【ランドクルーザー250 デザイン考察】当初“丸目”は想定していなかった!「先祖を超える原点回帰」への創意工夫とは

ランクル250には角目と丸目がある。どのグレードにどちらのヘッドランプを設定するかは未定だが、取付構造は共通なので、角目を買ってから丸目に交換することも可能だという。
ランクル250には角目と丸目がある。どのグレードにどちらのヘッドランプを設定するかは未定だが、取付構造は共通なので、角目を買ってから丸目に交換することも可能だという。全 14 枚

8月5日に東京ビッグサイトで行われた新型『ランドクルーザー250』の発表会。そこで取材に応えてくれたデザイナーたちの言葉から、このクールなデザインに込められた想いを解き明かしていこう。

ランドクルーザー250のデザインのポイント

発表会に登壇したデザイン領域統括部長兼チーフブランディングオフィサーのサイモン・ハンフリース取締役。新型のお披露目に先立ち、会場に並ぶ歴代ランクルの前でそれらが担ってきた使命を語った。「ランクルの価値をひとことで言えば、命を託せる信頼です」発表会に登壇したデザイン領域統括部長兼チーフブランディングオフィサーのサイモン・ハンフリース取締役。新型のお披露目に先立ち、会場に並ぶ歴代ランクルの前でそれらが担ってきた使命を語った。「ランクルの価値をひとことで言えば、命を託せる信頼です」

◆最初は丸型ランプではなかった

豊田章男・現会長が新型開発陣に指示したのは「原点回帰」というキーワード。それをどう解釈し、デザインに表現するか? 海外のデザイン拠点も参加してアイデアを競い合った結果、エクステリアは米国拠点のCALTY(キャルティ・デザインリサーチ)の提案が選ばれた。採用案を描いたのはスタジオチーフデザイナーを務めるジン・ウォン・キムである。

このスケッチで注目したいひとつは、ヘッドランプが角型だということ。Mid-size Vehicle Companyの園田達也MSデザイン部長によれば、「もともと丸目は考えていなかったが、いろんなランクルがあってもよいのではないか。キャルティ案をベースに本社で開発するなかで、若手デザイナーが丸目を提案した」とのことだ。

キャルティのジン・キムが描いたスケッチ。開発中期のまだ模索中のスケッチだが、ランクル250のエクステリアの特徴を余すところなく描き出している。キャルティのジン・キムが描いたスケッチ。開発中期のまだ模索中のスケッチだが、ランクル250のエクステリアの特徴を余すところなく描き出している。

デザインチームを率いた渡辺義人PCD=プロジェクトチーフデザイナーは、そのあたりの経緯をこう振り返る。「原点回帰とはいえ、過去に引きずられずにモダンにやりたいのでずっと角目で進めていた。社内の評価も高くてこのまま行くかと思ったのですが、ヘッドランプだけ丸型に変えてみたら、社内の若い人は新鮮だと言うし、年配の人は懐かしくてよいと言う。どちらも選べたらいいね、という話になった」

「やってみたら、社内で意外と丸いヘッドランプに人気があった」とは、デザイン統括のサイモン・ハンフリース取締役の言葉。園田MSデザイン部長は「角目のほうが質実剛健さやモダンさをより感じていただけるだろう。その一方、丸目にはわかりやすいランクルのヘリテージがある」と、それぞれの狙いの違いを説明する。

ランクル250には角目と丸目がある。どのグレードにどちらのヘッドランプを設定するかは未定だが、取付構造は共通なので、角目を買ってから丸目に交換することも可能だという。ランクル250には角目と丸目がある。どのグレードにどちらのヘッドランプを設定するかは未定だが、取付構造は共通なので、角目を買ってから丸目に交換することも可能だという。

◆300系よりタイトに引き締める

ランクル250は、ラダーフレームのGA-Fプラットフォームを300系と共有している。「フットプリント(ホイールベース×トレッド)は300系と同じ。これはランクルの黄金比だと考えていますが、ドア断面を削り込み、ボディ前後を絞り込んでいる」と渡辺PCD。「実はミラーtoミラーの全幅は従来型のプラド(ボディ全幅が250より95mm狭い)より小さくなっています」とのことだ。

なるほど300系よりボディがコンパクトに見える。ハンフリース取締役にその狙いを尋ねると、こう答えてくれた。「300では堂々としたマス感を大事にしたけれど、今回はボディを絞ってタイヤを踏ん張らせた。ボディをすごくタイトな感じに見せています。実寸法だけの問題ではなく、デザインとして、あるいは設計的に、どこを優先するかという考え方が300とは違うわけです」

タイトに削り込んだボディサイドと、そこから張り出したホイールアーチのフレア。ここが新型ランクルのエクステリアのいちばんの見所だ。タイトに削り込んだボディサイドと、そこから張り出したホイールアーチのフレア。ここが新型ランクルのエクステリアのいちばんの見所だ。

園田MSデザイン部長も「300があるので、それとのパッケージングの役割の違いを考えて、300に対してボディを絞ったり削ったりした。そこで大事になるショルダーラインのプランカーブ(平面視での曲率)やボディサイド断面は、何度も吟味しました」と告げている。

当然ながら、既存のプラットフォームを使いながら外形をコンパクトにするのは難しい。ちなみに渡辺PCDの前作は現行『ハリアー』だが、「角張った『RAV4』をベースに、ボディ前後を絞り込んでハリアーをデザインした。それと同じ難しさを、今回も味わった」とのこと。「オフロード四駆だから前後のオーバーハングを短くしたいし、ボディの四隅は削ぎ落としたい。エンジニアには苦労してもらいました」

