【N-BOX vs スペーシア 比較】N-BOXはなぜ昨年度最も売れたのか…ライバルとじっくり比べる

N-BOXvsスペーシア
N-BOXvsスペーシア全 30 枚

2022年度の販売台数が20万台超と圧倒的な強さを誇るホンダN-BOX』。その強さの秘密を探るためにライバルモデルとの比較を行った。第3弾はスズキスペーシア』との比較をお届けする。

◆比較する車種のプロフィール、車格

ホンダ N-BOX(FF) 全高1790mm/最低地上高145mm/ホイールベース2520mmホンダ N-BOX(FF) 全高1790mm/最低地上高145mm/ホイールベース2520mm
スズキ スペーシア 全高1785mm/最低地上高150mm/ホイールベース2460mmスズキ スペーシア 全高1785mm/最低地上高150mm/ホイールベース2460mm

ボディサイズは軽自動車規格に収まるものなので、両車ともに全長は3995mm、全幅は1475mmとなる。
全高はN-BOXのFFが1790mm、4WDが1815mm、タントは駆動方式に関係なく1785mm。つまり、FFで比べるスペーシアはN-BOXに比べて5mm車高が低く、4WDの場合は30mm低いということになる。

N-BOXの最低地上高は駆動方式に関係なく145mm、スペーシアも駆動方式に関係なく150mmとなる。ホイールベースはN-BOXが2520mm、スペーシアが2460mmで、N-BOXのほうがオーバーハング成分が少ないことがわかる。

ホンダ N-BOX 室内長が長い分、足元に余裕がある印象ホンダ N-BOX 室内長が長い分、足元に余裕がある印象スズキ スペーシア こちらは室内高が高い分、天井に余裕がある印象だスズキ スペーシア こちらは室内高が高い分、天井に余裕がある印象だ

続いて室内寸法を見ていく。室内長はN-BOXが2240mm(スロープ仕様をのぞく)、スペーシアが2155mm。室内幅はN-BOXが1350mm、スペーシアが1345mm。室内高はN-BOXが1400mm、スペーシアは1410mm。室内長は圧倒的にN-BOXが長く、室内高は全高が低いにもかかわらずスペーシアが高い。

◆パワーユニット比較

パワーユニットはどちらも3気筒。詳細な排気量はN-BOX、タントともに658cc。N-BOX用のS07B型のボア×ストロークは60.0×77.6mm、スペーシア用R06A型は64.0×68.2mmで、N-BOX用S07Bエンジンのほうがロングストロークディメンションだ。N-BOXには自然吸気仕様、ターボ仕様が存在。スペーシアは自然吸気のみ、スポーティモデルのスペーシアカスタムには自然吸気とターボ仕様がある。

それぞれスペックは下記を参考にしてもらいたい。なお、スペーシアはエンジンを単体使用するのではなく自然吸気、ターボともに3.1馬力/50Nmのモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドとしている。

N-BOX用S07B型自然吸気最高出力:58ps/7300rpm最大トルク:65Nm/4800rpm
N-BOX用S07B型ターボ最高出力:64ps/6000rpm最大トルク:104Nm/2600rpm
スペーシア、スペーシアカスタム用R06A型自然吸気最高出力:52ps/6500rpm最大トルク:60Nm/4000rpm
スペーシアカスタム用R06A型ターボ最高出力:64ps/6000rpm最大トルク:98Nm/3600rpm

N-BOXのほうが自然吸気、ターボともにトルク値が大きい。また自然吸気の出力もN-BOXが高く、回転数も上まで使えていることがわかる。駆動方式はどちらもFFとビスカスカップリングを用いた4WD方式を採用。ミッションはいずれもCVTで、N-BOXターボとスペーシアカスタムターボがマニュアルモード付き(つまり、いずれもターボ車はマニュアルモード付き)となる。

FF車のWLTC燃費は以下のとおり

N-BOX自然吸気:21.2km/L
N-BOXターボ:20.2km/L
スペーシア、スペーシアカスタム自然吸気:21.2km/L
スペーシアカスタムターボ:19.8km/L

