珍しい! 西武鉄道が東急電鉄・小田急電鉄の車両を導入---大手私鉄間で移籍

東急9000系
東急9000系全 5 枚

東急電鉄と小田急電鉄の電車が西武鉄道へ譲渡される。西武鉄道(本社:埼玉県所沢市)は、環境負荷の少ない他社からの車両授受について、東急電鉄(本社:東京都渋谷区)および小田急電鉄(本社:東京都新宿区)と連携する。3社が9月26日、合意を発表した。大手私鉄間では珍しい車両の移籍だ。

◆VVVF制御で省エネルギーを加速

西武では、他社から譲受したVVVFインバータ制御車両を、西武独自の呼称として「サステナ車両」と定義している。VVVFインバータ制御は、現在西武で主力の40000系や特急用001系(ラビュー)にも採用されており、インバータと呼ばれる電子装置で電源の周波数と電圧を調整して交流モーターを制御する方式だ。それ以前に普及していた直流モーターの抵抗制御と比べて、使用電力量は約50%の削減となっている。

今回の連携では、東急は9000系を、小田急は8000形を、それぞれ西武へ譲渡する。西武では、本線系(池袋線・新宿線など)に新造車両40000系の導入し、支線系(国分寺線や西武秩父線など)にはサステナ車両を導入することにより、省エネルギーを加速する。

◆支線系に100両を導入

導入するサステナ車両数は2形式合わせて約100両になる。導入路線は東急9000系は多摩川線、多摩湖線、西武秩父線、狭山線、小田急8000形を国分寺線だ。時期は2024年度以降、29年度にかけて順次。最初に運行を開始するサステナ車両は、国分寺線用の小田急8000形を予定している。東急9000系の運航開始は25年度以降。

小田急8000形小田急8000形

東急9000系は1986年に東横線に導入された。東急では初めて交流モーターを採用し、省エネルギー・省力化を実現した車両だ。東横線の主力車両として活躍し、東横線の東京メトロ副都心線との相互直通を機に大井町線へ転籍した。いっぽう小田急8000形は82年に導入された。高性能車両として回生ブレーキ機能を搭載したほか、2003年からのリニューアル工事で、VVVF化などの省エネルギー化を推進している。西武で東急9000系は4両編成に、小田急8000形は6両編成に組成され、いずれも形式名が変更される。

◆20m・4ドア車に統一

また西武の多摩川線と狭山線では現在、車体長20m、片側のドア3カ所の101系後期型(新101系)を運用しているが、これらの全数をサステナ車両で置き換える。置き換えによって西武では、特急と新交通システム山口線を除く全車両が、現代の通勤電車としては標準的な車体長20m、片側のドア4カ所の車両になる。ドアの位置の統一は、ホームドアの整備にとって好都合だ。なお多摩川線には、全電動車にして編成合計出力を強化した101系があり、旅客営業のほか回送を車両牽引するなど機関車代わりに使われることがあるが、これの後継は未定。

今回のサステナ車両(100両)の導入効果は、VVVF化による使用電力量削減に伴うCO2排出の削減が、2030年度時点で年間約5700tになる想定だ。これは約2000世帯の年間排出量に相当する。車両のリユースによるCO2削減は、新車製造時に排出するCO2の削減:約9400t、車両廃棄時に排出するCO2の削減:約70tとなる。

西武では2030年度までに車両のVVVF化100%達成をめざす。西武鉄道鉄道本部小川克弘車両部長は「東急電鉄と小田急電鉄の協力により、資源の廃棄を減らし、自然環境への負荷を軽減する今回の取り組みを実現できた。当社では新造車両とサステナ車両とを組み合わせ、車両の省エネルギー化をスピード感を持って推進する。また、これを機に両社との技術連携を深める」とコメントした。

《高木啓》

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