【ホンダ N-BOX 新型】デザイン初公開、開発責任者「日本一売れているクルマ。大きく変えてはいけない」

ホンダ N-BOX
ホンダ N-BOX全 11 枚

ホンダは軽スーパーハイトワゴンの『N-BOX』を2023年秋にフルモデルチェンジすることを発表し、報道陣向けにコンセプトとデザインについて説明。開発責任者に新型の開発のポイントやこだわりなどについて話を聞いた。

本田技研工業四輪事業本部四輪開発センターLPL室LPLチーフエンジニアの諌山博之さん本田技研工業四輪事業本部四輪開発センターLPL室LPLチーフエンジニアの諌山博之さん

◆同じベクトルに向かえたことが大きい

---:N-BOXは軽スーパーハイトワゴン市場で30%超の高いシェアを維持し、2年連続で登録車を含む新車販売台数第1位、8年連続軽4輪車販売台数第1位という大ヒットとなりました。そのモデルチェンジを担当することが決まった時、どのように思いましたか。

本田技研工業四輪事業本部四輪開発センターLPL室LPLチーフエンジニアの諌山博之さん(以下敬称略):確かにN-BOXは日本で一番売れているクルマですから、最初はどうしたらいいんだろうという気持ちはありました。でも色々調べていくうちに、やることは結構シンプルで、変えられないところが多いということがわかったんです。例えば軽という枠が決まっていますし、さらには大きく変えてはいけないクルマなんだというのもわかってきました。ですから逆にこういった縛りがある中で何ができるのかを考えていきましたので、やること自体はシンプルだったことは確かですね。

ホンダ N-BOXホンダ N-BOX

一方で厳しかったところは、クルマを開発するうえでのお金の面はやはり大変でした。軽ですから、よりコストが厳しい。そういうところで苦しんだことは正直ありますけれども、開発メンバーがそこを理解してくれて、そうだよねと同じベクトルになったので、それ以降は守るべきところであるコア価値、例えばパッケージは守らなければいけないといったら、みんな必死に守ってくれました。そのうえで法規なども守り、それをクリアしながら少しでも良い方向にしようとしています。パッケージでいえば外寸等は軽枠を守りながらも、逆に広くしたところもあるくらいです。そういうことをやってくれた開発メンバーがいたからこそ、一緒に苦労しながらも楽しんでやれたのかなと、いまは思います。苦しみはありましたけども(笑)。

◆N-BOXだとわからせること

---:では諌山さんがこの新型で絶対に実現しなければいけないことはありましたか。

諌山:まず守らなければいけないところでいうと一目でN-BOXだとわかるスタイルは壊してはいけない。これは初代、2代目と続いて、いま日本中で売れてるN-BOXですから、新しくなってもパッと見てN-BOXだとわからないとダメなんです。

では、それは何かというと、一目で遠くから見てもN-BOXが走っているとわかる骨格や、ベルトライン(サイドウインドウの下端のライン)を中心に上と下との比率がいわゆる黄金比なんです。ですからそれは変えてはいけない。試しにガラス部分を下げてみたらN-BOXじゃなくなるんです。そういった守るべきところをきちんと見ながら開発していきました。

ホンダ N-BOXホンダ N-BOX

---:先代や2代目N-BOXのオーナーの話も聞いているかと思います。その中で、ここは直してほしいという意見はありましたか。

諌山:ひとつは小柄な女性から2代目のアウトホイールメーター、ステアリングより上にメーターが見えるタイプの話がありました。我々は運転席に座った時に視線移動が少なくていいよねということで採用したのですが、多くの方に乗っていただく中で、小柄な方ですとちょっと前が見難いよねという話が出たのです。そこでフラットインパネにして、まずはステアリングの中からメーターを見やすくする。もちろんただ位置を下げただけではなく、液晶TFTを採用することでより見やすくしていますし、メーター内のレイアウトも一番上にスピードメーターの80km/hなどの数字が出るようにしています。そうすることで前方に向けている視線を動かさなくてもパッとなんとなく視線の下の方に数字が出ているのが見えるでしょう。

