WILLERの主催で2月14日15日の2日間、東京の渋谷ストリームホールで開催されたMaaS Meeting 2023。2日目の午後は「AIオンデマンド交通シンポジウム」と銘打ち、日本国内でAIオンデマンド交通を手がける9つの会社が一堂に会した。
驚いたのは冒頭で、「AIオンデマンド交通研究会」の発足が発表されたことだ。この新しいモビリティサービスの周知を図り、地域の課題に取り組んでいくことを目標とした組織で、シンポジウム参加企業とWILLERの10社でスタートすることになった。
ベンチャーから大手まで、国内外9社が参加
続いてシンポジウムに参加した会社が順番にプレゼンテーションを行った。
2009年から「コンビニクル」を運営している順風路は、現在全国71か所で稼働中。10年経過した自治体が17を数えるなど実績豊富だ。アピールポイントとしては低コスト、可視化、車両追加などが簡単に行えることを挙げていた。タクシー用とオンデマンド用の機械の共通化、自動運転プロジェクトへの参加、デジタル田園都市国家構想に選定された北海道更別村SUPER VILLAGE構想への導入なども紹介された。
SAVS(スマート・アクセス・ビークル・サービス)を展開する未来シェアは、公立はこだて未来大学発のベンチャー。数千台の運用が可能なシステムとのことで、NTTドコモ、JTB、JR東日本などと連携を実現しており、実運用に移行した地域は20弱ある。岡山県久米南町の「カッピーのりあい号」では、5ゾーンに分けていた運用を一体化しつつ、車両を6台から4台へ減らすことに成功。それでも月の利用者は2倍になったそうだ。
2023年2月現在で50か所での運行を行うアイシンの「チョイソコ」は、受付に電話を使っていることが特徴。オペレーターは自社で管理しており、相談事にも耳を傾け、トラブルはその場で処理することを心がけている。実証実験で終わらないよう、エリアスポンサー制度を導入し、自治体の負担を軽くすることにも配慮。近年は介護施設にも導入し、最初に導入した愛知県豊明市では「チョイソコまつり」を開催していることにも触れた。
富士通もAIオンデマンド交通を含めたMaaSをプロデュースしている。国のスーパーシティ構想、デジタル田園都市国家構想の中で、移動は重要な位置を占め、なかでもオンデマンド交通が大事になるという視点からだ。導入事例として、長野市信州新町では市営バスとスクールバスを統合する実証実験を進め、国際興業と実証実験を進めるさいたま市ではLINEから入るMaaSアプリの中で予約が可能になっているという。
西日本鉄道(西鉄)と三菱商事の合弁会社として設立されたネクストモビリティは、オンデマンドバスおよびMaaSなど周辺サービス事業をワンストップで提供するとしており、ひとつのプラットフォームで多様なニーズに対応。サービスの名称は「のるーと」だ。交通事業者目線を持っていることを特色に挙げており、すべての人がハッピーになるために、短期実証ではなく社会実装を目指し、現在11地域でサービスを継続している。
定額運賃で話題になったWILLERのAIオンデマンド交通「mobi」を運営しているのが、WILLERとKDDIの合弁によって生まれたコミュニティモビリティで、現在12の自治体で運用中。利用者の声で嬉しかったこととして、運転免許返納の決心がついたという声を挙げていた。mobiのデータから稼働状況を分析し、移動困難りエリアを抽出したり、待ち時間の短縮に繋げたりしているそうで、提供後にサービスを磨いていくことも大事とした。
海外勢もシンポジウムに参加した。2012年にニューヨークで創業し、イスラエルに開発拠点を置くVIAは、2018年に日本上陸。ホワイトラベルとして200万人に利用されているという。米国オースチンでは定時定路線バスを置き換えることで大幅な利用者増を実現。シアトルでは既存の鉄道やバスを補完する立場として共存を目指しているという。日本での導入例として長野県茅野市、茨城県高萩市なども紹介された。
シンガポールで創業したSWATは2020年に我が国に進出。ルーティングやアルゴリズムの開発、オンデマンド交通アプリの開発と導入を手がけている。アプリは完成形のほかホワイトラベルやAPIでの提供にも対応している。国内の事例としては東京都三鷹市、大阪府豊能町、長野県白馬村を紹介。白馬村では最適化分析の結果、車両を4台から3台にし、走行距離も減らすことに成功したという。
モービルアイからは、2012年にサービスを開始し、現在はインテルグループにあるmoovitが紹介された。MaaSアプリ、オンデマンド交通や自動運転移動サービスのソリューションを業務としており、MaaSアプリはフランスのパリ近郊、オンデマンド交通はイスラエルのハイファで展開。APIはUberやLyftにも提供している。日本とASEANは丸紅と協業しており、北海道石狩市でオンデマンド交通の実証運行を開始している。
各社の強み、どう活かすか

続いてパネルディスカッションが行われた。パネリストが多いので2部構成となったが、ここではまとめてお伝えする。ファシリテーターは福島大学准教授の吉田樹氏が担当。青森県八戸市のバス路線や運賃体系の再構築、福島県郡山市や南相馬市などでの定額タクシー運行など、各地で革新的な交通サービスの導入に尽力している。
吉田氏はまず、それぞれのサービスの強みについて尋ねた。いくつかの会社の回答を紹介する。