【復活のランチア】消滅したランチアデザインを誰が、いかにして再構築したのか?

ステランティス欧州部門のデザインを統括するジャン-ピエール・プルーエが、ランチアのデザインを陣頭指揮する。
ステランティス欧州部門のデザインを統括するジャン-ピエール・プルーエが、ランチアのデザインを陣頭指揮する。全 5 枚

2021年にステランティス傘下となったの機に、復活への道を歩み始めたランチア。この老舗ブランドの今後10年に向けたマニフェストとなるのが、4月15日にミラノで発表されたコンセプトカーの『Pu+Ra HPE』だ。

もちろん『Pu+Ra HPE』のデザインそのものも注目だが、ここでは背景にあるステランティスとランチアのデザイン体制をご紹介したい。

◆ステランティスのデザイン体制

2021年1月に旧PSAと旧FCAが合併してステランティスが発足したとき、二人のチーフデザインオフィサーが任命された。クライスラー出身でFCAのグローバル・ヘッドオブデザインだったラルフ・ジルが、北米の旧クライスラー系ブランドと南米向けフィアットを統括。一方、PSAのデザインディレクターとしてプジョー、シトロエン、DSのデザインを束ねていたジャン-ピエール・プルーエが、マセラティを除く欧州系ブランドを統括する。

つまり以前はFCA傘下だったフィアット(南米を除く)、アバルト、アルファロメオ、ランチアのデザインが新たにプルーエの指揮下に加わったわけだ。これら4ブランドとマセラティのデザインは2015年からクライスラー出身のクラウス・ブッセが統括していたが、プルーエ体制になって以後、ブッセはマセラティのヘッドオブデザインに専念している。

プルーエの新体制作りは迅速だった。半年も経たない6月1日付けで、フィアット/アバルトのヘッドオブデザインにルノーからフランソワ・ルボアンを招いた。ルノーで量産車のエクステリアを歴任し、直近では先行スタジオのディレクターとしてEVコンセプトの「ルノー5」などを手掛けたデザイナーだ。

7月1日付け人事では、アレハンドロ・メゾネロ-ロマノスをアルファロメオのヘッドオブデザインに据えた。セアト、ルノー傘下のダチアで活躍してきたスペイン人だ。この人事に際してプルーエは、「ロマノスはクプラ(セアトのプレミアムブランド)で素晴らしい仕事をした」とコメントしている。

◆ランチアはトップが兼任

では、ランチアは? 6月14日にステランティスは、「チーフデザインオフィサーのジャン-ピエール・プルーエがランチアのデザインを個人的に監督する」と発表した。トップが自らランチアを兼任するというのだ。このときプルーエは「ランチアのルネッサンスはまさにエキサイティングな挑戦だ。大きな潜在的な力をテコにして、このアイコニックなブランドを歴史の中央のポジションに戻したい」と意欲を述べていた。

なお、ランチアで公式な肩書を持たない予定だったから「個人的に」という表現にしたと思われるが、今年1月に公開された「New Lancia Renaissance」と題する動画ではプルーエに「Head of Lancia Design」の肩書きが添えられている。次世代ランチアに向けて広報活動していくなかで、やはり肩書きがあったほうが自然ということだろう。


《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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