ホンダ N-BOXホンダ N-BOX

あとはインパネ周りでは収納があちらこちらにあったんですが、そのひとつひとつが何に使っていいのかわからないぐらい小さいものがちょこちょこあったんです。そこでアシスト側にあるカップホルダーの位置や使いやすさを見ながら、インパネ全体で収納とカップホルターの位置をかなり良くしています。

ホンダ N-BOXホンダ N-BOX

エクステリアでは使い勝手の面でひとつあります。それはテールゲートハンドルの位置です。N-BOXは自転車の積み下ろしをしやすくするために、テールゲートは結構下の方まで開くようにしています。そうした場合、テールゲートハンドルの位置とテールゲートの下端の位置が離れてしまう(テールゲートハンドルがよりリアウインドウ側に近づく)と、開けるときに下端が自分にぶつかってくるんです。そこでテールゲートハンドルの位置を70mm下げました(ナンバープレート上部)ので、自分に当たりにくくなっています。これも手の長い人だとあまり気にならないですけど、お客様の声を聞きながら良くしていっています。

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◆レーダーチャートを満遍なく大きくして

---:つまり基本的にはキープコンセプトで、ユーザーの声を反映させていったということですね。そのうえでさらに使いやすくとか、広くするなどを考えていったのでしょうか。

諌山:室内を広くするのもひとつの要素です。ただ、レーダーチャートを描くと、いくつもの項目が上がりますよね。その中には例えば安全性があります。今回ホンダセンシングのカメラの性能向上や、バンパーに付いているセンサー類を追加するなどで安全性を向上させました。デザインも当然良くしていますし、パッケージもそうです。

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そして今回はパワートレインや足回り、技術的な話はしていませんが、そういうところでは、走りの“雑味”を消しています。N-BOXをファーストカーとして使っていただいているお客様が実は増えているんですね。そうするとやはり長距離移動を楽にしたい。そこで静粛性向上や足回りの向上などを行うことで、より快適に長距離が走れるようになっています。

◆ママさんのリズムを大切に

---:新型N-BOXのグランドコンセプトは“ハッピーリズムボックス”です。なぜリズムなのですか。

諌山:実をいうと今回、ママさんというコアターゲットは変わっていないんです。2代目ではママさんがとにかく使いやすいようにということで開発してきました。そして、ママさんの声を聞くと、当然子供や家族のためにクルマに乗ることもあるけれど、自分の趣味などでも使いたいというママさんがかなりいることがわかりました。家族と自分のためという2つですね。

そこで一日の中で例えば子供の送り迎えの間や、ご飯を食べさせたりとかの合間に、自分の趣味、例えば習いごとや友人や地域の仲間と何かやるとかを、その日一日の中でリズミカルにこなせるようなクルマにしたいと思ったのです。ですから幸せ、ハッピーという言葉と、リズムと組み合わせてハッピーリズムボックスとしました。

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---:先代ではダウンサイザーが多いということも伺っています。そうするとダウンサイザーの方たちはママさんよりも年齢は上の層になると思うのですが、いかがですか。

諌山:まずはママさんをきちんとやらなきゃいけない。そうすると当然、ママさんが使いやすいクルマになるわけですよね。ママさんという1日の中のたくさんのタスクをやらなければいけない方にとって使いやすいクルマになる。そうすると、誰でも使いやすいクルマになるだろうと考えています。それは2代目の開発時点でだいたいわかっているんです。それを新型ではよりママさんが使いやすくなれば、他の人も乗りやすい、使いやすいクルマになるはずだと開発していったのです。

その上で、ママさんは基本毎日の動きが多いんですけれど、長距離運転を楽にというのも含めていますので、そこはダウンサイザーの方達がこれをファーストカーとして使ってもらえるように仕込んでいるわけです。つまりママさんがコアターゲットですが、20代の女性、それから50代、60代の方達が乗っても、より快適になるように仕上げています。ですから、総合力の底上げをしたということなのです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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