三菱『eKクロスEV』で往復500km、身をもって体感した一般道と高速道路の充電事情

三菱『eKクロスEV』で往復500km、身をもって体感した一般道と高速道路の充電事情
三菱『eKクロスEV』で往復500km、身をもって体感した一般道と高速道路の充電事情全 10 枚

2023年7月22日、23日の2日間、長野県白馬村にて開催された「第10回ジャパンEVラリー白馬2023」に三菱の軽EV『ekクロスEV』で参加した。東京から白馬までは片道およそ250km。往復で500kmの行程だ。航続距離180kmの軽EVでいかにして長距離移動をおこなったか。

eKクロスEVの性能、そして身をもって体感した一般道と高速道路の充電事情についてレポートする。

◆最初の充電から早くも予想外の事態に?

筆者は昨年のEVラリーにもekクロスEVで参加している。その際、往路は高速道路、復路は一般道という選択をした。東京から白馬に行く場合、往路は登り勾配、復路は下り勾配となる。つまり昨年は登り勾配を高速道路、下り勾配を一般道で試したので、今年はその逆を試そうというわけだ。

東京をバッテリー残量89%、走行可能距離134kmでスタート。まずは埼玉県本庄市あたりを目指す。本庄市を選んだのはグーグルマップでルート検索をした際に、急速充電器が多く見られたから。急速充電器は誰かが使っていると使えないこともあり、それを避けるために複数の急速充電器がある地域を目標とするのはいい方法なのである。車載ナビをみながら本庄市に近づくと、まずは「道の駅おかべ」に急速充電器を発見。ルート上の比較的手前にあり、まずはここに行ってみて誰もいないようなら、最初の充電を済まそうと考えた。しかし、これが大きなミスであった。

「道の駅おかべ」での充電は出力が低く、期待外れだった「道の駅おかべ」での充電は出力が低く、期待外れだった

「道の駅おかべ」で30分充電を行うも、バッテリー残量は22%→45%、走行可能距離は35km→64kmにしか上がらない。これは期待はずれである。どうやら「道の駅おかべ」の充電器は出力が低いらしい。そこですぐ近くにある日産系ディーラーの「プリンス本庄」を目指す。ディーラーの充電器ならばさほど出力が低いことはないはず。

ekクロスEVは充電の最大受入出力が30kWなので、それ以上の高性能充電器で充電しても充電時間には差は生まれない。「プリンス本庄」では30分の充電で残量が40%→86%、走行可能距離が58km→137kmにアップした。「道の駅おかべ」での残量アップが23%であったのに対しプリンス本庄では2倍の46%アップとなっている。急速充電器の出力性能はやはり重要である。

◆かつてそこにあったはずの充電器が…

あったはずの充電器がすでになく、一般道での充電をあきらめて横川SAへあったはずの充電器がすでになく、一般道での充電をあきらめて横川SAへ

本庄を後にして一路、白馬を目指す。国道17号線から国道18号線に入り、最大の難所である碓氷バイパスを越えればあとは楽々と白馬まで行けるはずだ。幸い、碓氷バイパスの手前のローソンには急速充電器があると車載ナビが教えてくれている。充電せずとも到着できそうではあるが、峠の途中で電欠したら元も子もない。ここは大事を取ってローソンで一度充電してから碓氷バイパスを越えようという作戦である。

しかし、ここで悲劇が待っていた。碓氷バイパス手前のローソンに充電器がないのだ。充電器の痕跡はあるので、どうやら撤去されてしまっているらしい。ここから頂上までおよそ20km、バッテリー残量は40%で走行可能距離は54km。たんなる試乗であればチャレンジするところだが、このekクロスEVはEVラリーの試乗会イベントで使用するクルマなので、確実に白馬に到着しなければならない。碓氷バイパス越えはあきらめてUターン。松井田妙義インターから上信越道に乗り、横川SAでの急速充電となった。

◆復路は下り勾配の高速道路を選択

白馬村内にはいろいろと絵になる場所が多数。こちらではスマホで撮影していた女性2名もいた白馬村内にはいろいろと絵になる場所が多数。こちらではスマホで撮影していた女性2名もいた

