【フィアット ドブロ】ディーゼルの乗用仕様は日本専売…ブランドマネージャー・インタビュー

左からステランティスジャパン代表取締役社長の打越晋さん、同社マーケティング部ブランドマネージャーの熊崎陽子さん、同社マーケティング部フィアットプロダクトマネージャーの阿部琢磨さん
左からステランティスジャパン代表取締役社長の打越晋さん、同社マーケティング部ブランドマネージャーの熊崎陽子さん、同社マーケティング部フィアットプロダクトマネージャーの阿部琢磨さん全 12 枚

ステランティスジャパンはフィアットのミニバン『ドブロ』(2例5人乗りの「ドブロ」と3列7人乗りの「ドブロ・マキシ」)の販売を開始した。ステランティスジャパンではシトロエン『ベルランゴ』やプジョー『リフター』がある中で、なぜドブロを投入したのか。また日本仕様の特徴について話を聞いた。

◆可愛い、楽しい、ハッピー、そしてサスティナブルなフィアット

---:ステランティスジャパンでは、フィアットのほかにシトロエンやフィアットなど、比較的近しいラインナップを持つメーカーがあります。その中でフィアットブランドの位置づけを教えてください。

ステランティスジャパンフィアットブランドマネージャーの熊崎陽子さん(以下敬称略):もともと『ヌオーヴァ500』(1957年デビュー)が出た時から、クルマのサイズを小さくして、排気量も小さくして、値段も安くするなどで、サスティナブルをその時代から意識しているブランドでした。昨年日本で発売した『500e』も、開発時から500の次世代に載せるパワートレインはEV以外に考えられなかった、とオリビエ・フランソワ(ステランティスのグローバル最高マーケティング責任者)がいっているくらいです。ですからフィアットは、ステランティスグループの中でもっともサスティナブルを意識したブランドといえるでしょう。

フィアット・ヌオーヴァ500(1957年~)フィアット・ヌオーヴァ500(1957年~)
フィアット500e(ヌオーヴァ500/500エレットリカ)フィアット500e(ヌオーヴァ500/500エレットリカ)

これは日本での活動も同様です。ティツィアナ・アランプレセ(旧FCAジャパンマーケティング本部長で、現フィアットやアバルト、アルファロメオ等のブランドアンバサダー)がすごく力を入れていたことのひとつに、「Share with FIAT」という活動がありました。これは、女性のエンパワーメント向上、動物愛護、子供たちの教育環境の醸成、紛争や自然災害時の緊急人道支援、そして若者の育成などの社会貢献活動をサポートし、NGOの団体などと協力したりするものです。先日開催されたアースデイ東京2023にもブースを提供しワークショップを開催しました。

こうした活動をしているのはフィアットだけなんですね。そういう活動を広げることでフィアットのオーナー同士がつながったコミュニティができましたし、またその方たちだけでなく、多くの方々にフィアットの考え方、社会に対して取り組んでいることなどを共感してもらい、フィアットブランドがこんなことをやっているから、私もエコの活動をしようなどと思ってほしいし、そういったことが語れるブランドなのです。

そして、フィアットのブランドピラミッドの一番上にあるのは“ジョイ”なんです。喜ぶのジョイ、楽しいのジョイ、エンジョイのジョイ。イタリアンブランドはフィアットとアルファロメオ、アバルトがありますが、その3つの中でアルファロメオは情熱、赤、ロッソ。フィアットはポップ、とにかくポップです。

私がフィアットのチームに入って1~2か月くらいで見出したキーワードは、可愛い、楽しい、ハッピーの3つです。この3つのキーワードが常に頭にあります。ですからいろいろなキャンペーンでも、その絵を見たときに可愛いと思ってほしいし、ぱっと見たときにすごく幸せな気分なってほしい。そういったことをフィアットから感じていただきたいし、伝えていきたい。それができるのがフィアットブランドなんです。

◆イタリアンミニバンだから

---:では今度はクルマに関してですが、シトロエン・ベルランゴと、プジョー・リフターという兄弟車がある中で、ステランティスジャパンとしてあえてドブロを投入する意味はどういうものでしょう。

熊崎:まずフィアットブランドの中でドブロがどういう意味を成すかという視点で考えると、間違いなく新しいチャンスなんです。新しいお客様を取り込めると思います。また、既にフィアットのオーナーやファンの方からすると、ちょっとSUV的なクルマが欲しいと思ったらこれまでは『500X』しかなかったのです。そこにドブロが入ってくることで選択肢が広がるというのが、フィアットブランドの視点から考えた時のドブロの位置づけですね。

フィアット 500X の2023年モデルフィアット 500X の2023年モデル

また、フィアットのブランドピラミッドの中に“ファミリー・フレンドリー”というキーワードがあるのですが、一番ファミリーにマッチするミニバンが日本市場になかったのです。ドブロを導入することでそのミニバンも加わって、フィアットファミリーとして完璧に近い形になれたんじゃないかと考えています。

