この3車は軽商用バンだが、成り立ちはすべて異なる。スズキ『スペーシアベース』は、乗用車のスペーシアにかなり近い。インパネや前席の造りはほぼ同じだ。主に車内の後部が異なる。
ホンダ『N-VAN』は、外観は乗用車の『N-BOX』に似ているが、車内の造りは大幅に異なる。軽商用車だから、後席をコンパクトに格納できるのは当然だが、N-VANでは助手席も小さく畳める。またN-BOXと異なり、左側のピラー(柱)をドアに埋め込んだ。左側を前後ともに開くと、開口幅が1580mmに達する。ダイハツ『タント』の1490mmを上回る。
ダイハツ『アトレー』は、純粋な軽商用車として開発された『ハイゼットカーゴ』の上級シリーズだ。エンジンは前席の下に搭載され、荷室長を長く確保した。その代わり、ほかの2車に比べて乗用車感覚は希薄になる。
◆外観デザイン&ボディサイズ比較

軽商用車のため、全長と全幅は3車すべて同じ数値だが、全高は異なる。最も背が高いのはN-VANで、2WDの全高は1945mmだ。次はアトレーの1890mm。最も低いのはスペーシアベースで、上級のXFは1800mmになる。
どの車種もボンネットは短いが、アトレーはエンジンを前席の下に搭載するから、さらに短く抑えた。天井とボディパネルが長く、外観からも車内の広さが想像される。
◆インテリア&居住性比較

商用車は、後席のスペースよりも荷室の面積を広く確保せねばならない。従って軽商用車では、後席はどの車種も狭くなる。
その上で比べると、スペーシアベースの前席は、乗用車感覚が最も強い。インパネに豊富な収納設備が備わり、使い勝手は乗用車と同じだ。その代わり後席はかなり窮屈になる。大人が座るのは難しい。N-VANは助手席もコンパクトに格納できるから、座り心地は硬めになる。インパネの周辺も少しシンプルだ。
アトレーはボンネットが短いため、前席がほかの2車種よりも前寄りに装着され、後輪駆動の採用もあって床が高い。有効室内長が長いから、後席はスペーシアベースやN-VANに比べて足元空間が広く、快適に座れる。
◆荷室などの使い勝手比較

荷室が最も広いのは、もともと軽商用バンとして開発されたアトレーだ。後席を格納した時の荷室長は1820mmに達して、長い荷物も積みやすい。車中泊にも使える。
N-VANの荷室長は左側が1510mm、右側は1330mmだが、助手席を格納した時の床の長さは2635mmに達する。幅が狭く長い荷物を積む時の使い勝手は良い。
スペーシアベースの荷室長は最も短い1205mmだ。その代わり、後席の背もたれを前側に倒すとベンチのように座れて、マルチボードを装着するとテーブルとして使える。リモートワークなどにも活用できる。最大積載量は、スペーシアベースが200kg、N-VANとアトレーは350kgだ。
◆運転のしやすさ比較

運転感覚が一番馴染みやすいのはスペーシアベースだ。最小回転半径も4.4mで小回りの利きも良い。N-VANの最小回転半径は、2WDが4.6mでこれは平均的だ。
そして小回り性能が最も優れているのはアトレーだ、後輪駆動だから前輪の最大切れ角が大きく、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2450mmと短いから、最小回転半径は4.2mに収まる。
◆走行性能&乗り心地比較

スペーシアベースは、走行安定性もスペーシアに近く、自然な印象だ。乗り心地も悪くない。N-VANは、乗り心地が硬めで、全高も1900mmを超えるから重心の高さを意識させる。その代わりターボエンジンが用意され、動力性能の不足を補える。
アトレーも基本設計が商用車だから、乗り心地は硬めだ。ハイゼットカーゴの上級シリーズだから、すべてのグレードがターボエンジンを搭載して、動力性能の不満を感じにくい。
◆燃費性能比較
WLTCモード燃費を2WDで比べると、スペーシアベースは25.8km/Lで最も優れている。N-VANはノーマルエンジンのCVT(無段変速AT)が19.8km/Lで、ターボは18.8km/Lだ。アトレーはターボのみで14.7km/Lになる。
◆おすすめのユーザー
スペーシアベースは、乗用車として使いやすく、後席側の広い車内を生かしてライト感覚のレジャーを楽しみたいユーザーに適する。
N-VANは運転席を残して、助手席と後席を格納させ、車内の大半を平らな空間に変更できる。ワイドに開くスライドドアも含めて、小さな荷物をボディの3方向から積む使い方に適している。助手席と後席を格納して、長い荷物を左側から積む時も便利だ。
アトレーは大容量の荷室が魅力で、大きな荷物も積みやすい。車中泊などにも向いている。