この後、上田市で一泊。急速充電をして白馬村に向かい、EVラリーに参加。最終日には村内を巡るパレードなどをこなしたうえで、白馬を後にして復路は高速道路主体で都内へと向かった。白馬から東京は下り勾配となるため、出発時に充電が満タンならば1回の充電で帰京が可能なのだが、パレードなどを行いある程度充電量が減っていたため、2回の充電は必須となりそうであった。

帰京日は日曜日、それも午後だからある程度の渋滞もあるだろう。走っているクルマが多ければ、そのなかでの電気自動車も多い、ということは急速充電器の利用者も多くなるわけだ。そうなると、いかに効率よく充電器を確保できるか? は大きなポイントとなる。高速道路の充電器は30kW未満ということはないだろうから、最初の充電はとにかく空いているところである。

白馬から東京に向かうには関越道か中央道かのどちらかだ。筆者は関越道を選んだ。まずは長野道の更埴インターで高速道路に入る。最初の充電スポットは上信越道の東部湯の丸SA。できれば、この先で充電したかったのだが、残量を考えると難しい。たとえ充電待ちが生じたとしても、ここで入れる、もしくは高速道路を下りて充電スポットを探すという選択しかない。運良く東部湯の丸SAで充電が可能となったが、充電して5分後に1台、20分後にはもう1台のEVが並んだ。これは運がいいとしかいいようがない。

東部湯の丸SAでは残量88%、129kmにまで復活した。

◆上里SAの最新の充電器は6スロットも

上里SAの急速充電器はスロットが6つ備えられている最新式のものだった上里SAの急速充電器はスロットが6つ備えられている最新式のものだった

そこから92km走ったところで、上里SAで2度目の充電となった。上里SAは充電器が6スロットある最新の設備だ。到着時、『プリウスPHV』と『アリア』が充電していたものの、4スロットは空いていたので、一番奥のスロットにekクロスEVを止めて充電を始めた。

まもなくプリウスPHVもアリアも充電が終わり、充電しているのは筆者のみに。1回目の充電が終わっても、充電器は空いたままであったため、おかわり充電を試みた。すでに充電量は85%に達していた(充電量8.3kWhだった)ので、ここから充電してもたいした量の充電は期待できない。しかし、この先の高速道路が渋滞していたのである。時間は19時、渋滞は減る傾向にあるのでもう少し上里SAで時間をつぶしたい。ならば充電しておこうというわけである。

6スロットすべてが空いているので、とにく迷惑を掛けることはない。もし、充電希望者が殺到したら、スロットをあけ渡すつもりで充電を始めた。その後、充電スロットを利用したのは同じくEVラリーに参加した先輩のアリアのみ。だれにも迷惑は掛けずに充電できたが、充電量は2.2kWhというわずかな量のみであった。とはいえ、渋滞は解消していったので作戦はうまくいき、無事帰京することができた。

◆30kW以上の充電器への更新が必須

日産ディーラー「プリンス本庄」での充電で、充電器の出力の重要性を再確認日産ディーラー「プリンス本庄」での充電で、充電器の出力の重要性を再確認

高速道路はともかく、一般道では急速充電器の選択肢は多いものの、その種類は多用だ。ekクロスEVのように最大受入出力が30kWのクルマであっても、10kWや15kW、20kWの充電器ではクルマの性能に追いついてこない。もはや30kW未満の急速充電器は急速と言えるレベルではなくなってきているので、少なくとも30kW以上の充電器への更新が必要だといえる。

そうした充電器の容量情報や、撤去情報、不具合情報などもリアルタイムで車載ナビに表示される方式が求められる。現状もスマホを使えばかなりリアルタイムで情報を得ることができるが、運転中にスマホを手持ちで見るのはNGだ。スマホホルダーに取り付けて、という方法もあるが、画面が小さくて見えないことも多い。スマホの全機能を車載ナビで使えれば問題は減るが、現状ではブラウザを車内ナビで使うには限界もある。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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