今、自動車の開発現場で急激に進行しているのがSoftware Defined化である。そうした中で自動車OEMとハードウェア/ソフトウェアサプライヤーが果たすべき役割と競争力を向上させるにはどうすべきか。その方策、現状と今後について、2人のエキスパートがオートモーティブワールド2023で講演を行った。
高付加価値な機能をタイムリーに提供
まず「Software Defined Vehicle(SDV)を形作る要素と将来の趨勢」と題して講演したのは、デロイト トーマツ コンサルティングの執行役員パートナーで、大阪公立大学で客員教授も務める周磊(しゅう・らい)氏だ。周氏は、自動車、ICT、エレクトロニクス、モビリティサービスといった業界を中心に、日本国内のみならず、欧米、中国、インドなど、諸外国を対象とした多数のプロジェクトに参画する経験を持つ。
周氏はSDVについて、「ユーザーから取得するデータを活用し、低負荷で高付加価値な機能をタイムリーに提供できることに最大のポイントがある」と説明。新興OEMでは、SDV化に向けた基盤を構築済みで、それに対して従来OEMは2025年頃に内製ビークルOSを実装・拡充する予定となっている。つまり、「新興OEMとは3~5年ほどのギャップが既に存在している」と周氏は語る。
その新興OEMのSDVへの取り組みについて周氏はテスラを例に挙げ説明した。「テスラは今後の収益の柱として、エンタメや保険といった領域を拡大し、同時に無料提供領域のUX向上を図っている」とし、それは、たとえばエンタメでは自動運転レベル3でハンズオフ走行が可能になった時、あるいは充電待ち時間での車内体験の向上に役立ち、ADASの強みを活かすことで料率の低い保険契約の拡大も可能になるという。
この中で注目すべきは無料提供領域のUX向上だと周氏は語る。「ユーザーは無償での機能アップに大きな関心を抱いており、アンケートでは実に91%の人がこの機能を重視してテスラを購入している」という。その声は「頻繁なOTAアップデートによりUXが進化するので満足している」「ユニークな機能がOTAで提供され、乗っていても飽きが来ない」といった声が数多く寄せられていることを紹介した。