【ブリヂストン ブリザック VRX3 試乗】SUV対応サイズ拡充で安定した雪上&氷上性能を実現!北海道でその真価を試す…斎藤聡

ブリヂストン ブリザック VRX3 試乗
ブリヂストン ブリザック VRX3 試乗全 28 枚

強烈な氷上グリップ性能の高さで評判のブリヂストン「ブリザックVRX3」。2022年の10月にSUVサイズが追加になった。ブリヂストンのスタッドレスタイヤの中で最新モデルとなるVRX3で、今回は雪上試乗を実施。旭川の市街地や北海道の厳しい道としても有名な旭岳のワインディングと、シビアコンディションの環境下でどのような性能を見せてくれるのか注目した。

◆基本構造はVRX3を踏襲、SUV向けに最適化

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ここで大切なポイントは、SUV用のVRX3が追加されたのではなくあくまでもサイズが広がったということ、もちろんタイヤサイズの拡大に応じでブロック列(リブ)が一列追加されたりといった具合に、サイズ拡大時に一般的に行われる変更はあるものの、基本構造やコンパウンドは従来のVRX3と同じということ。

SUV用スタッドレスタイヤというと、オフロードをイメージさせるブロックのゴツゴツしたものが多い。コンパウンドもグリップよりも摩耗性や深雪でのトラクション性能を重視して乗用車の最新コンパウンドよりは落ちる印象がある。

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近年のSUVのタイヤは、標準でオンロードタイヤかそれに準じるものを装着しているモデルが多くなっている。SUVには乗っているけれど、走るのは基本オンロードという人も少なくないのが昨今のSUV事情。そんなユーザーにとって履けるものなら履いてみたいと思うのが最新の乗用車用スタッドレスタイヤ。しかもメーカーからはマッチングに問題なしとお墨付きをもらっているのだ。

◆アイス路面から雪上まで極めて安定、抜群の氷上性能に驚く

夏に行われたアイススケ-トリンクでの性能は乗用車用と全く変わることなく強烈なグリップ性能を発揮して期待を上回る性能を見せてくれた。それだけに気になるのがリアルワールドでの雪道性能だ。

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まず驚いたのが起点となった早朝の旭川市内の凍結路面。交通量の多い朝のきっちり磨き込まれた凍結路面で、ホイールスピンの兆候もみせずスルスルと加速し、ハンドルを切るとすいーっと曲がっていくのだ。大げさに言うと軽く湿った舗装路を走っているみたいだ。

さすがに直線区間で強めにブレーキを踏めばABSが効きだすが、効きだすまでのブレーキ踏力はとても氷の路面とは思えなくくらい。その結果、滑りやすい旭川の朝の凍結路面を安心して走ることができたのだ。ちなみにここまで走ってきたのはアウディ『Q5』。2Lのディーゼルターボを搭載し204馬力/400Nmを発揮。車重な1900kgオーバーとなかなかの重量。組合されるタイヤサイズは235/55 R19だ。

◆ 不得手そうに見える状況下でも、前後方向のグリップの高さを感じる

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そうこうしているうちに旭岳の麓に到着。ここからは圧雪路のワインディングロード。だいぶ雪がしっかり降っていて、柔らかな轍ができるほど。ここでトヨタ『ハリアー』『ヤリスクロス』、さらにはメルセデスベンツ『GLC』に乗り換えて同じコースを何度か往復してみた。

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縦溝主体で横溝は細めというVRX3のトレッドパターンにとって、最も苦手な路面だ。と思ったのだが、意外なほどしっかり走ってくれる。さすがにブロックパターンや縦溝を多くとったパターンと比べると踏みしめて蹴る「雪中せん断力」はそれほど強くは感じない。ところがVRX3には不思議な前後方向のグリップがあるのだ。

多分接地面の広さが作り出すコンパウンドグリップではないかと思う。氷の路面でタイヤが氷をつかむようにグリップする感覚に似た感触が雪上でもあるのだ。だからトラクションの不足を感じないしハンドルを切り出した時の応答がよく、クルマの鼻先の動き出しが素早いのだ。その結果クルマの向きがスムーズに変わってくれる。

モータージャーナリスト 斎藤 聡氏モータージャーナリスト 斎藤 聡氏

さすがに-5度から-8度くらいの握っても固まらない雪が凍結路面の上に載っているようなコンディションだと、カーブで横方向に不動の安定感があるとは言えないが、曲がりやすさとトラクションそれにブレーキが予想以上にあるので普通に走れてしまう。

厳密に言えばトレッドパターンは見るからに雪道が不得手そうで、実際ブロックのエッジが作り出すエッジ感(スキーのエッジを利かせたような感じ)はガッツリあるというほどではない。

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各車のマッチングをみると4車種の中でヤリスクロスは最も軽量なために、雪上ということを忘れる軽快な走り。対象的にGLCはQ5と同じ方向の安定感を感じられた。個人的に今回のベストマッチはQ5で、アウディのトラクション性能を素直に引き上げたような走りが印象的であった。

◆ 絶対的な氷上での安心感は強い味方に

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思い返すと、旭川の朝の凍結路のインパクトが大きすぎたのだ。あの圧倒的な氷のグリップ性能を出すために、開発段階では溝幅を手彫りでぎりぎりまで詰めていったのだという。そんな試行の結果このパターンが生まれたのだと聞けば、ブリヂストンのエンジニアにとってもこのトレッドパターンはかなりのチャレンジだったのだろう。

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こう書くと雪は苦手と思われるかもしれないが、雪も決してダメじゃない。それどころかこのパターンでこれだけの雪のトラクションが出るのかという不思議が頭から消えず、何度もエンジニアに理由を聞いてイヤな顔をされるくらい性能が高かった。

ブリヂストンでも深雪、新雪を走る機会が多いのであればより深雪性能の高いDM-V3を薦めている。対してVRX3は氷上性能、中でも現実的な凍結路で絶対的安心感を作り出すために作られたスタッドレスタイヤだということ。そう考えるとこの雪上性能は十分納得できるし、この雪道を体験してもなおVRX3の魅力が勝っている。

モータージャーナリスト 斎藤 聡氏モータージャーナリスト 斎藤 聡氏

斎藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

《斎藤聡》

斎藤聡

特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

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