リモートでも濃密なディスカッションを実現、商品企画にも…CES 2023

キヤノン「AMLOS」の利用イメージ
キヤノン「AMLOS」の利用イメージ全 6 枚

CES 2023キヤノンブースでは、自動車産業にも関連するソリューションが見られたのでここで紹介したい。CES 2023のベストオブイノベーションを受賞したリモート会議用システム「AMLOS」と、クルマをデザインするプロセスで活用できるMRソリューション「MREAL」だ。

◆リモートでも濃密なディスカッションを実現する「AMLOS」

「リモート会議で何が困るかというと、クリエイティブな話ができないということ。これを解決するのがAMLOSです」と強調するのは、製品化を担当したキヤノンUSAの前田広平氏。自動車メーカーも導入を前向きに検討しているという製品だ。

新型コロナウイルスの感染拡大によってリモート勤務が普及し、オンライン会議も日常的に行われるようになったが、ホワイトボードなどを使いながらのクリエイティブなブレインストーミングや、濃密なディスカッションは、リモート会議ではどうしても難しい部分がある。このようなストレスを解決するのがAMLOSだ。

AMLOSのユニークな点は、職場に設置された1台のカメラによって、プレゼンター、ホワイトボード、会議室全体、注目してほしい視点など、複数の視点でフルHD映像を配信することができる点だ。これによってリモート会議の参加者は、プレゼンターの表情、ホワイトボードの内容、会議室内の状況、貼り紙や机上の小物など、注視したい対象を自由に選択することが可能になる。

また、ホワイトボードの正面にカメラが設置されていなくても、キヤノン独自の技術により、反射や歪みなどを補正し、また人間の映り込みなどの自動除去を行うため、リモート勤務者はホワイトボードに描かれたイラストや文字などを鮮明に確認することができる。

カメラから斜めに見えるホワイトボードを長方形に補正して配信するカメラから斜めに見えるホワイトボードを長方形に補正して配信する

「1台の4K PTZカメラとソフトウェアで、このような機能を実現しています」と前田氏は説明する。PTZカメラとは、パン・チルト・ズーム可能な会議用カメラで、このカメラで撮影した映像と、キヤノン独自のソフトウェアによってこのようなソリューションを実現したとのことだ。

ゆえに低コスト化を実現しており、「約3000ドルのカメラと、月額150ドルのサブスクリプションで利用できます。あとは別途カメラを接続するためのパソコンがあればOKです」とのことで、競合となる他社サービスよりも安価でありながら、前述のような独自の機能を提供する。

AMLOSの映像はマイクロソフトのTeamsで配信が可能なため、Teamsをすでに使っている場合は導入のハードルも少ないだろう。Teamsだけでなく他のビデオ会議ツールへの対応も進めていく計画だという。

◆試作デザインをMRで街中に置いて確認することができる「MREAL」

今年のCESでは、MRのソリューションが提案されているケースがいくつか見られた。MR=ミックスドリアリティは、現実の景色の上に3DCGを重ねて表示するもので、キヤノンのMREALもそのひとつだ。

キヤノン「MREAL」本体キヤノン「MREAL」本体

利用シーンの例として、生産ラインの設備を刷新する際に、実物を作る前にMRで事前確認をするという事例を体験できるようになっていた。

これを実際に試したところ、現実の景色と3DCGが違和感なく重ねて表示され、遅延も気にならず、ゴーグルが非常に小型軽量で利用しやすいことに気が付いた。この仕組みを利用して、新しい生産ラインを空間として認知することができるので、作業をする際に無理のない姿勢かどうか、設置場所は適切かどうか、など、立体的に事前確認をすることができる。

そのほかの事例として、自動車のデザインに利用する例が提案されていた。新型車の3DCGを実際の景色に重ねて、新しいデザインは街中でどのように見えるか、実際のモデルをつくらずともチェックすることができるという。

クルマのデザイン試作をMRでレビュークルマのデザイン試作をMRでレビュー

また、自動車整備のインストラクションをMRを利用して実施する例もあり、3DCGで体験することで、実物の整備に近い感覚を得ることができるメリットがあるとのことだ。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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