【ヤマハ NMAX 試乗】ただ目的地に着くためだけのスクーターではない…伊丹孝裕

ヤマハ NMAX
ヤマハ NMAX全 24 枚

2016年に導入され、その後、2021年に刷新されたヤマハの125cc(原付二種)スクーターが『NMAX』(エヌマックス)である。利便性と質感の高さがバランスした人気モデルに、あらためて試乗してみた。

ヤマハの上級125ccスクーター『NMAX』

現在、ヤマハは125ccクラスに5機種を展開している。価格の安い順に並べると『ジョグ125』(25万5200円)、『アクシスZ』(27万1700円)、『シグナスグリファス』(37万4000円)、「NMAX」(37万9500円)、『トリシティ125』(49万5000円)となり、フロント2輪の特殊構造で他とは一線を画すトリシティ125を除けば、NMAXはプレミアムな存在となる。

◆かっちりとした足まわりが気持ちいい

ヤマハ NMAXヤマハ NMAX

他のモデルと決定的に異なるのは、足をそろえて乗車するフラットフロア構造ではなく、車体中央にフレームを配するセンタートンネル構造を採用している点だ。そのメリットは剛性が確保しやすいこと、燃料タンクや補器類の配置に自由度が増すこと、ニーグリップの体勢が取りやすいことなどが挙げられ、よりスポーティな乗り味を実現している。

実際、その走りは力強い。前後13インチホイールと1340mmのホイールベースの組み合わせは安定性に優れ、明確な接地感をともないながら進んでいく。サスペンションがギャップをいなす時の手応えは硬質と表現でき、路面からの突き上げを「タンッ」とすぐさま減衰。余韻を引きずらない、かっちりとした足まわりが気持ちいい。

◆スポーツバイクさながらの感覚でコーナリングを

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ハンドリングもそれに見合うもので、優れたライントレース性が印象的だ。タウンユースありきのスクーターの場合、コーナーではよく言えば俊敏、悪く言えば軽薄な動きを示しがちだが、NMAXは一定のバンク角を維持しながら、きれいな弧を描くように旋回。センタートンネルのおかげで足は踏ん張りやすく、スポーツバイクさながらの感覚でコーナリングを楽しむことができる。

中でも心地いいのは、コーナーからコーナーへと切り返す時のリズムだ。深くバンクした車体を起こし、反対側へ大きく傾ける時のレスポンスが一般的なスクーターよりも断然ダイレクトで、それを意図的に早めたとしても頑強な車体は遅れることなく追従。足をフロアボードの真ん中に置けば、タイトなコーナーをさばきやすく、前に投げ出すような姿勢を取れば、ゆったり流すことを許容するなど、ポジションの自由度も高い。

モデルチェンジの際、フレームのメインパイプとダウンチューブにそれぞれ補強が施されたことと、軽量化されたホイールの効果は明らかであり、そうした情報を知らずとも安心感の高さを体感できるに違いない。高荷重に備える時は、リヤショックのプリロードを工具なしで簡単に強められるなど、機能性も光る。

◆早朝や夜間でも静かな発進が可能に

ヤマハ NMAXヤマハ NMAX

エンジンはどうか。カムのリフト量が低速と高速で切り替わるVVA機構(可変バルブ)や軽量鍛造ピストンなどは先代から踏襲しつつ、環境性能へ向上。また、最大トルクの発生回転数を下げる(1.2kgf・m/7250rpm → 1.1kgf・m/6000rpm)など、実用面での強化が図られた他、トラクションコントロールやアイドリングストップシステムの新採用がトピックとなる。

そしてもうひとつ、意外とありがたいのが「スマートモータージェネレータシステム」と呼ばれるエンジンのスタータ機構だ。これは、エンジン始動時に発するモーターのキュルキュル音をなくしたシステムで、早朝や夜間でも静かな発進が可能になった。もちろん、アイドリング音はするわけだが、これを一度体感するとモーター音がいかに大きかったのかがよく分かる。

ヤマハ NMAXヤマハ NMAX

走り出してからのアイドリングストップ、そこから再スタートする際の振る舞いもよく作り込まれ、スロットルのわずかな開度にすぐさまスタータが反応。タイムラグはまったくなく、ハンドルに備えられたスイッチを押せば、これをキャンセルすることもできる。

最高出力は12ps/8000rpmを発揮し、131kgの車体を力強く増速させていく。大きく開け足しても振動はきちんと抑えられ、上質さを保ったまま、急勾配もなんなくクリアすることができる。

走行中、唯一気になったのは、ABSの精度だ。前後にディスクブレーキを備え、それぞれ独立したABSが機能するのは高評価ながら、その作動音とキックバックはかなり大きい。もしもの時にきちんとブレーキレバーを握っていられるよう、オーナーになったら一度安全な場所で効き具合を試しておくことをおすすめする。

◆スクーターとしては見逃せない利便性は

ヤマハ NMAXヤマハ NMAX

さて、車体やエンジンのこうしたアップデートもさることながら、スクーターとしては、やはり利便性は見逃せないところ。そのあたりも抜かりなく、スマートキー、12VのDCジャック、視認性に優れるフル液晶ディスプレイ、小物を入れられる収納スペース、LEDヘッドライトといったアイテムを標準装備する。

シート下の収納スペースが、先代モデルより1リットルほど小さくなっている点だけがマイナスポイントながら、約23リットルの容量はあるため、及第点と評価していいだろう。

この他には、専用アプリを介してスマートフォンと連動し、その画面に様々な情報の表示が可能になる「ヤマハモーターサイクルコネクト」を搭載(※2023年8月22日から発売が始まる2023年モデルには非搭載)。エンターテイメント性の充実も図られているのが、NMAXだ。ただ目的地に着くのではなく、その時間をより上質で、より快適なものに換えてくれる存在である。

ヤマハ NMAXと伊丹孝裕氏ヤマハ NMAXと伊丹孝裕氏

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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