フィアット ドブロフィアット ドブロ

そしてステランティスジャパンとして考えた時にどうかといったら、シトロエンは人をベースにしていつもクルマ作りをしている、“コンフォート”がキーワードのブランドです。ですからベルランゴはすごくフレンドリーなんですね。プジョー・リフターはすごく精悍な顔立ちや、i-コックピットといった先進のテクノロジーを持つイメージがあります。確かにベースは同じクルマなのですが、フィアット・ドブロは、なるべく装備を削ってお求めやすい戦略的な価格設定にしながらも、イタリアンの雰囲気をもたせるようにフィアットらしい顔になっていますから、フィアットファミリーのクルマに仕立てられています。イタリアンなクルマが欲しいなと思っている人に、「イタリアのミニバンあった!」と見つけてもらいたいですね。

シトロエン・ベルランゴシトロエン・ベルランゴプジョー・リフタープジョー・リフター

繰り返しになりますが、ステランティスジャパンの立場からしても、フィアットブランドの立場からしても、やはり新モデルを導入するというのは、新しいオーディエンスにリーチするチャンスです。イタリアのクルマがいい、フィアットがいいと思っていてもミニバンがないから500Xにしよう、もしくはミニバンは国産の別のモデルでいいと思っていたけれど、フィアットにも出てきたからこっちがいいみたいな人もいるのかなと思っています。

---:では、そのターゲットユーザーはどういう人たちなのでしょう。

熊崎:基本的には、マルチパーパスビークルなので色々なターゲットがいると思っていますが、デビューキャンペーンでは、子供がいないカップルです。もちろん家族でも使えるし、友達同士でも使えるし、大人2人でたくさんの荷物、それこそベンチだったり、テントみたいなものを積んで週末にちょっと日帰りで楽しんだりするようなシーンにもぴったりです。それからサーフボードを載せたり、自転車を積んでサイクリングに行ったり、そういうスローライフを楽しんでいるような人を設定して開発したコミュニケーションが、“ジブン時間を、楽しみこなそう”というキャッチコピーに繋がるのです。

ただし、実際にドフロのポジショニングはマルチパーパスビークルですから、例えばお花屋さんを経営している女性オーナーがお仕事グルマとして使ってもいいだろうし、家族が使ってもいいだろうということになってきますので、今後フォローアップとしていろんなペルソナを設定したコミュニケーションを展開していく予定です。

---:そこで外せない層はどういう人ですか

熊崎:40代、50代の男女カップルです。

◆日本独自の仕様

---:ドブロを日本に導入するにあたり、本国側に色々な要望を出しているかと思いますが、具体的にはどういったことがありましたか。

ステランティスジャパンマーケティング部フィアットプロダクトマネージャーの阿部琢磨さん(以下敬称略):ドブロの本国の乗用車バージョンは『eドブロ』、つまり電気自動車に移行してしまっていて、ディーゼルのラインナップがなく、内燃機関は商用車にラインナップされている状況なのです。そこで日本としては乗用車として使える仕様をディーゼルエンジンで作ってもらえるようにしました。つまり本国にはない仕様となっています。

---:因みに作っている工場はどちらでしょう。

阿部:スペインのヴィゴ工場です。もともとPSAの工場で、ベルランゴやリフターも作っています。今回はその同じ工場で同じコンポーネントを流用して作るというのがポイントかなと思います。

---:デザイン以外でベルランゴ、リフターとの違いはありますか。

阿部:ベルランゴはファミリー向けに装備も便利なものを色々つけて、解放感のある大きなグラスルーフを付けた仕様です。ドブロは趣味に使いたい、もっと多人数乗車で使いたい、もっと荷物をいっぱい載せたいというニーズがある方に向けてお勧めしたいと思っています。そういう方にとって、大きなグラスルーフは、ルーフレールを使って上に荷物を載せたらあまり意味がない。

このように兄弟車には装備で過剰な部分がありますので、ドブロを本当に使い倒したいお客様にとって必要な装備はなんだろうとよく考えていきました。ですからモジュトップも今回は外しています。ただ、運転席頭上の小物入れははあった方が便利じゃないかと。このドブロをどういったお客様にどのように使っていただきたいのかを踏まえて必要な装備をピックアップしています。

---:モジュトップをつけなかったのですね。

シトロエン・ベルランゴシトロエン・ベルランゴ

熊崎:もちろん価格を抑えることもあるのですが、それ以上に、ベルランゴを発表した時にお客様に結構聞かれたのがこのモジュトップって外せないのかということでした。その理由は自転車を積む時にそこに当たってしまうからです。そこでこれがなければそのまま載せられるのに、例えばハンドルを外さないと載せられないという声を結構聞いたので、そういう方には響くかなと考えています。

---:そのぶん、自分にとって必要な工夫ができるのかもしれませんね。

熊崎:確かに、DIY的に使い勝手の良い工夫が見られるようになるかもしれませんね。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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