◆足回り比較

ホンダ N-BOXホンダ N-BOXスズキ スペーシアスズキ スペーシア

N-BOXのサスペンションはフロントがストラットでFFリヤがトーションビーム、4WDはドディオン。スペーシアはフロントがストラット、FFリヤがトーションビームで、4WDはアイソレーテッドトレーリングリンクとなる。アイソレーテッドトレーリングリンクというのはスズキが用いている呼び名で、一般的な区分としては3リンク式に属する。

◆グレード比較

ホンダ N-BOXホンダ N-BOX

N-BOXはホンダNシリーズの基本型で、ここからN-WGN、N-ONE、N-VANが展開されるモデルでもある。N-BOXはグレードバリエーションも豊富で、基本的な部分で分類しても、基本となるベンチシート仕様、助手席が大きくスライドするスーパースライドシート仕様、そして介護に使うこともできるリヤにスロープを備えたスロープ仕様の3タイプがある。スロープ仕様も型式認定を受けているので、持ち込み届出の必要はなく通常の手続きでナンバーが取得できる。

標準タイプのN-BOX、スポーティな内外装や充実した装備が施されたN-BOXカスタムの2つの基本ラインがある。N-BOXのベンチシート仕様とスロープ仕様は上級のLとベーシックのGの2グレードで、Gは自然吸気のみ、Lは自然吸気とターボ。スーパースライドシートはEXのモノグレードで自然吸気とターボを設定。N-BOXカスタムのベンチシート仕様はLのみのモノグレードで自然吸気とターボを設定。スーパースライドシートはEXのモノグレードで自然吸気とターボを設定。スロープ仕様はLのみのモノグレードで自然吸気のみとなる。

N-BOXはユーティリティ性を最重視するスーパーハイトワゴンという部類に属する軽1ボックスである。そのためラゲッジルームについては、かなり重要視した設計が行われている。N-BOXはホンダが得意とするセンタータンクレイアウトというパッケージングを採用。燃料タンクはフロントシート下に配置となる。

ホンダ N-BOX ラゲッジスペースホンダ N-BOX ラゲッジスペース

スロープ仕様をのぞくFFモデル後席使用時のラゲッジ長は44~63cm、後席折りたたみ時の最大ラゲッジ長は153.5cm、開口部の地上高は47cm、開口部の高さは120.5cmで一般的な26インチの自転車を楽に搭載することができる。またセンタータンクレイアウトならではの機構として、リヤシートのクッションをチップアップし、リヤシート部に植木などの背の高い荷物を置くことが可能となっている。

スペーシアはダイハツのタントに対向するために開発されたパレットというモデルからのモデルチェンジ版である。パレットは2008年に登場、2013年にフルモデルチェンジを受けて車名をスペーシアに変更している。公式にはそうした情報とはなっていないが、スペーシアとパレットは入れ替わる形となっているので、そのように分析して問題ないだろうし、関係者の多くもそういう発言を行っている。

スズキ スペーシアスズキ スペーシア

現行のスペーシアは2017年にフルモデルチェンジした2代目である。スペーシアは2014年にフルモデルチェンジされたアルトから使われているHEARTECTと呼ばれるプラットフォームを用いたモデル。スペーシアの名を持つモデルは本項で扱っているスペーシア、スペーシアカスタムのほかにスペーシアギアというモデルも存在する。スペーシアギアはスペーシアをベースに開発された軽貨物車(軽商用車)で、いわばN-VANの対抗モデルである。

スペーシアは標準タイプであるスペーシアと、スポーティタイプのスペーシアカスタムの2つに大別される。スペーシアは自然吸気エンジンのみの設定で、上級のハイブリッドXと標準のハイブリッドGの2グレード設定。ただし、ハイブリッドGには衝突安全装備を省いたその名も「スズキセーフティサポート非装着車」という廉価モデルが存在する。スペーシアカスタムはターボエンジンを搭載するハイブリッドXSターボ、自然吸気エンジンの上級グレードXS、自然吸気エンジン標準グレードのGS、の計3グレード展開。スペーシアカスタムには「スズキセーフティサポート非装着車」は設定されない。

