オートモーティブワールド2023では、エネルギーの充電と放出、あるいは自動運転レベルを上げるといった、質と量を同時に追いかけるようなニュープロダクトや技術発表が目立った一方で、既存のリソースを巧く活用することで新たな課題解決や収益ビジネスに繋げようという動きも際立った。
変化するプローブ情報の用途
そうした取り組みのひとつが、JVCケンウッドが提案した「IoTデバイスの遠隔管理システム」だ。具体例のひとつは、ドライブレコーダーの走行画像をAI解析することで、路傍の電線や電柱に鳥が後々に害をなすような巣を作っていたら、自動的に判別して場所や日時ごと知らせてくれる、というものだ。あるいは音声マイクが拾った音をAI解析にかけて、特定の条件下で子供の泣き声が聞こえたら、車内置き去りの可能性を判断できるという。
つまりこれまでビッグデータ内で生成されるプローブ情報の用途といえば交通渋滞情報などが主だったが、個々の企業やサービス事業体や個人を対象に、単純作業の省力スマート化や社会課題の解決にも役立てられるということだ。(通信コストやプライバシーに属するデータ管理は無論、その都度ごとに構築される必要はあるとはいえ)
地図データ上でリアルタイム生成される各種プローブ情報を立体的に組み合わせ、アクティブな高精度地図をデータベースとして用いることでセキュリティやサービスを最適化するビジネスは、ジオテクノロジーズ社が十八番とするところで、ブースで随時行われていたセミナーは各回ともかなりの盛況振りを見せていた。
「腰下」部分の開発受託を請け負う
既存リソースを活用する方向性で見逃せない動向としてもうふたつ、ヤマハモーターエンジニアリングとニチコンの展示を挙げておこう。前者はリアルタイムかつアクティブなビッグデータの高精度運用といった「空中戦」からはほど遠く、むしろ近未来のモビリティで担い手が少ないとされる「腰下」部分の開発受託を、請け負えるという。
今回、ブースに展示されていたミニ電動モトクロッサーと蓮のようなトレイ運搬車は、プロダクト化を目指すのではなく開発サンプルとして制作したもの。その開発プロセスも、高精度のシミュレーターを運用してきたノウハウから、現実との差異が少なく技術的なトライ&エラーを最小限に抑えられるそうだ。つまりスピード感があってコストを抑えた開発が可能だという。