自動車がソフトウェアで定義される時代、IPGオートモーティブは新たなニーズにどう対応するのか

バーチャルビークルの開発プロセスを効率化する「VIRTO」

自動運転や電動車開発の課題に対する「CarMaker」のソリューション

費用対効果を高めた拡張バリエーションも

高まるニーズに幅広く対応

IPGオートモーティブ「オープン ハウス ジャパン 2023」
IPGオートモーティブ「オープン ハウス ジャパン 2023」全 14 枚

IPGオートモーティブは東京・丸の内にて「オープン ハウス ジャパン 2023」を10月20日に開催した。同社のシミュレーション・ソリューションをすでに導入してはいるが、開発要件の上でも、実際の運用の仕方も、様々に異なる顧客に向けて、製品の最新情報や実際的なケースでの応用例や活用例を、各ソリューションの担当コンサルタントや開発者によるセミナー形式で紹介したのだ。リアルコンタクトの場として座学のみならず、より細かなニーズに実地で探る試みとして、会場にはパートナー企業のブース展示も用意された。

会頭には日本法人の代表取締役である清水圭介氏と、ドイツ本社のシニア・バイスプレジデント、CCOであるマーティン・エルブス(Martin Elbs)氏が、それぞれ挨拶に立った。電動化が進み、パワートレインとADAS機能の統合開発のためにソフトウェアが重要性が増す今、VIL(Vehicle in the Loop)において最新かつ高機能のシミュレーション環境が果たす役割が大きいこと、何より顧客と直接に会ってその要求に耳を傾けられることは大きな喜びであると、強調した。会場にはOEMやサプライヤ、サービス・プロバイダの担当者ら、車両開発に関わる様々なプレーヤーが集まった。

◆バーチャルビークルの開発プロセスを効率化する「VIRTO」

セミナー最初のプログラムは、バーチャルビークルの開発プロセスをユーザー視点で繋ぐツール、「VIRTO」の解説だった。VIRTOはシミュレーションに関わる多くのユーザーが、パラメータデータ、車両ソフトウェア、車両モデル、テスト結果などを、共有しつつトレーサービリティやプロセスセキュリティを確保しつつ管理できるモジュラーアプリケーションで、7つのアプリで構成されている。

例として、2人の担当者間で1つの作業タスクがあるとしよう。ADAS/ADシミュレーションエンジニアがAEBロジックのアップデートのため、機能テストを行いたいが、バーチャルビークル開発/ツール及びメソッド担当者、つまり機能テストに有効な車両データを管理する者が、オフィスに不在とする。すると従来では、前者が後者の帰社を待って、作業しなければならない。だがVIRTOで管理する環境下ならば、前者は7つのアプリのまずひとつ目、「FLEET」よりプロトタイプ車両をピックアップし、続いて「DATA」「MODEL」「BUILD」において装備や車両制御ロジックを決定、さらに「SCENE」でシナリオを選んでから「TEST」にかけてシミュレーションを展開、最後は「RESULT」でテスト結果を一元管理することが可能だ。一連の作業はすべて、トレーサビリティを担保される。つまり後者が不在の間にも前者の作業が滞ることなく、高度な専門性をもったタスクが進められ、車両およびバーチャルプロトタイプの構築と管理を効率的に進められるという。

VIRTO FLEET
VIRTO MODEL

◆自動運転や電動車開発の課題に対する「CarMaker」のソリューション

次は「CarMaker」の最新情報、とくに自動運転や電動車開発の課題にどういったソリューションが加わったか、その考え方ごと解説された。CarMakerは同12.0が今年3月にリリースされたばかりだが、11月15日には同「13.0」が登場。そして2024年5月7日には同13.1が、さらに1年後の11月21日には同14.0がリリース予定だ。4輪だけでなく2輪やトラック用も用意されるバーチャル・テスト・ドライビングのためのシミュレーション・ソフトウェアで、効率的なプロセス統合と高度なスケーラビリティによって、環境とシナリオ双方のODD(運行設計領域)や認識、トラフィックシミュレーションやADASなどのミドルウェアフレームワークを構築できる。とりわけCarMaker 12.0と13.0では、ADASや電動車開発で生じる課題について、細かな対応を強化したという。

CarMaker

《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

+ 続きを読む

アクセスランキング

  1. 車検NGの落とし穴!? シート交換で絶対に知っておくべき新ルール~カスタムHOW TO~
  2. 21車種・64万台超、トヨタ自動車の大規模リコールに注目集まる…7月掲載のリコール記事ランキング
  3. これで公道走行可能だと? BMW『M2 トラック・パッケージ』がニュルに出現!
  4. クラシックな雰囲気が人気! ダムドの『ハイゼット/アトレー』向けカスタムボディキットに新作アイテム3点が登場
  5. 「衝撃の価格」中国メーカーの大型3列シートSUVが話題に!「むしろ経営が心配」の声も
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  3. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
  4. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  5. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
ランキングをもっと見る