スズキ スペーシア ラゲッジスペーススズキ スペーシア ラゲッジスペース

かつてのパレットという車名がスーパーハイトワゴンを連想させず、スペーシアと改名されたという経緯もあるというだけに、スペーシアはユーティリティ性能を重視したモデルとなっている。リヤハッチ開放時のフロア高は510mm、開口部のラゲッジ高は1150mm、開口幅は1130mmとなっている。スーパーハイトワゴンは自転車を搭載するこも多いとのことで、自転車を乗せやすいように開口部に凹加工を施すといった工夫も行われている。

ドア配置は前後左右がヒンジ式ドア、リヤ両サイドがスライド式ドアで、スライドドア開放時の幅は600mm、高さは1250mmとなる。リヤシートは前後独立してスライド&ダイブダウンによる前倒しが可能。フロントシートバックの前倒しによる長尺物の搭載もできる。助手席のクッション下にはアンダーボックスが用意されるのは、もはやスズキ車の決まりごとでもある。スペーシアの福祉車両はスロープ式の車いす仕様車で、ハイブリッドXのリヤシート付き仕様、ハイブリッドGのリヤシート付き仕様、ハイブリッドGのリヤシート無し仕様が用意される。福祉車両はいずれも持ち込み届出となる。

◆運転のしやすさ、快適性比較

どちらも軽快な走りを披露する2台だが、N-BOXのほうがシャンとしたハンドリングを示す。エンジン出力だけをみるとN-BOXが高いのだが、スペーシアは小さいながらもモーターによるアシストを受けている。スペーシアのマイルドハイブリッドは基本的に発進時に働くものだが、パワーモードを選ぶと中間加速時のパワフルさも増す。もともと出力が低い軽自動車なのでこのモーターアシストがあるのとないのは、体感的にある程度の大きさとなって感じるものだ。

スペーシアのエンジンはハイブリッド式であり、再始動時はノイズなく発進出来るスペーシアのエンジンはハイブリッド式であり、再始動時はノイズなく発進出来る

また、スペーシアはアイドリングストップからの再始動にこのハイブリッドシステムを生かしているため、セルモーターを使用するN-BOXに比べて再始動時のノイズが格段に静かなのもいい部分である。アイドリングストップ時にはエアコンのコンプレッサーも停止するため、真夏などは生ぬるい風が吹き出すものだが、スペーシアはエコクールといって、アイドリングストップ時には蓄冷剤を使って一定時間の冷風を確保しているところも快適性が高い部分である。

NAモデルでも軽快な吹け上がりを見せるN-BOXは、ターボモデルでさらにトルクフルにNAモデルでも軽快な吹け上がりを見せるN-BOXは、ターボモデルでさらにトルクフルに

N-BOXは全車に先進安全機構を標準装備するが、スペーシアはハイブリッドGに非装着車を用意する。走りのポテンシャルに関してはどちらも遜色がないが、N-BOXのほうがスッキリとしていてスポーティな印象を持っている。ターボモデルであれば、どちらも十分にトルクフルだが、N-BOXは自然吸気エンジンでも軽快な吹け上がりを生かしてスポーティに走れてしまう印象。

N-BOXはACCやレーンキープアシストが標準で装備されるが、タントはオプションでLグレードにはオプション設定もない。いわゆる自動ブレーキなどの安全機構についてはN-BOX、タントともに全グレードで標準装備である。また、スペーシアはACC(アダプティブクルーズコントロール)が全車標準ではなく、ハイブリッドXにオプション、ハイブリッドGには装着不可。スペーシアカスタムはACCが標準装備である。

◆価格比較

価格はN-BOXのFFが146万8500~215万4900円。4WDは160万1600~228万8000円で、4WDはFFに比べて13万3100円高い設定。

スペーシアはFFが139万4800~153万3400円、4WDが151万8000~165万6600円。スペーシアカスタムはターボFFが188万3200円、ターボ4WDが200万6400円。自然吸気はFFが166万3200~188万1700円、4WDが178万6400~193万4900円。タントの4WDはFFに比べて12万3200円高という設定。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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