ノーマル車でも効果あり! サーモスタットの設定温度が燃費改善にもつながる~カスタムHOW TO~

ノーマル車でも効果あり! サーモスタットの設定温度が燃費改善にもつながる~カスタムHOW TO~
ノーマル車でも効果あり! サーモスタットの設定温度が燃費改善にもつながる~カスタムHOW TO~全 2 枚

効果がないとか、ほとんど意味がないなどと言われることもあるローテンプサーモスタットだが、実は重要な役割を持つ冷却系のカナメとなるパーツ。愛車と使い方で薬にも毒にもなるのだ!!

◆何度からラジエーターに冷却水を回すか決めるパーツ

エンジンのライフを保つ上でもっとも重要なのが冷却水の温度。温度が上がりすぎればオーバーヒート状態になる。最近のエンジンではオーバーヒートすると、アルミシリンダー、アルミヘッドなので結構あっさりと歪んでしまうことも多い。そうなると修理するにはエンジンオーバーホールとヘッド面研なども必要になり、エンジンごと交換が一般的。なかなかの出費になってしまう。

かといって温度が低すぎるのも問題。理想的な温度は90~100度くらい。冷却水の温度が低すぎると、燃焼室の温度が低くなり、理想的な燃焼状態にできない。ならばと、それを補正するためにエンジンECUがガソリンをたくさん噴射して、温度をあげようと頑張ってくれてしまう。これが低水温補正と呼ばれるもので、この状態だと燃費が悪くなることがあるし、排気ガスも汚れがち。

そこで重要な役割を持っているのエンジン冷却水のサーモスタットだ。そもそもエンジン冷却水は常にラジエーターを循環しているわけではない。エンジン始動後からウォーターポンプによって圧送されているが、最初はエンジン内部を循環している。ある程度の温度になると、温度によって収縮する金属を使うサーモスタットが開くことで、ラジエーターに冷却水を送って、温度を下げるようになるのだ。このとき重要なのがその温度。サーモスタットは開く温度と全開になる温度が設定されていて、ノーマルの場合88度から開いて、95度で全開になるなどと設定されている。

通常ノーマルのクルマでは必要とされているよりも大きなキャパシティのラジエーターが装備されているので、水温が上がってくるとサーモスタットが開く=ラジエーターに冷却水が流れる=88度を下回る=サーモスタットが閉じる=水温が上がってサーモスタットが開く、ということを繰り返している。つまり水温が何度で安定するかはサーモスタットの設定温度が担っているのである。

ローテンプサーモスタットの解説では、このサーモスタットが開く温度を下げることで、水温が上昇する前に冷却を開始することで、水温が高くなるまでの時間を稼ぐという説明がされている。それは合っているが、それはサーキット走行や、純正の冷却系統のキャパシティの低いクルマでの話。普通のクルマで街乗りや高速道路を走るくらいでは、冷却性能は十分にあるのでサーモが開く=温度が下がって閉じると繰り返しているのだ。つまりローテンプサーモスタットを入れると、その安定温度が下がるということなのだ。

それは良いことなのかというと微妙なところ。先述したように低水温補正が入る温度で安定してしまうと、燃費が悪くなるしエンジンも本来の設計温度よりも低いところで使うことになり、決して望ましい状態ではないのだ。

◆サーキットを走るなら一定の効果はある!!

水温が低いうちから冷却水をラジエーターに回すことで、水温上昇を防ぐのがローテンプサーモスタットの狙い。これに対して「水温が高くなってしまったら効果はない」という指摘があるが、その通り。水温がすでに100度になってしまったら、ローテンプサーモスタットでも、純正サーモスタットでも同じだ。

しかし、この低い温度からラジエーターに回す効果が意外と高い。クルマにもよるが、水温がなかなか上昇しなくなり、サーキット走行の15分や20分くらいは適正温度を保ててしまうことも多いのだ。レースの世界では極端に温度の低いサーモスタットを使ったり、純正サーモスタットを外したり、穴を開けたりしてしまうこともある。それだけでも十分対策になることがあるのだ。

また、ラジエーター交換はそれなりのコストも掛かるし、ラジエーターが大容量で厚みがあるものになれば、たくさんの冷却水を蓄えることになり、エンジンルーム先端が重くなる。意外とハンドリングへの影響も大きいのだ。サーキット走行を楽しむくらいであれば、ローテンプサーモスタットとスポーツクーラントに入れ替えて冷却効率をアップ。クーラント交換時にはしっかりと水路を洗浄してあげて、本来の冷却性能を取り戻せば十分に対応できてしまうことも多いのだ。それでも足りなければラジエーター交換か、穴が空いたボンネットでエンジンルームの熱気とラジエーターからの熱気を抜くのも有効な対策だ。

《加茂新》

加茂新

加茂新|チューニングカーライター チューニング雑誌を編集長含め丸15年製作して独立。その間、乗り継いたチューニングカーは、AE86(現在所有)/180SX/S15/SCP10/86前期/86後期/GR86(現在所有)/ZC33S(現在所有)。自分のカラダやフィーリング、使う用途に合わせてチューニングすることで、もっと乗りやすく楽しくなるカーライフの世界を紹介。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ブリヂストン史上最長、約13万kmの走行保証…新タイヤ「トランザ エバードライブ」米国発売
  2. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  3. BMWの18車種2万台にリコール…火災に至るおそれ
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. アウディ『Q3』新型がシャープなデザインに進化、6月16日デビューへ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る