【ホンダ ヴェゼル 改良新型】開発責任者に聞いた、改良に求められた「バリュー」と「世界観」とは

ヴェゼルの開発責任者を務めた本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センターの奥山貴也さん
ヴェゼルの開発責任者を務めた本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センターの奥山貴也さん全 31 枚

ホンダはコンパクトSUVの2代目『ヴェゼル』を商品改良し、4月26日より販売を開始する。内外装に手が入り、走りの面や安全装備も充実した新型のコンセプトは“Expand your Life”とされた。そこに込められた思いは何か。開発責任者に話を聞いた。

◆ヴェゼルはコンパクトSUVの先駆者である

ヴェゼルの開発責任者を務めた本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センターの奥山貴也さんヴェゼルの開発責任者を務めた本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センターの奥山貴也さん

ヴェゼルの開発責任者を務めた本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センターの奥山貴也さんは、これまで初代『オデッセイ』をはじめ、『S-MX』や『S2000』などのほか、グローバルモデルの『CR-V』や『シビック』など、様々な車種を担当してきた。また、『NSX』のシャーシ研究のプロジェクトリーダーなども務めたうえ、『フィットe:HEV』でEnjoy耐久レースの責任者を担当するなど、クルマ全般だけでなく走りにも一家言持った人物だ。

さらにこれまでの経験からグローバル車両の開発は「自分の強み」だと奥山さんが話すように、ヴェゼルもグローバル車であることから今回の開発責任者を務めることは「すんなりと」自身の中でも受け入れられたそうだ。ただし奥山さんはこれまでヴェゼルを担当したことがなかったため、まずはヴェゼルというクルマを知るために、社内外でのポジショニングをはじめ、どういう成り立ちか、どういうニーズがあるのかを調べた。同時に「当然進化はし続けないとだめですし、期待もある。ではそれは何かを徹底的に各地域の営業、現地のメンバーなどをはじめ開発スタッフとコミュニケーションを取りながら進めていきました」と述べる。

ホンダ ヴェゼル 改良新型ホンダ ヴェゼル 改良新型

では、ヴェゼルとはどういうクルマだと考えたのか。それは大きく2つあるという。ひとつはコンパクトSUVであるということ。「そもそもSUVは背が高くてタイヤが大きい一方、室内はセダンやハッチバックと変わらないクルマであり、格好良いと思われています。ですから海外勢でも多くの高級車メーカーからSUVが出てきています。人間は本質的に生活を豊かにするためには格好良いというのは不可欠で、そこがモチベーションになり、プライベートも仕事も頑張る。そういう存在がSUVなのです。ですから国内では4台に1台がSUVという市場状況になりました」。

しかし、以前のSUVは比較的価格が高いクルマだった。「それを初代ヴェゼルがコンパクト市場の中で、格好良いSUVを作り出した。つまり先駆者であり、そこが役割」。コンパクトSUVで、購入しやすい価格がヴェゼルのポジショニングなのだ。

◆バリューをわかりやすく

ホンダ ヴェゼル 改良新型ホンダ ヴェゼル 改良新型

もうひとつが運転する楽しさだ。これ関して奥山さんは、「本質的に人間が求めていること」といい、これは、「ヴェゼルだけではなく、ホンダがやるべき役割」。ホンダのシェアはグローバルでは1割少々。10人に1人しか選んでいないメーカーだが、「10人のうち1人が選んでいただけているということは、それだけホンダを応援してくれる、期待してくれる人がいるということ。そうすると他社にはないことをしなければいけません。当然格好良く、装備も充実するし、MM思想(マン・マキシマム、メカ・ミニマムというホンダのクルマづくりの哲学)もやりますが、走りの質をしっかり上げるというのが使命なんです。ですから私のこだわりだけではなく、世間の期待と会社の役割としてやっています」とコメント。

そこで今回のマイナーチェンジでは、安全性、操縦安定性、快適性、利便性、品質などをより高いレベルに引き上げるべく多くの改良を加え、特に騒音、振動、ハーシュネスを徹底的に見直すことで、クルマの本質をブラッシュアップ。「コンパクトというサイズ感を守りながら、いかに格好良く、快適性や利便性を高くし、かつ運転する楽しさを進化させることがポイントであり、そこを徹底的にやりました」。

ホンダ ヴェゼル 改良新型ホンダ ヴェゼル 改良新型

今回の改良に関してはユーザーの意見を取り入れられたところも多くありそうだ。「デザインとサイズ感、それから室内のサイズにしては広く使いやすいと高評価でした。それはどこの地域、どのユーザー層の方々も同じでしたので、そこはしっかりと継承しながら進化させないとダメ」と奥山さん。そこでデザインについては、「品格の部分は本当に慎重にデザインしました」という。

一方、価格や装備については、特に近年はヴェゼルに限らず車両価格が上がっていることもあり、今回は「バリューフォーマネーのバリューのところはしっかりと理解してもらえるように作り上げました」。そこで全体の8割ほどを占める「e:HEV」(ハイブリッド車)の中でも最量販車の「e:HEV Z」の装備を充実。特にひとクラス上の『ZR-V』などに採用しているアタプティブドライビングビームを標準装備するなどして、商品力を高めている。

◆ヴェゼルの世界観を広げるグレード構成

ホンダ ヴェゼル 改良新型(e:HEV X Huntパッケージ)ホンダ ヴェゼル 改良新型(e:HEV X Huntパッケージ)

今回のヴェゼルのグランドコンセプトは“Expand Your Life”だ。奥山さんはまず2代目の“AMP UP YOUR LIFE“というコンセプトについて、「様々なお客様の毎日のライフスタイルやシーンをよりアンプアップ、増幅、そして輝くことを目指しました」としたうえで、今回も「似たような言葉ですが、やはり増幅、全体の三角形(ヴェゼルの世界観)をしっかりと大きく広げたいという思いを込めました。三角形を上に伸ばすのではなく横に広げることにより、自然と頂点も高くなるでしょう。同じ土俵で高みを目指すよりも世界観を広げるということです」と説明する。

具体的には、グレード構成をシンプルに3つ(ガソリンのG、e:HEVのXとZ)にするとともに、“拡張する”ことの意味を込めて、2つのパッケージ(Zに「PLaY」、Xに「HuNT」)が用意された。「私がグローバル戦略車を担当するまで、日本という文化しか知りませんでしたが、その後グローバル戦略車の担当となり、一歩外に出て世界を見た時にまだまだ人生には愉しみあるなということを感じてきたように、お客様のライフスタイルも同じように広がっていってほしい。そういう思いを込めています」と語った。

ホンダ ヴェゼル 改良新型(e:HEV Z PLaYパッケージ)ホンダ ヴェゼル 改良新型(e:HEV Z PLaYパッケージ)

最後に奥山さんは新型ヴェゼルについて、「コンパクトSUVという比較的お求め頂きやすい価格帯の中で、格好良く、居住性や快適性、利便性が高い。そしてホンダならではのこだわった品質を兼ね備えた非常にバリューのあるクルマなので、ぜひお乗りいただき、普段の生活が今後も豊かになるような人生を送ってもらうようなきっかけになればと思います」と述べた。

グレード構成をシンプル化するとともにPLaYパッケージに加えHuNTパッケージを追加することで、世界感の違うヴェゼルが味わえるようになった。内外装もこれまで高評価だったところはしっかりと伸ばすなど、“ヴェゼルらしさ”をより強く感じさせる商品改良といえるだろう。

ヴェゼルの開発責任者を務めた本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センターの奥山貴也さんヴェゼルの開発責任者を務めた本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センターの奥山貴也さん

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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