◆リヤが長いのもランクルらしさ

トヨタは国内ではランクル250を従来の「プラド」の後継と位置付けており、発表会にはプラドと比較したパッケージング寸法図が展示されていた。

従来型プラドとの比較図。GA-Fプラットフォームの採用によってホイールベースが60mm延び、リヤオーバーハングも65mm長くなったが、全長は+100mmに抑えた。従来型プラドとの比較図。GA-Fプラットフォームの採用によってホイールベースが60mm延び、リヤオーバーハングも65mm長くなったが、全長は+100mmに抑えた。

フロントオーバーハングをプラドより25mm削減した一方、リヤオーバーハングは65mmも長い。3列目席や荷室を広げた結果でもあるが、「リヤオーバーハングはスペアタイヤがいちばんのポイントになる」と園田MSデザイン部長。オフローダーにパンク修理キットはありえないし、今どきテールゲートにスペアタイヤを背負うわけにもいかない。リヤアクスルの後ろに置くスペアタイヤでリヤオーバーハングを決まってくるのだ。

フロントよりリヤのオーバーハングが少し長いバランスは、ランクルらしさのひとつの要素である。フロントよりリヤのオーバーハングが少し長いバランスは、ランクルらしさのひとつの要素である。

渡辺PCDは「リヤオーバーハングの長さで荷室の積載性を感じさせることができるので、そこはポジティブに考えた」と告げ、こう続けた。「40系も70系も、フロントよりリヤのオーバーハングが長い。キャビンの視覚的な重心が少し後ろ寄りになるのは、ランクルらしさだと考えている」

ただ、こういうリヤが垂直に近いプロポーションでリヤオーバーハングが長いと、キャビンの重心が後ろに寄りすぎて反っくり返ったようなバランスに見えがち。しかしランクル250にはそれがない。渡辺PCDによれば、「Aピラーの位置や傾斜がプラドと同じままでキャビンを延ばすと、鈍重になるし、反っくり返ってしまう。Aピラーの根元の前に黒い部分を設けることで、それを払拭した」とのことだ。

カウルの黒いパネルが、Aピラー根元の前に回り込んでいる。これはキャビンのバランスを取るための視覚的なトリックだ。カウルの黒いパネルが、Aピラー根元の前に回り込んでいる。これはキャビンのバランスを取るための視覚的なトリックだ。

ランクル250はAピラーの傾斜を立てつつ、その根元を後ろに引いた。プロポーションから原点回帰し、オフローダーとしての視界を確保するためだ。それだけではボンネットが長く見えすぎるので、ワイパーが収まる黒いカウルパネルを広めにして、ボンネットの長さ感を調整。それをサイドに回り込ませて、Aピラーの前まで黒いパネルが来るようにした。

普通はそこに黒いパネルはない。だからこそ、それがあることでキャビンのスタート地点であるAピラーの根元が後ろにズレたように見え、このズレがキャビンの重さ感を軽減する。重さ感が減れば、重心が後ろ寄りでも反っくり返って見えにくい。そんな視覚的なトリックが、Aピラーの前の黒いパネルに仕込まれているのである。

◆過去のオマージュを超えて未来を創る

オフロードを走るとき、視界が重要になるのは言うまでもない。そのひとつが運転席からのボンネットの見え方だ。300系はボンネット・バルジが幅広く盛り上がっているので、ボンネットの左端がそれに隠れてしまう。しかし250はボンネットが隅々までしっかり見えるので、車両感覚を把握しやすそうだ。

「実際にオフロードを走ると、そこが大事になる」と園田MSデザイン部長。デザイナーたちは豊田市にある「さなげアドベンチャーフィールド」や田原工場の試験場などで、オフロード体験を重ねながらデザイン開発を進めたという。

コンセプト段階のデザイン構想図。視界のためにベルトラインを低くすることは、当初からの狙いだった。コンセプト段階のデザイン構想図。視界のためにベルトラインを低くすることは、当初からの狙いだった。

「ベルトラインも低くした。窓から身を乗り出して前輪を確認できるのは、オフロード走行でメリットがありますからね」と語るのは園田PCD。「水平基調のプロポーションなので単調にならないように、視界の機能を入れながらベルトラインをキックアップさせています」

原点回帰とはつまり、オフロード四駆としての機能に沿ったデザインにすることだ。ボディサイドをタイトに削り込むことでホイールアーチのフレアの張り出しが際立ち、スタンスがよいというのもランクル250の大きな魅力だが、それもただ先祖返りした結果ではない。

原点回帰しながらも、ただの先祖返りではないデザイン。オフローダーとしての機能に沿いながら、ランクルのあるべき新しい姿を具現化した。原点回帰しながらも、ただの先祖返りではないデザイン。オフローダーとしての機能に沿いながら、ランクルのあるべき新しい姿を具現化した。

「70系もそうだったので、考え方はそこから取り入れている。とはいえ先祖をオマージュするだけでは先祖に負けてしまう。考え方は使うけれど、オマージュにはしたくないという思いで開発してきた」と渡辺PCD。引き締まったボディサイドが前後に絞り込まれていく味わいは、なるほどオマージュを超えるものだ。園田MSデザイン部長は、「原点回帰と言いながら、けっしてレトロではなくモダンなデザインを目指した。そこを感じてほしい」と語る。

そして最後に、デザイン統括のハンフリース取締役のこんなひと言を紹介しておこう。「ランクルのヘリテージを一から学んで、ランクルの将来を創り上げました」。未来を考える種は過去にあり、それを見出せば過去から未来へつながるアイデンティティを表現できるというわけだ。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは審査委員長を務めた。

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