自動車業界で適正な価格転嫁に向けた取り組みが加速している。サプライチェーン企業のうち、コスト上昇分を販売価格やサービス価格に「転嫁できている」とした企業の割合は合計で8割を超えたが、上昇分の「2割未満」とした企業が最も多かった。
今年3月に日産自動車が下請法違反として公正取引委員会から勧告を受けた問題について、日本自動車工業会(自工会)は5月23日の会見で、取引の適正化に向けた環境を構築することを表明した。日本の基幹産業である自動車産業で、持続的な賃上げなどにもつながる価格転嫁の動きが加速するか注目されている。
◆サプライチェーン企業は約6万社、取引総額は約42兆億円
帝国データバンクでは、保有する「商流圏~売上高依存度推計データ」をもとに、商用車専業を除く国内自動車メーカー8社=トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、スズキ、マツダ、SUBARU、三菱自動車工業、ダイハツ工業に対して部品などのモノやサービスを提供する周辺産業(商流圏)を「自動車産業(サプライチェーン企業)」と定義し、社数や価格転嫁の動向などについて調査・分析し、調査結果を5月24日に発表した。
帝国データバンクが実施した「価格転嫁に関する実態調査(2024年2月)」(調査期間:2月15~29日、調査対象:全国2万7443社、有効回答企業数:1万1267社、回答率41.1%)のうち、自動車産業に属する企業で回答があった約1500社(有効回答企業数の約13%)を分析した。なお、この調査は企業の取引全般に関する価格転嫁について調査しており、特定の取引に対して回答したものではない。
それによると、国内自動車メーカー8社を頂点としたサプライチェーン企業の総数は、2024年5月時点で国内に推計5万9193社あることが判明した。自動車産業で発生する取引額の総額は、推計41兆9970億円に上る。最もサプライチェーン企業が多い自動車メーカーはトヨタ自動車で、全国に3万9113社。次いで本田技研工業が1万8880社、日産自動車が1万5905社だった。
◆全額転嫁できている企業は3.9%、全くできていない/しない企業は…?
価格転嫁の動向については、2024年2月時点で回答があった約1500社を対象に分析した。その結果、自動車産業に属するサプライチェーン企業のうち、コスト上昇分を販売価格やサービス価格に「(多少なりとも)転嫁できている」と回答した企業の割合は合計で80.7%に達した。