SUPER GT、スーパー耐久、それらを量産車につなげるスバルの活動

スーパーGT BRZ GT300
スーパーGT BRZ GT300全 26 枚

日本のモータースポーツカテゴリーの一つであるSUPER GTは、車両開発における究極の実験場だ。スーパー耐久は市販車に近い車両で開発とテストする実験場でもあり、その結果が市販車に反映されることもある。SUPER GTは今週末の4月15~16日が開幕戦、スーパー耐久は3月19日決勝で開幕戦を終えている。

SUPER GTとスーパー耐久に同じ車種が、そして同じドライバーで走っているのがスバルだ。

◆スバル BRZ、井口卓人と山内英輝

国内最高峰のモータースポーツの一つとして数えられているSUPER GT。観客動員数は多く圧倒的な人気を誇る。SUPER GTはエンジンや空力パーツ、タイヤ・ホイールなど車両開発の場として、さまざまな取り組みが行われている。それらが集結したレースを見に行くことで、ファンはレース、車両、ドライバーに魅了されるのだろう。

同じような箱車レースとして参戦チームが多くなっているスーパー耐久も盛り上がりを見せている。最近は自動車メーカーが参戦し、次世代のモータースポーツへの取り組み、次世代に向けた自動車作りを見せる。そして水素やカーボンニュートラル燃料などについてもメーカー同士で連携をはかり、業界全体で取り組んでいこうという姿勢が見えるのも特徴のひとつだ。

SUPER GT、スーパー耐久、GR86&BRZ CUP、市販車、カテゴリーは違えど全て同じ参戦車両というものもある。それがスバル『BRZ』だ。

SUPER GTではR&Dスポーツが車体を製作し、スバルとSTIがエンジンを開発している。このBRZ GT300を操るのは井口卓人と山内英輝の2人。井口は2014年からBRZ GT300のレギュラードライバーになり、山内英輝は2015年からBRZ GT300のレギュラードライバーになる。2人のコンビネーションは2023年で9年目だ。2021年にはGT300クラスのシリーズチャンピオンを獲得しており、これほど長く同一チームでコンビを組むドライバーはそう多く無い。

2022年からはスバルがスーパー耐久に参戦することになった。車両製作やエンジン開発全てをスバルの市販車開発部隊がメインに行っている。ドライバーには井口・山内が起用されている。

◆スーパーGTとスーパー耐久で同じところ、違うところ

SUPER GTはBRZの車名を用いているが、エンジンは「EJ20」というスバルの屋台骨を長年支えたエンジンであり、市販のBRZには搭載されていない。スーパー耐久に参戦しているBRZは市販車をベースに開発されており、エンジンは「FA24」エンジンが載っている。GT車両はレーシングカーとしての素性を持ち、スーパー耐久車両は市販車の改造という素性を持つ。共通するところは無さそうだが、そうではないようだ。

SUPER GTで井口・山内のコンビネーションは9年目ともなると、車両を走らせた時に「自分はこう感じるが、パートナーはこう感じるだろう」、「自分はこうしたいが、パートナーはこうしたいだろう」ということを、多くを語らずとも理解しあっている。SUPER GTでは乗るドライバーは2人きりで、お互いを理解しあい高いレベルで妥協点を見つけることができる。

しかしスーパー耐久においてはそうは行かない。トヨタGAZOOレーシングと共に「モータースポーツを起点にしたもっと良いクルマ作り」というテーマを掲げ、スーパー耐久の活動理由は将来のスポーツカー開発のためとなっている。

トップドライバーだけが乗りこなせてタイムを出せるマシンでは、市販車に技術を降ろすのが難しい。スバル・トヨタどちらも社員の開発ドライバーが搭乗し、車両開発に繋げていく。ジェントルマンドライバー、もっといえば普通の人が乗っても速くて安全なクルマを目指す必要がある。

2022年のスーパー耐久では、トヨタが走らせる28号車ORC ROOKIE GR86 CNF conceptと、スバルが走らせる61号車Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptは、切磋琢磨したことにより、少しマシンのバランスを崩してしまったところもある。2023年のスーパー耐久では両チームとも社員ドライバーも増やし、もっと良いクルマ作りの本質的な部分に取り組もうとしている。

◆安心していけるというフィーリングは同じ

SUPER GTとスーパー耐久では共通項はそれほど多く無いと思われる、それでも山内は「基本的には違うのですが、GTのBRZは安定性とかインフォメーションの分かりやすさがあるから、信じきって乗っていける。その感覚はどの車に乗っても同じことが言えると思います。スーパー耐久のBRZでも安心感がなければ走っていけない。安心していけるという、同じようなフィーリングがなければ速く走れないという意味では、BRZは繋がっていると思います」と語る。

SUPER GT、スーパー耐久、そしてGR86&BRZ CUPに参戦し、自身の愛車もBRZの井口は「スーパー耐久のマシンについては今年シーズン前にミーティングを行い、誰が乗っても乗りやすく速いクルマ作りをしていこう、となりました。開幕戦が終わって、いろいろ見えてきたところもあります」という。

「開幕戦では通常とは違うことをしてみて、良い結果に繋がっていますが、市販車に繋げられるかといえばそうでもない。さまざまなことがうまく繋がっていけば、次の市販車にも繋がるでしょうし、GR86&BRZ CUPのように市販車を使ったレースでも良い結果が出るようになるかもしれません。ワンメイクレースでBRZは少し苦戦していますので、BRZでも勝てるようにベースとなる車両開発をしていきたいです」と語り、自身が参戦してきたGR86&BRZ CUPでも良い結果が出て、他の人がBRZで参戦してみたいと思えるようにしていきたいとも考えている。

SUPER GTとスーパー耐久。同じドライバーが乗るからこそ見えてくる部分もある。スバルとSTI、メーカーとしてもエンジニアの交流がある。今年SUPER GTでもカーボンニュートラル燃料が使われるようになった。スーパー耐久では昨年から使っていることもあり、技術交流も進みどちらのカテゴリーでも起こりうる課題に向き合っていける部分もある。そのような部分でも共通項が見出される。

どちらのカテゴリーでも速さと安全性を追い求めていくと、次のスバル車に繋がっていくのだろう。もっと良いクルマ作りのゴールはどこにあるのか注目だ。

《雪岡直樹》

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