ホンダがN-VANを電動化、モバイルパワーパック仕様にした本当の狙いとは?

『N-VAN』をEVにコンバートした「MEV-VAN Concept」
『N-VAN』をEVにコンバートした「MEV-VAN Concept」全 9 枚

バッテリーの技術革新と市場拡大が進む中で、その活用方法がカーボンニュートラル達成における鍵となっている。3月に開催された国際二次電池【春】2023では、経済産業省と本田技術研究所の講師がセミナーに登壇した。テーマは「2050年カーボンニュートラル実現へ向けた我が国の蓄電池産業戦略と自動車業界からの提言」。各講演のポイントを紹介したい。

◆経産省の支援は全固体から液系リチウムの製造強化へ

最初に登壇したのは、経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 電池産業室 室長の武尾伸隆氏。我が国の蓄電池産業戦略について、基本的な考え方と方向性を講演した。

蓄電池、つまりリチウムイオンバッテリーは現在、世界各国の政府が競って産業支援を強化しており、特に液系リチウムの“生産能力の強化”を政策的に支援する施策が目立つ。武尾氏は以下のように説明した。

「アメリカ、欧州、中国、韓国などで支援が強化されており、特にアメリカはバイデン大統領が国家計画として8000億規模の電池製造への支援やEVの税控除を行ってます」

これまで経済産業省は、全固体電池の研究開発を中心に支援してきたが、現在のところ全固体電池の市場投入はまだ見えていない。

一方で、現在の市場は液系リチウムが席捲しており、欧米中韓などが液系リチウムの生産能力を金銭面で支援したことにより、さらに日本との生産能力の差が広がっている状況を招いている。

このような状況について、武尾氏は「蓄電池産業戦略について、昨年8月に経済産業省で取りまとめました。これまで全固体電池にフォーカスして支援してきましたが、中国や韓国が政策支援を背景に(液系リチウム産業が)急成長しているので、当面の主戦場は液系リチウムとしました」と話す。

「方向性としては、研究開発中心から、液系の製造基盤強化への投資、海外展開支援、技術開発支援の3つとしています。また国内基盤拡充への政策支援強化やグローバルアライアンスの形成、上流資源の確保、技術開発、人材育成確保、リサイクルシステムの確立など、7つのアクションを設定しました」

◆N-VANをモバイルパワーパック仕様へコンバージョン

続いて、本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所 エグゼクティブ チーフエンジニア 兼 本田技研工業 事業開発本部の岩田和之氏が登壇した。

講演のテーマは「電池視点からの自動車産業のカーボンニュートラル」。ホンダモバイルパワーパックを例に、電池のバリューチェーン全体を考えた時の脱炭素化を説明するものだ。

ホンダが近年力を入れている「ホンダモバイルパワーパック e:」は着脱式のモバイルバッテリーで、容量は1.3kWh、重量10.3kg。長さは30cmほどの直方体で、交換は人の手でも行えるほどの重さ、大きさだ。

岩田氏は、このモバイルパワーパックの活用事例から話を始めた。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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