シートはレザーで艶感や張り感を出す一方、シートのサイド材の表皮はレザーではないんです。これはプリントで作られていて、外装の柄と合わせています。これが見る角度によって、赤に見えたり、黒に見えたりする。これも表皮メーカーさんに何度もやり取りして作ってもらいました。

その他にも、専用のロゴをデザインしましたので、デカールやシートの刺繍、ナビ画面のオープニングなどにも散りばめていますし、インパネにも加飾を入れています。ブーツとか靴などにも使用されているようなもので、一部の人には多分刺さると思うんですね。

ダイハツ タントカスタムRed&Blackダイハツ タントカスタムRed&Blackダイハツ タントカスタムRed&Blackダイハツ タントカスタムRed&Black

とにかく本当にできるところはなんでもやろうと思ってこだわりました。本当に好きな人には絶対ドンピシャで刺さると思いますし、それ以外の人にも多分受けるんじゃないでしょうか。

---:秦さんはロックが好きなんですか。

:よく聞かれますし、これを提案した時に、こういう世界観が好きなのみたいにいわれたのですが、常にロック大好きみたいな感じで生きているわけではありません。ただ、好きな部分がどこかにあるんだろうなとは思っています。だからこそ多分ここまでノッテできたのではないかな。今回の仕事で自分のうちに秘めた思いに気付くことができました。

この世界観を表現するのに中途半端にしてしまうと、絶対面白くないなと思っていましたので、できるところをとにかく探してとことんこだわってやりつくしました。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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